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August 17 2016 By 向 風見也

男子7人制日本代表、レメキ ロマノ ラヴァが示す「チームマン」の態度。

チャンスでレメキ、ピンチでレメキ。ラグビーの男子7人制日本代表で、レメキ ロマノ ラヴァはそういう存在だった。すなわちキーマンである。

2016年8月。リオデジャネイロであった5つの輪を並べる国際スポーツ大会にあって、「7人制ラグビー男子の部」があった。

日本代表は緻密な敵国への分析など一発勝負への準備を奏功させ、ベスト4まで勝ち進んだ。桑水流裕策キャプテンが泥臭く体を張り、しなやかなランナーの後藤輝也が大当たりした。

常時おこなわれているセブンズワールドシリーズの主要チームではないなか、上位争いの候補をうっちゃる。会場のデオドロスタジアムで、お祭り騒ぎの支持者を獲得した。

その中核たるレメキも、笑顔の似合う褐色の顔を鬼に変えていた。

現地時間9日にあった、予選プールC初戦のニュージーランド代表戦。瀬川智広ヘッドコーチが「鬼ごっこ」と表現する息の合ったボールキープで、14―12とリードを保つ。

後半ロスタイム。決死の猛攻を受け、自陣ゴール前で耐える。

自陣22メートルで右から左大外へ球を回された先で、背番号「1」のレメキが、タックルした。

タッチラインの外へ出されそうな相手が苦し紛れに球を放り投げるも、その行く先はジャパンの仲間の手元だった。ノーサイド。日本代表が勝った。

勝利へのラストワンプレーに関わったレメキは、しかし、「キーマンですね」との問いを笑って否定する。

「私はキーマンじゃなくてチームマンだよ」

 

トンガにルーツを持つニュージーランド出身の27歳。いまは日本国籍を持ち、サーキットの街である三重県鈴鹿市に居を構える。日本語は流ちょうだ。

身長177センチ、体重92キロ。巨大化が進む国際ラグビー界のアスリートにおいては、明らかに小柄だ。

それでも「モアボール、モアボール」。動き回ってパスを呼び込んでは、守備網のひずみを脱兎のごとく突っ切る。チャンスをものにする。

守っては、危機管理力を示す。大きな突破を繰り出す相手の走路を先回りし、ニュージーランド代表戦のような捨て身のタックルを繰り出す。ピンチを脱する。

チャンスでレメキ、ピンチでレメキ。そう目される1人の父親の真骨頂は、そう、チームマンとしての資質である。

ラグビーは、ボールのある場所を境界線に人と人がぶつかり合う団体競技だ。

1人が球を奪い合う接点で相手をひきはがすことで、その他の味方全員にとっての攻撃のチャンスが広がる。1人の献身が皆の益に繋がる。ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン。

組織への忠誠心あふれる選手、すなわち「チームマン」は、ラグビー愛好家や仲間に無条件で好まれるのだ。

その「チームマン」を自任するレメキは、たくさんトライを奪った後に「自分がノートライでも、全部の試合に勝ったらいい」と断じたり、1日に複数の試合が組まれる7人制の大会期間中に「あぁ、ちょっと疲れたね。でもこれがラグビーだから」と即答したりと、「チームマン」の哲学を口笛のごとく放っている。

リオデジャネイロで戦う挑戦権を争う、アジア予選を終えた昨年11月初旬。開催地だった香港から日本に戻るや、15人制の国内リーグの試合に参加している。所属先のホンダの一員として、日本最高峰のラグビートップリーグへ挑んだのだ。ほぼ無休だった。前年度に負傷した膝に不安を抱えていたが、「いまは全然、大丈夫」と応じていた。

 

「凄く、ラグビーが好きなんだなという印象があります。本当に、好きで、やっているな、と」

こう語るのは後藤駿弥。三重県鈴鹿市を本拠地とするホンダの一員で、一時は7人制日本代表としてもレメキとプレーした27歳だ。

「苦しい練習の時でも、笑顔で『楽しくやろうよ』と言ってくれるので。元気のない選手に声をかけたり、皆にすごい気配りをするというか…。常にこういうことをしているので、特別にこれというもの(逸話)はないんです。ただただ、常に楽しくラグビーをやりたいんだろうな、という感じを受けます」

そんなレメキは7人制日本代表でのプレーを今回で一区切りとし、今後は15人制に専念するかもしれない。

メディア対応のさなか、国際リーグのスーパーラグビーへの参加もほのめかした。2016年に日本から初参戦するサンウルブズからもオファーを受けていると明かし、前向きに検討している風だった。

15人制と7人制は似て非なる競技とされる。同じサイズのグラウンドで戦う人数が約半数。試合時間も15人制は「80分の試合を1日に1試合」だが、7人制は「14~20分の試合を1日に複数」。フィジカリティ重視の15人制に対して7人制は回復力と加速力重視と、プレーヤーに求められる資質もやや異なる。

もっともレメキは、どちらのステージでもレメキであり続けるだろう。鬼の形相で芝を駆け回り、ノーサイドの笛が鳴ればほほ笑んで会場を去る。その精神性は、どちらのラグビーにおいても尊ばれるからだ。

ラグビー7人制男子決勝 突進するレメキ  日本―香港 後半、突進するレメキ=2015年11月8日、香港(共同)

ラグビー7人制男子決勝 突進するレメキ  日本―香港 後半、突進するレメキ=2015年11月8日、香港(共同)

向 風見也

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1982年富山県生まれ。2006年に独立し、ラグビーライターとして「ラグビーマガジン」「ラグビーリパリパブリック」「スポーツナビ」などの雑誌やwebサイトで寄稿。書籍の執筆や構成、イベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著複数。

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