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March 16 2016 By 村本浩平

受け継がれるタフでやんちゃな血。ゴールドシップは「白馬の救世主」となれるか?

白馬はその神々しい姿から、神の使いと称されることもある。ひょっとしたら理想の男性を求める女性の中には、白馬という言葉から、その上に跨った王子様の姿を想像されたかもしれない。

白くなったゴールドシップが馬産地日高にやってきた

一方、日本を代表する馬産地である日高地区の生産者から、「白馬の救世主」との期待をかけられているのが、今シーズンから新冠・ビッグレッドファームで、種牡馬として繋養されたゴールドシップである。

とはいっても、ゴールドシップは生まれながらに「白馬」だったわけではない。ゴールドシップの毛色は、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルで認められている8種類のうちの「芦毛」という毛色。あのオグリキャップ、そしてメジロマックイーンも同じ「芦毛」の毛色をした馬だった。

では、なぜにゴールドシップは現在のような「白馬」となってしまったのだろうか? それは人間が白髪になる過程とよく似ている。芦毛とは鹿毛、栗毛に白毛が混在している毛色であり、競馬をしているような若い時期はグレーの毛色に見えることもある。しかし、年齢とともに白毛の割合が増えていくと、いつしか現在のゴールドシップのように真っ白になってしまうのだ。

2月16日にビッグレッドファームで開催された種牡馬展示会。この日、700人もの生産関係者の前に姿を見せたゴールドシップは、3歳時(2012年)の皐月賞と菊花賞、そして、その年の有馬記念で優勝した時の、グレーの毛色をした馬と一緒とは思えないほどに白さを増していた。そう思うと勝利したGⅠレースの度にゴールドシップが白さを増していたことが、過去のレース写真を見ると改めて分かる。

ゴールドシップ

撮影:A-CLIP 浅野 一行 GⅠの度に白くなり「白馬」の呼称がふさわしくなった

毛色とともにその能力を伝えた祖父メジロマックイーン

ゴールドシップは3歳時には皐月賞、菊花賞、有馬記念で優勝。4歳時から5歳時にかけて宝塚記念を連覇。そして6歳時には天皇賞・春を制して、GⅠレースでは4年連続、合計6勝をあげている。また収得賞金の13億9776万7千円は、中央競馬のGⅠ最多勝タイ記録を持つテイエムオペラオー、そして日本競馬史上最強馬とも言われる、あのディープインパクトに続く歴代3位の記録。ファン投票の上位馬から選出される宝塚記念と有馬記念では、いずれも2度にわたって一位となるなど、近年を代表するスターホースでもあった。

この日の展示会に足を運んだ生産者のお目当てとなったゴールドシップは、展示会のトリとして姿を見せた。競馬中継などでパドックでの姿や、そのレース内容などを目にしてきた生産関係者は多かったはずだが、それでもゴールドシップが目の前を通りすぎる度に、人垣の中からは「白くなったなあ」との言葉が聞こえていた。

来年誕生予定の産駒には、この白さだけでなく、卓越した能力も受け継がれそうなゴールドシップ。その白さの源であり、そして競走馬としての能力を高めたのは、母父にその名を残すメジロマックイーンの存在も大きい。

先述したように、芦毛馬であるメジロマックイーンは、現役時にGⅠ4勝をあげる活躍を見せ、日本競馬では史上初めて収得賞金10億円を突破。祖父メジロアサマ、父メジロティターンが現役時に天皇賞で優勝という、そのバックボーンも評価され、多大なる期待を受けながら種牡馬入りを果たした。

だが、その種牡馬入りのタイミングと合わせるかのように、初年度産駒が空前の大活躍を見せ始めたのがサンデーサイレンスである。産駒の活躍と比例するかのように、サンデーサイレンスの元には優秀な繁殖牝馬が集まっていく一方で、メジロマックイーンの元には、種牡馬として大成功を収めるほどの可能性を持った繁殖牝馬は集まってこなかった。

ゴールドシップ

撮影:A-CLIP 浅野 一行 日高地区の生産者からのバックアップが期待できる

地味なステイゴールドが種牡馬として輝いた「黄金配合」

しかし、そのメジロマックイーンの血が母の父となったときに、思いもしなかった奇跡を起こす。繁殖牝馬となった父メジロマックイーンの牝馬と、父ステイゴールドの配合馬が、次々と活躍を見せ始めたのだ。

サンデーサイレンスの3年目産駒となるステイゴールドは、同じ父の産駒たちがクラシック戦線で華々しい活躍を見せていく一方で、重賞初勝利は通算38戦目。初のGⅠ勝利は引退レースとなった7歳時の香港カップであり、なんとデビューから50戦目のことだった。

種牡馬入りしたステイゴールドだが、配合の際に華やかさやスター性も重視する生産者の評価は高いとは言えなかった。しかし、父ステイゴールド×母父メジロマックイーンの配合で産まれた、初年度産駒のドリームジャーニーが、父のイメージを覆すかのように、2歳時に行われるGⅠレースの朝日杯FSを勝利。

その後、クラシック3冠を含むGⅠ6勝をあげ、史上31頭目の競馬殿堂入りを果たしたオルフェーヴルによって、種牡馬ステイゴールドの評価は絶対的なものとなり、そしてこの配合は「黄金配合」として広く知られるようになった。

オルフェーヴルやゴールドシップに先駆けて種牡馬入りしたドリームジャーニーは、今年、初年度産駒が3歳を迎えている。2月末時点で3頭のオープン馬が誕生しており、クラシック出走も十分に考えられる。

ゴールドシップ

撮影:A-CLIP 浅野 一行 ゴールドシップが第2の馬生を過ごすビッグレッドファーム

やんちゃな芦毛たちが競馬場を沸かせる日

「黄金配合」から産まれた競走馬が、種牡馬としても成功の兆しが見えてきた中、ドリームジャーニー、そしてオルフェーヴルとよく似た血統背景を持つゴールドシップが勝っているのは、3歳から6歳までけがらしいけがもなく28戦を戦い抜いた丈夫さと、その期間、毎年のようにGⅠレースを勝ち続けた衰えぬ能力ではないだろうか。

また、ドリームジャーニーとオルフェーヴルの2頭が、安平・社台スタリオンステーションで繋養されているのに対し、ゴールドシップの繋養先は、父ステイゴールドも種牡馬として過ごしていたビッグレッドファーム。日高地区で繋養されている繁殖牝馬との配合から次々と活躍馬を送り出し、生産界の救世主となったステイゴールドの再来を願う、日高の生産者からのバックアップも望めそうである。

毛色はメジロマックイーンを彷彿とさせるが、そのやんちゃな性格は父のステイゴールド譲りだとも言われるゴールドシップ。2019年の夏、芦毛の毛色をした元気な2歳馬たちが競馬場を沸かせている姿が、今から想像できそうだ。

ゴールドシップ

撮影:A-CLIP 浅野 一行 父と同様、強くて個性的な産駒たちが競馬場を沸かせるだろう

村本浩平

村本浩平

馬産地ライター。1972年生まれ。20歳の頃に「第1回ナンバー・スポーツ ノンフィクション新人賞」を受賞。現在は馬産地でもある北海道をフィ ールドとしながら、生産地で働くホースマンの声を届けている。また、 中学生の頃からファンだった北海道日本ハムファイターズの取材も続ける。

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