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April 15 2016 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

前哨戦から見えたチームの“今” ~関東CUP 車椅子バスケットボール大会~<前編>

4月9、10日の2日間にわたって、さいたま市記念総合体育館で「第6回関東CUP 車椅子バスケットボール大会」が行われ、地元の埼玉ライオンズが2年ぶりに決勝に進出した。決勝ではゲストとして出場した韓国のソウル市車椅子バスケットボールチーム(WBT)に敗れ、初優勝は逃したものの、チームの勢いを感じさせるには十分な結果となった。今大会は5月の「第44回日本車椅子バスケットボール選手権大会」の前哨戦とも言われている。果たして約1カ月後に迫った国内最高峰の大会に向け、どんな課題、手応えを感じたのか。各チームの現況に迫る。

埼玉ライオンズ、少人数の中での戦略

埼玉ライオンズは、昨年の日本選手権では1991年以来、14年ぶりに決勝に進出し、準優勝。さらに今年3月に行われた「千葉市長杯争奪 全国選抜大会」では優勝するなど、今最も勢いのあるチームと言っても過言ではない。

しかし、実は昨年の選手権後から抱えている問題がある。7人しかいないという選手層の薄さだ。ベンチには2人しかいないため、チームにとって最も怖いのはファウルトラブル。特に障がいが軽く、攻撃の軸となる大館秀雄(おおだち・ひでお)と篠田匡世(しのだ・まさつぐ)以外にハイポインター(※)がいないため、5ファウルで退場することだけは避けたいという思いがある。そのため、ファウルを恐れない積極的なディフェンスがしづらいという弱点があることは否定できない。

そこで、チームの方針として重視してきたのがオフェンスだ。ポイントゲッターのひとりである篠田は言う。

「失点するのは、ある程度覚悟するしかない。だったら、それ以上に自分たちが得点すればいいという結論に至ったんです。目標は1試合70得点。どんなに点差が離れても関係なくこの目標を達成しようという気持ちがあるからこそ、最後まで攻める姿勢を失わずに戦える。それがチームの強みになっています」

今大会では70得点には至らなかったものの、大館、篠田はもちろん、日本代表候補でもある藤澤潔(ふじさわ・きよし)と永田裕幸(ながた・ひろゆき)のローポインター(※)2人も活躍。藤澤がアウトサイドからのシュートを決めれば、永田はキレのある動きでインサイドに切り込み得点を挙げ、攻撃の幅の広さを示した。

決勝で敗れはしたものの、昨年のアジアオセアニアチャンピオンシップ(AOZ)で、リオデジャネイロパラリンピック出場をかけて日本代表と激闘を繰り広げた韓国代表の5人が在籍しているソウル市WBT相手に、第4クオーターの途中までリードするという展開は、とても7人しかいないチームとは思えなかった。しかし、やはり最後は余力の差が出たのだろう。第4クオーターの得点は、ソウル市WBTが22に対し、埼玉ライオンズは8。同日には準決勝も戦っており、1日2試合、それも強豪相手とのタフな試合が続くスケジュールは、少人数のライオンズには厳しかったに違いない。

第6回関東CUP車椅子バスケットボール大会

決勝で激しく争った、白のユニホームの埼玉ライオンズと韓国のソウル市車椅子バスケットボールチーム(WBT)

5月の日本選手権では、優勝するには3日間で4試合に勝たなければならない。ライオンズにとって特に厳しいのは初日だろう。初戦でいきなり優勝候補のひとつであるワールドBBC(愛知)と対戦し、さらにもう1試合勝たなければ、翌日の準決勝に進むことはできない。少ない人数の中で、3日間で4試合走り切るだけのスタミナと、どれだけ最後まで高いシュート率をキープすることができるかにかかっていると言えそうだ。

土子、山口がカギを握る千葉ホークス

この埼玉ライオンズに準決勝で敗れたのが、前回大会の覇者である千葉ホークスだ。今年は、チームの柱のひとりである千脇貢(ちわき・みつぐ)がドイツのブンデスリーガに参戦しているため不在。そんな中、エース土子大輔(つちこ・だいすけ)がシュート力に磨きをかけ、チームのオフェンス力をアップさせてきた。杉山浩(すぎやま・ひろし)コーチも「キーマンは土子」と明言している。

第6回関東CUP車椅子バスケットボール大会

前回大会の覇者、千葉ホークス(白のユニホーム)は埼玉ライオンズに準決勝で敗れた。

今大会の準決勝ではその土子も欠場したため、チームは本来の力を出すことはできなかった。「この1年間でかなり技術を高めてきていて、土子と同じくらいの働きを期待できるまでに成長した」と、杉山コーチが期待を寄せていた山口健二(やまぐち・けんじ)も厳しいマークにあい、プレーに精彩を欠いた。しかし、土子、千脇がそろう日本選手権では、マークが分散し、山口も本来のプレーができるはずだ。

そんな千葉ホークスが「打倒」と燃える相手がいる。現在、選手権7連覇中の宮城マックスだ。2014年の日本選手権では決勝で対戦し、わずか3点差に泣いた。昨年は関東CUPの決勝で6年ぶりに宮城マックスから勝利を収めたものの、「本当の勝負」と考えていた日本選手権では、準決勝で20点差で敗れた。それだけに「今年こそは」という思いは強い。

「山口の成長という部分で、うちのチームが宮城マックスさんに少し近づけたのではないかなと思っています」と杉山コーチは自信をのぞかせる。今年の組み合わせでは、宮城マックスと対戦するのは決勝。「打倒・宮城マックス」と、2007年以来の「日本一」を同時に叶えるつもりだ。

(文・斎藤寿子/写真・越智貴雄)

※各選手には障がいの程度によって、障がいの重い方から1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5の8段階による持ち点がある。そのうち、1.0~2.5の選手を「ローポインター」、3.0~4.5の選手を「ハイポインター」と呼ぶ。

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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