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April 08 2016 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

「誰もが、いつでも、どこでも」の実現へ――「日本障がい者サッカー連盟」設立

4月1日、東京都内で「日本障がい者サッカー連盟」(JIFF:Japan Inclusive Football Federation)の設立発表会見が行われた。これまで各自で活動していた7つの障がい者サッカー団体をひとつに統括した組織で、日本サッカー協会(JFA)の関連団体となる。初代会長には元サッカー日本代表の北澤豪(きたざわ・つよし)氏が就任。JFAからのバックアップが得られる体制が築かれたことで、日本の障がい者サッカー界の発展が期待される。

サッカーファミリー増加の一翼を担う組織に

「年齢、人種、障がい、性別にかかわりなく、誰もが、いつでも、どこでも、安心してサッカーを通して明るく、楽しく生活ができるようにしていきたい」

2014年に初めて国内開催となったブラインドサッカー世界選手権ではアンバサダーを務めた経験を持つ北澤会長は、JIFF設立における思いをこう語った。

北澤豪さん

「日本障がい者サッカー連盟」の初代会長に就任した北澤豪さん

今回、JIFFに加盟したのは、「日本アンプティサッカー協会」「日本CPサッカー協会」「日本ソーシャルフットボール協会」「日本知的障がい者サッカー連盟」「日本電動車椅子サッカー協会」「日本ブラインドサッカー協会」「日本ろう者サッカー協会」の7団体。すべて一般のサッカー同様に、「世界一」をかけて行われるW杯や世界選手権などの国際大会が行われており、日本からも代表チームを送り出している。また、各地域にクラブチームがあり、リーグ戦や日本選手権などが開催されている。しかし、普及、育成、強化が思うように進んでいないというのが現状だ。

一方、JFAは2014年に「グラスルーツ宣言」を発表。「Football For All(サッカーを、もっとみんなのものへ)」というコンセプトのもと、「サッカーファミリー」を増やす活動を本格始動した。その一環として昨年には障がい者サッカー協議会を設置し、JIFF発足の準備が進められてきた。約1年という短期間での実現は、JFAの本気度が窺える。

JIFFでは、各障がい者サッカー団体の情報・意見を集約し、発展に向けた施策の企画立案や実施、さらにはマーケティングなどを行い、スポンサー企業への営業活動にも注力していく。そして、JFAは人材派遣や意見集約の調整役を担うなど、JIFFの活動をサポートする。JFAとJIFFが連携して、障がい者サッカーの発展を促していくという体制が築かれることになり、これまで単体ではできなかった広範囲な活動や支援が可能となる。

すでに、CPサッカー日本代表監督に元Jリーガーの安永総太郎(やすなが・そうたろう)氏の就任が決定しているという。また、各団体における契約などの諸問題をクリアし、近い将来には香川真司(かがわ・しんじ)や本田圭佑(ほんだ・けいすけ)らサッカー日本代表と同じユニホームを着用することも検討されている。

北澤会長は語る。

「(日本代表が)同じユニホームを着て、同じ夢を追うことで、今まで以上に知ってもらい、理解してもらい、参加、協力してくれる人たちが増えていってほしい」

「サッカーなら、どんな障害も超えられる。」――キャッチフレーズの実現に向けて、日本のサッカー界が動き出した。

「サッカーなら、どんな障害も超えられる。」

「サッカーなら、どんな障害も超えられる。」が、連盟のキャッチコピー

「誰もが」に込められた真の意味

また、今回のJIFF設立は、日本のサッカー界のみならず、日本のスポーツ界においても、その意味合いは決して小さくはないように思う。

2013年に2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が決定して以降、国内では「パラリンピック」や「障がい者スポーツ」を取り上げるメディアが増え、一般にも認知度が高まりつつある。「障がい者スポーツ=パラリンピック」というイメージを持つ人は少なくないだろう。そのため、パラリンピック競技ばかりに視線が注がれ、サポート体制が急務とされている今、パラリンピック競技ではない障がい者スポーツが取り残されているという現状があることは否定できない。

そんな中、JIFFではパラリンピック競技とそうでない競技との間に壁はなく、分け隔てなくサポートをしていく方針を打ち出している。統括団体の設立は「2020年東京パラリンピック」のためではなく、あくまで「グラスルーツ宣言」の一環だからだ。

JFAのグラスルーツ推進部部長であり、JIFFの専務理事を兼務する松田薫二(まつだ・くんじ)氏は、この時期に統括団体を設立した意義をこう語る。

「パラリンピックはイベント性としては大きいし、盛り上がる。でも、それが終わってしまって、お祭りのように過ぎ去るだけでは意味がない。なので、私たちはパラリンピックのためにではなく、パラリンピックで盛り上がっている今のうちに“日常”を変えて、障がいのある人たちも身近なところでサッカーを楽しむことのできる環境をつくっていきたいと思っています」

「パラリンピック競技である、ない」にかかわらず、スポーツを楽しむことのできる社会の実現こそが、障がい者スポーツへの真の理解、そして浸透だとすれば、JIFF設立の意義は大きい。今後、どのようにしてJFAと連携をとり、サッカーの輪を広げていくのか、注目していきたい。

(文・斎藤寿子/写真・越智貴雄)

7つの障がい者サッカー競技解説

  • 「アンプティサッカー」…主に上肢または下肢を切断した障がい者による7人制サッカー。6人のフィールドプレーヤーは、「クラッチ」と言われる杖のような補助器具を軸足にしてボールを操作してプレーする。ゴールキーパーは上肢に障がいのある選手が務める。2年に1度、ワールドカップが行われている。
アンプティサッカー

アンプティサッカー

  • 「CPサッカー」…脳性麻痺者がプレーする7人制サッカー。オフサイドがなく、片手で下から投げるスローインが許されていること以外、ルールは11人制サッカーとほぼ同じ。1984年のニューヨーク・アイレスベリー大会からパラリンピックの正式種目とされている(現在、2020年東京大会での実施は決定していない)。
  •  「ソーシャルフットボール」…精神疾患、精神障がい者がプレーするサッカー。基本的には5人制だが、女子選手を含む場合は最大6人までOK。今年2月には第1回国際大会が大阪で行われた。
  •  「知的障がい者サッカー」…知的障がい者がプレーする11人制サッカー。ルールは一般のサッカーとほぼ同じ。FIFAW杯と同じ年・開催国で世界選手権大会が行われている。
  •  「電動車椅子サッカー」…比較的重い障がいのある選手がプレーする4人制サッカー。フットガードの付いた電動車椅子で、直径32.5センチのボールを操る。2007年、2011年にワールドカップが開催された。
  •  「ブラインドサッカー」…視覚障がい者のために考案された5人制サッカー。4人のフィールドプレーヤーはアイマスクをつけ、見えない状態の中、ボールに入れられた鈴の音や、晴眼者であるゴールキーパー、ガイド、監督の指示などを聞き分けてプレーする。2004年のアテネ大会からパラリンピックの正式種目として行われている。
ブランドサッカー

ブランドサッカー

  • 「ろう者サッカー」…聴覚障がい者がプレーするサッカー。「デフサッカー」「デフフットサル」の2種目あり、ルールは一般のサッカーやフットサルとほぼ同じ。試合中は補聴器無しでプレーすることが義務付けられ、アイコンタクトや手話でコミュニケーションを図る。
斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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