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June 23 2016 By 椎名 桂子

男子新体操の新境地を拓く~宮城県名取高校団体~ 壁に挑み続ける異色チームが「勝負の年」を迎える(前編)

男子新体操の新境地を拓く~宮城県名取高校団体~ 壁に挑み続ける異色チームが「勝負の年」を迎える(前編)

「三つ子」の佐藤兄弟で一躍有名に

「男子新体操」は、近年、注目度が上がってきているスポーツではあるが、決してメジャーとは言えないスポーツだ。

それでも。

「男子新体操は見たことないけど、この子たちはテレビで見たことある!」という人は少なくないのではないか。
宮城県名取高校3年生の佐藤綾人・颯人・嘉人の3人は、「三つ子の新体操選手」として、ジュニア時代から注目を集め、さまざまなマスコミに取り上げられてきた。最近は、「三つ子」の上に「イケメン」もつくようになり、ますます注目度は上がってきている。
しかも、彼らは話題性だけではない。3人そろって実力も折り紙つきだ。綾人は小学6年生から、颯人、嘉人も中学1年生のときから連続して個人でも全日本ジュニアに出場し続けており、たびたびの入賞経験も誇る。

その佐藤兄弟を擁する宮城県名取高校男子新体操部は、ここ3年連続で高校総体に出場している宮城県のトップチームだ。
名取高校男子新体操部を率いるのは、本多和宏監督(名取高校教諭)だ。本多は、国士舘大学在学中に個人競技で活躍した選手だったが、現役当時からその卓越したセンスでファンの多い選手だった。創意工夫に満ちた演技は、当時の「体操らしい」男子新体操の中では異色だった。
さらに、彼は策士でもある。2009年の全国高校選抜大会で、初出場の聖和学園高校(宮城県)の監督を務め、準優勝に導いている。もともと男子新体操部はなかった聖和学園では、高校から新体操を始めた選手も多く、このときの準優勝は、「奇跡」とも言われた。
それだけの力をもった指導者がジュニア時代から育ててきた佐藤兄弟が、2014年に名取高校に入学し、前年は高校総体18位だった名取高校は一気に注目校にあげられるようになる。

名取高校

前評判も人気も高いが、上位の壁は厚かった1年目

彼らを擁した名取高校の全国デビュー戦は、2014年5月の全日本男子団体選手権だった。
ジュニア時代から、本多仕込みのダンス的なかっこよさは十分に身につけていた佐藤兄弟は、高校に入ると急激に身長も伸び、一段と見映えのする選手になった。おまけに男子新体操には欠かせないタンブリングの能力も高く、とくに綾人のひねりは体操選手のようなキレとスピードをもっていた。
料理人(監督)の腕は一流。素材も選り抜き。期待するなというほうが無理、というチームで挑んだ団体選手権での演技は期待を裏切らない「かっこよさ」だった。が、この時点では明らかに実施が追いついていなかった。いくつかの目立つミスもあり、構成点は9.175と上位陣に迫るものだったが、実施8.600。9位に終わった。高校総体では、実施もかなり上げ構成9.400/実施9.175で8位となるが、やはり上位校の壁は厚い、と感じざるを得なかった。

2014年の結果は、本多監督にとっても、選手たちにとっても納得のいくものではなかったかもしれないが、やむを得ない部分もあった。
上位チームに比べて、ダンス的な要素の多い名取の演技は、抜群にスタイリッシュなのだが、動きが速いので男子新体操で評価される同調性に欠けやすい。また、体操の深さ、大きさが出しにくく、観客のウケはよくても審判は減点せざるを得ない部分も少なからずあったからだ。
本多監督も、それはわかっていたのだろう。苦杯をなめた1年目を経て、2015年の団体選手権での名取高校の演技は、前年とはクオリティーがまったく違っていた。

名取高校

完成度を高め、評価も上がってきた2年目

「これが新体操なの?」と思うようなダンス的な動きの多さは変わらないが、その揃い方、音との合わせ方は、飛躍的によくなっていた。佐藤兄弟はジュニア時代から強い選手だったが、団体メンバーは6人。ほかの3人が佐藤兄弟と見分けがつかないくらいに動けるようになっており、タンブリングにも安定感が出てきていた。この年は、優勝した青森山田高校も完璧な演技を見せて18,875という高得点を出したため、名取高校は優勝には届かなかったが、構成9.425/実施9.075=18.500と青森山田に迫る得点を挙げ、準優勝を成し遂げたのだ。

しかし。

「名取は強くなっている」とこの大会で証明し挑んだ高校総体では、構成9.525/実施9.150とさらにスコアを上げるが、曲の初めの音量が小さく演技開始が遅れるというアクシデントがあり減点が0.4ついてしまい、11位という結果に終わってしまう。

能力は高い。

注目度も高い。

人気もある。

そして、着実に力もついてきている。

しかし、なかなか望むような結果がついてこない。
名取高校は、「見えない壁」にぶつかっているようにも感じられた。

名取高校

後編に続く»男子新体操の新境地を拓く~宮城県名取高校団体 ~ 壁に挑み続ける異色チームが「勝負の年」を迎える(後編)

椎名 桂子

椎名 桂子

2002年から個人ブログ、2004年からスポーツナビで新体操の情報発信を続けている。おそらく日本で唯一の「新体操ライター」。 トップ選手だけでなく、チャイルド、ジュニア、高校生などの試合も多数取材。女子のみでなく男子新体操にも精通する。練習の取材にも嬉々として出かける。

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