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March 14 2016 By 中村多聞

初心者でもわかるアメリカンフットボール

アメリカンフットボール。ルールがわからない。難しい。しょっちゅう止まって何やってるの。人数が多すぎる。ヘルメットかぶっているから顔がわからない。皆さんは、アメリカンフットボールに対してどのような印象をお持ちでしょうか?

ひと昔前に日本でもアメリカンフットボールの小ブームは何度かありました。しかし本場米国のそれとは程遠いまま現在に至ります。僕はバリバリの現役時代から現在までの18年間飲食店を営んでおり、店でお会いする「アメリカンフットボールわかりません」な老若男女とアメリカンフットボール(以後「フットボール」と呼ばせていただきます)についてお話をさせていただく機会が毎日のようにあり、おそらく、日本に現存するフットボール関係者の中で一番多く「フットボールわかりません」な人に会って会話しているはずなのです。彼らに共通するのが最初に挙げた項目です。まずは、このような疑問を示す方にはこう回答することにしています。

  1.  ルールがわからない:『実は細かいルールは選手や監督も覚え切れていません。通常の試合で使われるルールの95%は簡単なものばかりです。まれに複雑なジャッジが必要なこともありますが、そこは審判に任せておけばよいのです』
  2. 難しい:『アメリカ人が酔っ払って観戦しているスポーツが難しいワケないでしょう。世界でも頭が良いとされる日本国民である皆さんが覚えられないようなスポーツが、アメリカで人気ナンバーワンのスポーツになれると思いますか?』
  3. しょっちゅう止まって何をやってるの?:『野球のピッチャーが間を全くあけずに投げ続けてはいないでしょう。あれは次に投げる球種(作戦)を練っているからです。フットボールの場合は全てがセットプレーで行う競技なので、止まっている間に作戦を決めて全員に伝達しているのです。緻密な作戦で相手のウラをかこうといろいろ検証しています』
  4. 人数が多すぎる:『攻撃しかしない選手、守備しかしない選手など、専門性の高い競技なので、何かひとつでも秀でたものを持つ選手であれば、少ない出場回数であっても貴重な存在なのです。日本の大学ではベンチ入り人数に制限がないので200人が居たりします。もちろん選手交代の回数や人数などにも制限がありません』
  5. ヘルメットで顔がわからない:『顔を見たい理由がサッパリわかりませんが、慣れてくればフェイスマスク越しに見える顔でも十分識別できるようになります。ヘルメットをかぶっていればイケメンでも、取ると普通のオッサンだったりするので油断しないでください』

アメリカンフットボール

そんなこと言ってもわかりにくいものはわかりにくいし、ゴチャゴチャしていてサッパリわからない!というご意見もあるでしょう。そんな方には次の方法でフットボールをご覧いただくのが良いのではないかと思っています。

  1.  いきなりルールを覚えようとしない:『タッチダウンが何点で、反則で何ヤード罰退だとか、最初から気にしてはいけません。日本で試合会場に行く機会があるとすれば、どちらかのチームの応援席に座ることになります。テレビ観戦でも同様で、応援するチームを決めてください。そのチームが前に進めばヤッター!相手に進まれれば残念!とだけわかるようになりましょう。初回はそれだけで十分です。選手ですら100%把握できないようなルールを覚えるなど、無謀なチャレンジはやめておくべきです。
  2. 地上戦か空中戦かを予想する:『前進と後退が理解できるようになればプレーの予想をして楽しみます。次はパスを投げるのか?それともランで攻めるのか。これを毎プレー予想してみましょう。前述したように、フットボールは全てがセットプレーで成り立っています。攻撃時には投げるか走るかの選択しかありません。パスを投げる時には守備にダイレクトでキャッチされるとインターセプトで、そのまま攻守が入れ替わってしまい最悪です。そのリスクがあっても勇気を出して投げるロングパスはスリルがあってとても盛り上がります。少なめの前進しか期待ができないランでゴリゴリ進む場合でも、客席まで響いてくる激突音が凄く、守備を振り切って独走すると、これまた盛り上がります。自分が予想したプレーで大きな前進をするようになると、一気にフットボールを見るのが楽しくなります!
  3. お気に入りの選手を見つけて応援する:『さっきから何だかよく活躍しているような気がする選手の中からでも、地味に働いている選手でも構わないので攻撃に1人、守備に1人、お気に入りを決めてください。1の前進と後退がわかり、2のプレー予想ができるようになって、なおかつお気に入りの選手を目で追えるようになればもう初心者ではありません。

アメリカンフットボール

フットボールはこれだけを注意していれば、最初からイキナリ楽しめます。ただ、恐ろしい罠として、元選手や関係者のほとんどは初回観戦者に説明するのが極端に下手なのです。初っぱなから専門用語を多く使用し、ダウン更新の仕組みや守備の作戦内容、選手の名前を多く出して知人が多い自慢を入れてみたりと、複雑怪奇でちっとも面白くないスポーツのように力説してしまいます。何十年もみんながこんなミスを繰り返して来たことが、フットボール人気が下がる理由ではないかと思いますが、このままでは日本フットボール界の未来が非常に心配です。

他のスポーツでも同様かもしれませんが、フットボール界でも競技人口が減少傾向にあり、業界全体があの手この手で若者にフットボールをしてもらおうと努力しています。危険なスポーツであるという認識に対して「一切そんなことはない!」と100%の反論はできません。しかし可能な限り若いうちにスポーツの楽しさを知り、いろいろなスポーツで体や運動神経を鍛えて多くの試合を経験することが、「良いスポーツ(フットボール)選手」になる最低条件です。とは言うものの、フットボールは大学から始めてもレギュラーを狙える数少ないスポーツである未成熟な部分を持っていることも否めません。どうか、これをたまたまお読みになってくださった皆さん、2016年からはアメリカンフットボールを今までより少しだけご贔屓(ひいき)にしてくださるととてもうれしく思います。

アメリカンフットボール

中村多聞

中村多聞

1969年 大阪生まれ。 練習もままならない大学3部リーグの恵まれない環境からフットボールを始め日本を代表するアメリカンフットボール選手に。国内ではアサヒ飲料在籍時に日本選手権ライスボウルでMVPを獲得。本場アメリカNFLのグリーンベイ・パッカーズと契約、NFL傘下のNFL欧州ライン・ファイヤーと複数年契約するなどプロ選手として活躍した。現在は大阪と東京で飲食店を運営する会社を経営する傍ら「多聞式バックス養成所」で後進の指導にあたっている。

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