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March 02 2016 By 村本浩平

今度は負けない。種牡馬エピファネイアがキズナをしのぐ鍵はサンデーサイレンスの血

競馬がブラッドスポーツと言われる所以(ゆえん)。それは父、母、あるいはその祖先と、競走能力に優れたサラブレッドを掛け合わせながら、さらに進化したサラブレッドをつくり出す過程を、レースの中で証明し続けているからだ。

エピファネイア

撮影:A-CLIP 浅野 一行 種牡馬展示会では、エピファネイアの気品あふれる姿が披露された

 父は2度の年度代表馬、母は日米オークス馬、弟もGⅠ馬

ちなみにサラブレッドのスペルは「Thoroughbred」。これは「徹底的」という意味の「Thorough」と品種改良という意味の「Bred」を合わせた言葉である。

その意味においても「Thoroughbred」と呼ぶにふさわしい馬とは、今年、安平・社台スタリオンステーションで種牡馬入りを果たした、エピファネイアとなるのだろう。

父は史上初となる天皇賞・秋と有馬記念のダブル連覇を果たし、2年連続でJRA年度代表馬に輝いたシンボリクリスエス。母は日米でオークス(オークス、アメリカンオークス)馬となったシーザリオ。そのシーザリオの父であるスペシャルウィークもまた、現役時には日本ダービー、そして天皇賞春・秋制覇とジャパンCを制している。しかも、昨年末には半弟のリオンディーズ(父キングカメハメハ)が2歳GⅠの朝日杯FSで優勝し、ますます血統的評価が高まった。

エピファネイア自身も現役時には菊花賞とジャパンCで優勝。その競走能力の高さや血統背景だけでなく、現役時は500㎏にも迫った雄大な馬格も高く評価され、引退後は晴れて種牡馬入りを果たした。

シーザリオ

撮影:A-CLIP 浅野 一行 史上ただ1頭、日米のオークスを制した現役時代のシーザリオ

現役時代は1勝2敗。続くキズナとのライバル関係

まさに順風満帆のままに種牡馬入りとなったエピファネイアであるが、その前に立ちはだかるのは、ライバルだったキズナとなりそうだ。

現役時の直接対決はキズナが2勝(日本ダービー、大阪杯)、エピファネイアが1勝(ラジオNIKKEI杯)。この辺はキズナに分があると言えるが、エピファネイアは3歳秋以降にGⅠレースを2勝と晩成型の成長を遂げており、完成度の違いがこの成績に出ているとの見方もできる。

しかも2頭は同じタイミングで、同じ社台スタリオンステーションで繋養。その上、種付け料の設定は共に250万と、競走馬としてだけではなく、種牡馬としても一緒のタイミング、そして互角の条件の下でゲートが開かれることとなった。

エピファネイア、キズナが種牡馬として成功するにあたり重大な鍵となりそうなのは、2頭の血統内に名を残すサンデーサイレンスの存在となりそうだ。

エピファネイア

撮影:A-CLIP 浅野 一行 4歳でジャパンカップを圧勝した成長力もエピファネイアの魅力

強すぎるサンデーサイレンスの血がもたらす「弊害」

日本競馬史上最多となる13年連続のリーディングサイアー。その間にはディープインパクト、ハーツクライ、ステイゴールドといった名馬を送り出し、また優秀な競走成績を残した産駒たちもまた、父の後を追うように種牡馬入りし、さらに父系を広げている。それどころか近年ではサンデーサイレンス産駒の牝馬も繁殖となり、優秀な繁殖成績を残している。いまや父としてだけでなく、母の父としても、サンデーサイレンスは日本生産界に欠かせない存在となっているのだ。

しかしその現状が、エピファネイアとキズナにとっては弊害ともなる。キズナの父ディープインパクト、そして、エピファネイアの母父であるスペシャルウィーク共にサンデーサイレンスの産駒。2頭共に血統内にサンデーサイレンスを持つ牝馬と配合した場合だと近親配合、つまり「クロス」が生じてしまうのだ。

サンデーサイレンスは生殖能力の強い種牡馬であり、ピーク時には200頭を超える繁殖牝馬を集めることもあった。その父の血を引く後継種牡馬たちもまた、多頭数交配を苦にせず、ディープインパクトもまた、昨シーズンは250頭もの繁殖牝馬に配合を行っている。

エピファネイアは「奇跡の血量」を実証できるか

父、そして母と生産界にサンデーサイレンスの血を有するサラブレッドが増えている現状下で、その血を全く持たない配合(アウトクロス)となる馬をつくるのは困難な状況となってきている。将来的には「サンデーサイレンスのクロス」は、競馬界で当たり前のようになっていくのだろう。

その際、サンデーサイレンスが「父の父」であるキズナよりも、「母の母の父」であるエピファネイアの方が、同じクロスをつくるにしても配合がしやすいとの見方もできる。

生産界には名馬をつくる配合として、同一種牡馬の3×4のクロスをつくる(奇跡の血量とも言われる)理論があるが、「母の母の父」にサンデーサイレンスが入っているエピファネイアなら、「サンデーサイレンスの3×4」をつくりやすくもなっている。

サンデーサイレンス亡き後も、サンデーサイレンス系種牡馬の隆盛が長く続いていることもあって、まだ「サンデーサイレンスの3×4」の配合馬からは、GⅠ級の活躍馬は生まれていない。しかし、エピファネイアなら自身の優れた能力を産駒へと伝えるだけでなく、「奇跡の血量」となったサンデーサイレンスのクロスが、さらなる能力の上積みを図れるのではとの気もしてくる。

名種牡馬を目指すエピファネイアの前に立ちはだかるのは、やはり、現役時と同じようにキズナとなるのだろうか。種牡馬となってからも続くライバル関係は、未来の競馬をさらに面白くしてくれそうだ。

エピファネイア

撮影:A-CLIP 浅野 一行 キズナ産駒との2代目ライバル対決が未来の競馬を熱くする

村本浩平

村本浩平

馬産地ライター。1972年生まれ。20歳の頃に「第1回ナンバー・スポーツ ノンフィクション新人賞」を受賞。現在は馬産地でもある北海道をフィ ールドとしながら、生産地で働くホースマンの声を届けている。また、 中学生の頃からファンだった北海道日本ハムファイターズの取材も続ける。

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