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July 22 2016 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

“初挑戦”で浮上したリオへの課題 ~パラ水泳・池愛里~

“初挑戦”で浮上したリオへの課題 ~パラ水泳・池愛里~

7月17、18日の2日間にわたって横浜国際プールでは、「ジャパンパラ水泳競技大会」が行われた。1カ月半後に迫ったリオデジャネイロパラリンピック前の最後のレースということもあり、代表選手たちは本番を想定してレベルの高い泳ぎを見せた。その中で、「限界」に挑戦したのが、高校2年生、17歳の池愛里(いけ・あいり)だ。初のパラリンピックとなるリオでは、リレーを含めて7種目に出場する予定で、今大会は厳しい日程の中で、いかに力を発揮できるかに焦点が置かれた。

1日6レースに挑んだ初日

「今は追い込みの時期。ジャパンパラでは結果にこだわりながらも、疲れた中でどれだけ泳ぐことができるかということに挑戦したいと思います」

大会前のインタビューでそう語っていた池。その言葉通り、今大会のスケジュールは「過酷」の一語に尽きた。初日、彼女は50m自由形、100m平泳ぎ、200m個人メドレーの3種目にエントリー。予選、決勝と合わせて6レースをこなさなければならなかった。1日でこれだけの種目を泳ぐのは、初めてだったという。

そして一番の勝負どころは、2日目にあった。彼女が今、最も得意としている100m背泳ぎが控えていたのだ。初日で6レースを泳ぎ、疲労のある状態で、2日目の100m背泳ぎでどんな泳ぎをするのか。それは池自身にも未知の領域であり、だからこそリオの前に挑戦する必要があった。世界最高峰の舞台で、トップスイマーたちと戦うための“準備”である。

初日、最初の200m個人メドレーの予選を終えると、その約30分後には100m平泳ぎの予選がスタート。さらに約1時間後には50m自由形の予選に臨んだ。人数が絞られ、1種目ごとのレース数が少ない午後の決勝では、さらにサイクルは早く、池はまさに疲労困憊だったに違いない。

午前に行われた予選では、3種目ともにまずまずの結果を出した。1種目目、昨年の世界選手権以来のレースとなった200m個人メドレーでは、予選から自身が持つ日本記録を0.41秒更新。続いて出場した100m平泳ぎでも大会新記録をマークし、調子の良さをうかがわせた。だが、午後の決勝では全3種目ともに予選を下回り、疲労の影響が出てしまった。

メダル争いに不可欠な決勝での強さ

2日目、女子100m背泳ぎの予選に登場した池の表情には、疲労の色は見えなかった。実際には「体はバキバキだった」という池だったが、スタートの位置につくその姿からは、しっかりとレースに集中しているように見えた。

ジャパンパラ水泳競技大会・池愛里選手

スタートにつく池選手。凛とした横顔からも集中力の高さがうかがえる。

それは、泳ぎ自体にも表れていた。50メートルを35秒93と、まずまずのタイムで折り返し、結果は1分15秒71の大会新記録。レース後、池は「本当は予選から自己ベストを狙っていったので、残念です」と悔しさをにじませながらも、「ただ、最低でも大会新は出したいと思っていたので、なんとかクリアできたのは良かった」と、少し安堵の表情も見せていた。そして「決勝では自己ベスト更新を狙います」と笑顔で宣言。最後のレースに臨む意気込みが感じられた。

その4時間後に迎えた決勝。果たして、リオに向けて手応えをつかむレースをすることができるのか――。

多くの報道陣が見つめる中、池は思い切りよくスタートを切った。残っているすべての力を出し尽くすつもりだった。しかし、50mの通過タイムは予選を0.48秒下回った。その前半での遅れが響き、結果は1分16秒09。やはり、予選を上回ることはできなかった。

しかし、決して疲労に負けたわけではない。前半こそ予選を下回ったが、実は後半50mのタイムはむしろ0.1秒上回っている。課題の一つとされていた「後半での粘り」が出てきた証拠でもあった。

2日間で計4種目、8レースを泳ぎ切った池に対して、峰村史世(みねむら・ふみよ)日本代表ヘッドコーチはこう語った。

「予選は、予定通りの泳ぎができていたので、良かったと思います。ただ、トップ選手たちはみんな、きつい中でも、決勝でタイムを上げてくる。それができなければ、パラリンピックで戦うことはできません。予選から決勝に向けて、どう上げていくのか。技術面でもメンタル面でも、その力を身につけていってほしいと思います」

池のリオでの目標は、全種目で自己ベスト更新、そしてメインとしている100m背泳ぎではメダル争いに加わるつもりだ。そのためには、やはり決勝でタイムを上げることが必須となる。

100m背泳ぎの自己ベストは今年1月、オーストラリアのレースでマークした1分13秒09。今年の世界ランキングでは12位となっている。リオでは、1分10秒前後が決勝進出ラインとされるだけに、池も「1分10秒切り」を狙っている。もちろん、容易なことではないが、17歳と若いだけに、成長のスピードは未知数だ。残り1カ月半でどこまで伸びるのか、リオ本番が楽しみだ。

ジャパンパラ水泳競技大会・池愛里選手

リオでは、全種目で自己ベスト更新が目標。得意とする100m背泳ぎでは、果敢にメダルを狙う―。

(文/斎藤寿子、写真/越智貴雄)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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