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April 16 2016 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

前哨戦から見えたチームの“今” ~関東CUP 車椅子バスケットボール大会~<後編>

5月に行われる日本選手権での最大の注目は、やはり8連覇がかかる宮城マックスだろう。しかし、今回の関東CUPでは、初戦でソウル市WBTに敗れ、順位決定戦では清水Ⅿ・S・Tに逆転負けを喫して7位タイという結果に終わった。果たして、王者に何が起こっているのか――。

 起爆剤となるか!? 未勝利に終わった宮城マックス

実は、これが宮城マックスの真の姿ではまったくない。日本バスケ界随一のポイントゲッターである藤本怜央(ふじもと・れお)が、昨シーズンに続いてドイツ・ブンデスリーガに参戦しているため、不在なのだ。

チームの司令塔である藤井新悟(ふじい・しんご)はこう語る。

「4.5という一番のハイポインターであり、そして日本を代表する藤本選手が帰ってきた時、僕たちのチームは劇的に変わる。藤本選手のパワープレーはもちろん、彼にマークが集まれば、他の選手が楽にプレーすることができるという相乗効果が生まれる。そういう中でのチームの連携はどこにも負けないと思っています」

とはいえ、藤本ばかりに頼るつもりはない。昨年も藤本以外の選手の成長をチームのテーマに掲げ、個々のスキルアップを目指した。特にローポインターの得点力アップが課題だったが、それを見事にクリア。日本選手権で2.0点の豊島英(とよしま・あきら)がMVPに輝き、ベスト5には藤本のほか、1.0点の佐藤聡(さとう・さとし)が選出されたことがその証しだ。今年もそれは同じ。ベテランの佐藤聡は「みんな、怜央だけのチームじゃないというところを目指してやってきた」と強い思いをのぞかせた。

また、若手の育成も、ここ数年の課題だ。そんな中、今大会で台頭したのが20代の佐藤祐希(さとう・ゆうき)。岩佐義明(いわさ・よしあき)HCが望んでいる「藤本、中澤正人(なかざわ・まさと)の2人に続くセンタープレーヤー」として期待を寄せられている選手のひとりだ。

岩佐HCは「まだまだ物足りないですが」と前置きをしたうえで、今大会での佐藤祐をこう評価する。

「今大会の一番の収穫は佐藤祐でしょう。いかにファウルをせずに、ディフェンスリバウンドを取れるかが課題だったのですが、ディフェンスの面では70、80点をあげたいと思っています」

しかし、チーム全体としては力を出し切れなかったと感じている。課題に挙げたのはオフェンスだ。

「今大会は、シュートの確率がちょっと良くなかったですね。決めるべき時に決めないと、やはり苦しくなる。改めてそのことを確認することができた大会でした」

そして、一呼吸置いて、岩佐HCはこう語った。

「でも、燃えてきましたね。もちろん、今大会も勝ちたかった気持ちはありましたが、逆に選手権前にこういう結果になって良かったと思っています」

思いは選手も同じだ。「この大会では勝敗以上に、選手権につながる何かを持って帰りたい」と語っていた藤井。その“何か”について、彼はこう答えてくれた。

「今回は悔しさを持って帰ります。この悔しさがやる気を生み出してくれているので、もう一度“日本一”への思いを強くして、選手権に臨みたい。そして、必ず8連覇します」

第6回関東CUP車椅子バスケットボール大会

宮城マックスの司令塔、藤井新悟は8連覇を誓う。

未勝利に終わった関東CUPの悔しさが、王者を眠りから覚ます起爆剤となるのか。その答えは約1カ月後に出る。

NO EXCUSE、“香西効果”に不可欠な若手育成

藤本や千脇に先行してドイツに渡り、プロ選手としてブンデスリーガで3シーズン目を送っているのが、NO EXCUSEの香西宏昭(こうざい・ひろあき)だ。香西は、藤本と並ぶ日本のエース。インサイドからもアウトサイドからも高い確率でシュートを決め、ここぞという時にはスリーポイントで試合の流れを引き寄せるなど、多彩な技を持つ。

昨年、香西を擁するNO EXCUSEは日本選手権では予選リーグ敗退を喫したものの、7月にはDMSカップ、のじぎく杯と2冠を達成している。特にDMSカップでは決勝で宮城マックスを制しての優勝だった。相手がフルメンバーではなかったとはいえ、エースの藤本と、日本選手権MVPの豊島擁する宮城マックスに勝利したことで、改めて“香西効果”の大きさを感じたに違いない。

だからこそ、今シーズンの最大のテーマは、世界レベルの香西がレベルを落としてチームに合わせるのではなく、いかに自分たちのレベルを引き上げ、香西に近づくことができるか。そのために不可欠とされているのが、若手の台頭だ。

新戦力として期待されているのが、4年ぶりにチームに復帰した池田貴啓(いけだ・たかひろ)と、昨夏に加入した森谷幸生(もりや・ゆきたか)。ともに高さのあるハイポインターで、ポスト役の佐藤大輔(さとう・だいすけ)や、チーム一のポイントゲッターである菅澤隆雄(すがさわ・たかお)に続く存在とされている。既にスタメン入りを果たしている湯浅剛(ゆあさ・つよし)ら既存の若手とともに主力に躍り出れば、ベテランに頼らないチームへと変わり、戦力アップにつながる。

今大会、若手を積極的に起用した、日本代表の指揮官でもある及川晋平(おいかわ・しんぺい)HCは、その狙いについてこう語る。

「昨年の選手権後のDMSや、のじぎくでは、香西をチームに合わせることでうまくいきましたが、今年はこちらが準備を整えたうえで、香西を迎えて、選手権に臨みたいと思っています。そういった中で若手の育成は不可欠。ベテランに試合をつくってもらって、というのではなく、若手自身が責任を持ってプレーするというところまでもっていきたい。そういうところを実戦で学んでほしいなと思ったんです」

「世代交代の道半ば」というNO EXCUSE。果たして、日本選手権への準備はどこまで進めることができるのか。

日本選手権は5月3~5日の3日間にわたって、東京体育館で行われる。宮城マックスが8連覇を達成するのか。それとも、古豪復活や新王者誕生の瞬間が訪れるのか。今年もまた、“日本一”をかけた熱い戦いから目が離せない。

第6回関東CUP 車椅子バスケットボール大会

「第6回関東CUP 車椅子バスケットボール大会」(4月9、10日)の開会式。5月に開催される「第44回日本車椅子バスケットボール選手権大会」の前哨戦として熱い戦いが繰り広げられた。

(文・斎藤寿子/写真・越智貴雄)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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