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September 18 2015 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

水泳・木村敬一、リオを見据えた“今” ~ジャパンパラ水泳競技大会~

水泳・木村敬一、リオを見据えた“今” ~ジャパンパラ水泳競技大会~

9月5、6の両日、東京辰巳国際水泳場でジャパンパラ水泳競技大会(以下、ジャパラ)が行われ、来年のリオデジャネイロパラリンピックを目指す国内のトップスイマーたちが一堂に集結。2つのアジア新記録、30もの日本新記録が飛び出し、会場は記録ラッシュに沸いた。そんな中、結果よりも自らを追い込むことを重視して大会に臨んだのが木村敬一(東京ガス)だ。果たして、木村の狙いとは――。

記録ではなかった木村の狙いとは

今大会、最も注目されたのが7月の世界選手権で金2、銀1、銅1の計4個のメダルを獲得し、パラリンピック出場が内定した木村(視覚障害)だ。得意種目は100メートル平泳ぎ。昨年のアジアパラ競技大会、そして今年の世界選手権では見事金メダルに輝いた種目で、今やリオでの金メダル有力候補となっている。

今回のジャパラでも、平泳ぎで世界トップレベルのパフォーマンスが期待された。だが、初日の午前中に行われた予選では自己ベスト(1分12秒28)から5秒近くも遅い1分17秒05。「朝なので体が思うように動かなかった。しっかりと体を動かせれば、記録は上がってくると思う」と述べ、午後の決勝に臨んだ木村だったが、決勝でも実力を発揮することができなかった。1分15秒58と予選よりはタイムを伸ばしたものの、34秒台を狙っていた50メートルを35秒04でターン。昨年から課題としてきた後半の粘りも見られず、トップでゴールはしたものの、彼本来の泳ぎではなかった。本人も泳いでいて「進んでいる感じがしなかった」と調子の悪さを感じていたという。

しかし、木村にとって今大会の最大の狙いは記録更新ではなかった。「ふだんチャレンジしない種目にもチャレンジしつつ、レースの数をこなして強化していくことが今大会の目的」だったという。ふだんのトレーニングとは緊張の度合いも疲労感もまったく異なるレースで泳ぎこむことで、自らの体を追い込もうとしたのだ。

優勝した木村敬一。本人は「パラリンピックでメダルを獲るにはまだまだ」と首を振る。(2015ジャパンパラ水泳競技大会)

優勝した木村敬一。本人は「パラリンピックでメダルを獲るにはまだまだ」と首を振る。(2015ジャパンパラ水泳競技大会)

 

立ちはだかるライバルの存在

今大会エントリーしたのは、100メートル平泳ぎのほか、100メートル自由形、400メートル自由形、100メートル背泳ぎの計4種目。木村は、2日間で8レースを泳ぎ切った。タイム自体は満足いくものではなかったが、得たものは決して小さくなかったはずだ。目先の結果にこだわるのではなく、今の自分にとって大事なことは何かを、木村は冷静に見つめている。それは言葉の端々からも感じ取れた。

7月の世界選手権で、早くもリオ出場の内定を得た感想を聞かれると、彼はこう答えた。

「(リオが決まったからといって)何も変わらないです。(パラリンピックに)出ることが目標だったわけではないので」

彼がまったく浮かれた様子を見せないのは、3年前、目の前に立ちはだかったライバルの存在があるからだろう。

2012年ロンドンパラリンピックで木村は、100メートル平泳ぎで銀メダルを獲得している。だが、金メダルに輝いた中国人選手は1分10秒11の世界新記録を更新。当時、木村との差は5秒以上だった。そして、木村はその記録をいまだ破っておらず、2秒以上もの差がある。

「(今年の)世界選手権では結果はいいものでしたが、あの記録でパラリンピックで優勝できるとは思っていません。もっともっと、上を目指していかなければいけません」

ひとつひとつの結果で一喜一憂せず、やるべきことをやり続ける。すべては1年後、リオの地で勝負するために――。

国内では敵なし。世界でも表彰台の頂点を狙う。(2015ジャパンパラ水泳競技大会)

国内では敵なし。世界でも表彰台の頂点を狙う。(2015ジャパンパラ水泳競技大会)

(文/斎藤寿子、写真/越智貴雄)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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