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January 18 2016 By 山本亨

世界と日本のモータースポーツ活動の違い

デフィート問題でもブレないVWのモータースポーツ活動

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2015年に世界中の自動車メーカーを震撼させたニュースといえば、フォルクスワーゲン社(以下VW)が起こしたデフィートデバイス問題だ。ディーゼルエンジン車の厳しい排ガス規制を逃れるための不正コンピュータで、ある一定のテストモードを感知すると通常走行時とは違った出力特性となり測定値をクリアできるようにプログラミングされていたのである。

この不正コンピュータを搭載していたのが、VWだけにとどまらずグループ全体にも及びアウディ、ポルシェまでこのデフィートデバイスを使用していたという大スキャンダルとなった。最近の報道によると、この違法デバイスによるVWグループに対するアメリカ当局からの制裁金は、2兆円に及ぶという。これは2014年通期のVWグループの営業利益である約1兆7000億円を上回る。一連のスキャンダルは、VWグループという世界的大企業の経営の根幹を揺るがしかねない大打撃になることは、想像に難くない。

しかし、VWグループは2016年も引き続きモータースポーツ活動に関してはほとんどぶれること無く行うという。VWモータースポーツでは、世界ラリー選手権(WRC)に2013年からワークス参戦し、2015年まで3年連続でチャンピオンを獲得している。このVWモータースポーツのチーム代表であるヨースト・カピート氏は2016年の活動はもちろん、2019年までのWRC活動も約束されているという。

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また世界耐久選手権(WEC)には、アウディとポルシェがLMP1(エネルギー再生システムを搭載する最高峰クラス)に参戦し、グループ内で覇を競っている。2015年の11月末にアウディモータースポーツ代表のDr. ウォルフガング・ウルリッヒが「アウディは、ル・マン24時間レースにおいて世界で最も成功した自動車効率技術であるTDI技術にこだわり、引き続きモータースポーツに全力で取り組み続けていく」と表明している。一方ポルシェは、WECのLMP1クラスに2014年に16年ぶりに復帰。復帰2年目で伝統のル・マン優勝を果たし、シリーズチャンピオンにも輝いた。「耐久のポルシェ」というかつての異名を見事に取り戻し、2016年の活動に関してもディフェンディングチャンピオンとして活動するという。ただしポルシェもアウディも、これまで3台体制で臨んでいたル・マン24時間レースには「コスト効率を最大化して」2台での参戦としている。

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あっという間に撤退する日本企業の体質改善を希望

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これら一連の報道を耳にした日本のモータースポーツ関係者からは「さすがはモータースポーツの本場、欧州のメーカーだ」と称賛の声が上がった。会社的にこれほどのダメージを受けてもモータースポーツ活動にはほとんど変わらぬ支援を行い、引き続き活動を続ける企業姿勢に感心したのだ。というのも、アメリカのサブプライムローンの破綻から端を発したリーマンショック時に国内の自動車会社がとった処置に愕然としたからだ。

トヨタ、ホンダ、ブリヂストンは、世界最高峰の自動車レースといわれるF1世界選手権に参戦していた。当時、トヨタとホンダはF1の車体とエンジンを自社で造るというフルワークス体制でエントリーしており、F1ドライバーになるための若手育成プログラムなどにも積極的に取り組んでいたわけだが「リーマンショックに端を発する経済状況悪化」という理由から、2008年いっぱいをもってホンダが撤退、トヨタは2009年いっぱいでF1界から去り、タイヤ供給をしていたブリヂストンも2010年いっぱいでF1シーンから姿を消してしまった。世界ラリー選手権(WRC)に参戦していた富士重工業も、やはり同じような理由から世界の舞台から姿を消したのだ。

世界のモータースポーツシーンから、次々と撤退していった日本企業を嘆く声は、国内だけにとどまらず世界的にも疑問視された。しかも日本企業と入れ替わるように、メルセデス・ベンツはF1のエンジン供給メーカーからフルワークス体制(しかもホンダが撤退した後のブラウンGPチームを買収)として参戦を開始し、ブリヂストンに代わりイタリアのピレリがF1タイヤの独占供給に名乗りを上げている。

文化としてモータースポーツがその国に根付いているのか、それとも一過性のプロモーションの一環としてモータースポーツを捉えているのかでずいぶん身の処し方が変わる。もちろんプロモーションとしてモータースポーツ活動を利用するのだろうが、それは手段であって、欧州の自動車企業は、企業としての歴史、ヘリテージ、世界的な立ち位置などを踏まえたうえでモータースポーツ活動を行う。だからこそ自社の不祥事、経営的貧窮に直面しても、凛としたスタンスでモータースポーツ活動に変わらぬ姿勢で臨む。

日本に本格的サーキットとして完成した鈴鹿サーキットが運営を開始して来年で55年、富士スピードウェイは今年で設立50周年の節目を迎える。

日本の自動車企業も、そろそろ「世間の目」を気にせず、経営者が変わろうとも変わらぬスタンスで挑むモータースポーツ活動を期待したい。

山本亨

山本亨

自動車雑誌の編集者として歴任。モータースポーツ専門誌、F1速報誌、月間で発行される動画媒体の編集長として活躍。その後クラシックカーなどのやイベントや雑誌を手掛け、現在は交通タイム社にて、WEB CARTOPの責任者とともに、F1RACING誌とスバルマガジン誌の編集人を兼務。

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