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August 30 2016 By WEB CARTOP編集部

ホンダF1の開発中枢部「さくら」で、F1プロジェクト総責任者の長谷川祐介氏に直撃インタビュー

ホンダF1の開発中枢部「さくら」で、F1プロジェクト総責任者の長谷川祐介氏に直撃インタビュー

ホンダの第四期F1挑戦初年度となった昨年の超低空飛行からは、見違えるように速さを増していく感がある今年のマクラーレン・ホンダ。2016年シーズンのこれまでの経緯とF1後半戦となるこれからをホンダF1の総責任者である長谷川祐介氏にお話を伺うために、開発拠点となっているHRD Sakura (さくら)を訪ねた。

Sakura

今年から新体制となり新たにF1プロジェクトの総責任者となった長谷川祐介氏に、まずはこれまでのホンダF1エンジンの状況と開発の流れを聞いてみることにした。

Sakura

「シーズンイン前の冬のテストでは、ホンダとしてはレース中にエンジンが壊れずにちゃんと行ければある程度のポジションでゴールできて何とかなるのではないかと思っていました。しかし、実際にレースが開幕するとフォースインディアやトロロッソもそうでしたが、意外にもと言っては失礼ですが新チームであるハースの活躍もありました。このまま普通に闘っているだけではトップ10にも入れないと認識したのが第3戦中国グランプリです。全車完走してホンダは12位と13位というポジションだったのを見て『コレではダメだ!』ということがはっきりしました」

つまり、この時点でホンダとして「F1で闘う読み」は甘かったということがうかがえる。そこから本来のホンダらしい姿勢でF1パワーユニットの開発と方向性を変えたのだ。

「予選の点火時期と決勝での点火時期でパワー設定を変えていたんですが、レースの時も予選のパワー設定で走らないとダメだと。予選のパワー設定でどれくらいの距離を走れるのか、エンジンのマイレージの中でギリギリまで使い切ろうというのを中国のレースを見て決めました。結局、フルパワー設定を実戦投入できたのが中国の次の第4戦ロシアグランプリでした」

ソチ・オートドロームでの予選は接近戦の末にフェルナンド・アロンソが14番手、ジェイソン・バトンは12番手に終わったが、決勝レースではスタート直後の波乱を抜け出した2台がロングランでのペースもよく、アロンソは決勝中のタイムがトップ5になるなど6位でゴール、バトンも10位となりダブル入賞を果たした。トップ3チームを除いた中団チームの中で、フルパワー設定となったホンダF1エンジンは戦闘力があることを確認でき手応えのあるレースとなった。

HONDA Official

(C)本田技研工業

「シーズンオフからホンダは、パワーと信頼性とターボの回生という三つの開発テーマをずっと進めてきました。常にアップデートしていかないとレースではどうにもならないとわかったので、信頼性はもちろん大事だけれど信頼性だけやっていてもしょうがない。それで中国グランプリ以降から開発の方向性を変えました。ターボに関しては、シーズンの序盤から回生量をフルデプロイできるレベルに持っていこうと。それができるようになったのが、第7戦のカナダグランプリです(アロンソは予選10位/決勝11位)。ターボを新しいのにして回生に関してはそれなりのレベルになったのが確認できました」

カナダグランプリではアロンソ選手が予選Q3に3戦連続で進出するなど速さの安定感が増してきており、さらに予選Q2ではフェラーリに0.4秒差まで詰め寄る速さを見せていた。長谷川氏としては本来なら第9戦となるオーストリアグランプリでエンジンそのもの(通称ICE)にも着手したものを導入予定だったが、残念ながらそれは第10戦イギリスグランプリまで持ち越された。しかし、ターボの効果はオーストリアでも速さとして実証された。バトンが雨交じりの予選Q3で今回のホンダF1挑戦では、最高位となる5番手ポジションを獲得したのだ(しかも他2選手のペナルティでバトンは3番手スタートに繰り上がる)。決勝でもこの好ポジションを生かし、結局は決勝6位でゴールしている。

マクラーレンにとっての母国グランプリとなるイギリスでは、ようやくエンジンのインダクションシステムのエアボックスに手を加えたものを投入した。つまりここまで、カナダでのターボ投入とイギリスでのエアボックスを入れた二回だけのアップデートにとどまり、それ以外は今ある信頼性を維持しつつパフォーマンスをどこまでギリギリ引っ張れるかということに専念してきたのだという。そしてその努力がようやく結果として表れたのが、第11戦のハンガリーグランプリだった。アロンソはすべてのセッションで7位を堅持、バトンも予選8番手(決勝はトラブルのためリタイア)と新生マクラーレン・ホンダとしては最高の予選ポジションを射止めた。

HONDA Official

(C)本田技研工業

「ハンガリーグランプリでのアロンソの決勝7位という結果は、いま望み得るベストなポジションだと思います。トップ3が全員リタイアしなかった中での7位ですから。しかし続く第12戦ドイツグランプリでは8位が精一杯でした。安定的に10位以内に入るためには、いまのままでは『必ず入れる』とはいえないのが現状のポジションですね。特にシーズン後半戦が始まるベルギーのスパフランコルシャン、イタリアのモンツァは厳しいレースになると思います。さらにリタイアも多く、これまでに7回リタイアしています。車体系のトラブルもありますが、チーム全体としてメカニカルトラブルは問題として解決しなければいけない。ホンダとしてはパフォーマンスも上げなければならないし、パフォーマンスが上がれば耐久性も厳しくなる。しかし攻めないと上のレベルには行けないというせめぎ合いをしなければならない段階にあると思います。トップ3に続くコンストラクター4位でシーズンを終わるには技術者としてというよりは、レースチームとしてコンストラクター順位を上げていくという方が大きいので、この先、毎戦7位と8位という成績を実現するにはどうしなければならないのかを考えないといけませんね」

ここまでの長谷川氏の話を聞いてわかったのは、ちまたでいわれているようなマクラーレンとホンダとの確執は見事に解消されたのではないかということ。ホンダはエンジンコンストラクターとして速く強いエンジンを作るのはもちろんだが、マクラーレン・ホンダというひとつのチームとして最善の方向性を互いに探りながら一丸となって問題に立ち向かい解決策を見いだしていることが話の中でうかがわれた。とはいえ、ファンならずとも一刻も早いマクラーレン・ホンダが表彰台の常連となる姿を見てみたい。今シーズン中にその勇姿を拝むことはできるのだろうか。

HONDA Official

(C)本田技研工業

「まずコンストラクター4位を目指すためにも、ピークパワーが足りていないです。元々レースエンジンの開発はほとんどが出力の開発です。今も開発は全力でしています。ですが現段階では耐久性などの確認ができていないので、どこでそのエンジンを投入できるかはわかりません。ボクが知りたいくらいです(笑)。もしかすると次のスパで入れられるなら入れたいです。母国の鈴鹿サーキットまで待つ必要もありません。一方で、これまで目指してきた我々の開発のステップは着実に踏めています。ただ最終的な目標が表彰台や優勝だと思っているので、まだまだ先は長いですね」

今シーズンも残すところ9戦。現時点を終わってみてエンジンコンストラクターは4メーカーあるが、パワー順にいうとどういう順になるのか聞いてみた。

「メルセデス、次がフェラーリですね。そしてルノー、ホンダは4番目だと思います。電気の部分はどこもそれほど変わらないと思います。少なくてもドイツのホッケンハイムでの車速差でいうとホンダはボトム2の21−22番手でした。トップと15km/hも差があるんです。まずはエンジンパワーでこの差を挽回する、という作戦です。もちろん簡単ではないですけどやるしかない。ここで負けているというのはホンダとしてあり得ないですから!」

Sakura

最後は往年のホンダマンのように負けん気の強さが垣間見えた長谷川氏のインタビューに、一刻も早い「速くて強いパワード・バイ・ホンダ」に期待しないではいられなかった。

WEB CARTOP編集部

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