
「切断ヴィーナスショー」後、出演者の須川まきこさん(左)は、義肢装具士の臼井二美男さん(右)にうれしそうに駆け寄った
彼女たちが履いている義足を手がけたのが義肢装具士の臼井二美男さんだ。競技用義肢の第一人者で、彼を頼りにしているパラリンピック選手は多い。また自身でも陸上競技クラブ「ヘルスエンジェルス」を主宰し、義足アスリートたちを育ててきた。
パラスポーツを追いかけ続けている写真家の越智さんも「臼井さんの義足はまさに芸術品。ユーザーのあらゆる要望に応え、難しい義足づくりにも挑戦している」と感服し、尊敬している。
パラリンピックにチャレンジできるのは障がいを持った人の中でも、スポーツが得意な人に限られる。だから『切断ヴィーナス』は、「障がいを持った人が自分を表現できる場のひとつ」だと臼井さんは話す。
「私がサポートしているアスリートたちは障がいを使って自分をアピールしています。だから障がいがその人の一つの強みと言えるかもしれません」ところが、そうした義足にポジティブな考えの人はまだまだ少ない。
「とくに女性は障がいを隠している人が多い。精神的にも悩んでいます。ショーに出演することは、障がいを隠すことと真逆です。自分を観客に見せるわけですから。それは精神的に自分の障がいについて克服していなければできないこと。これをきっかけに障がいを自分のチャームポイントだと思えたらいいですね」スポーツを通じて義足ユーザーの自立を促してきた臼井さんだが、このファッションモデルという新しいチャレンジに大きな可能性を感じている。
「特に女性は美しさを追求したいという思いが強いようです。ショーのモデルをしいている人たちは、とても一生懸命に取り組んでいるし、輝きが増しています。それを見た陸上競技クラブの男性メンバーが自分たちもモデルをしてみたいと言っているほどです。本当にうれしそうだし、美しいですね。」
自身が一本一本丁寧に、愛情込めて作り上げた義足をはいて輝くヴィーナスたちを見て、臼井さんもとてもうれしそうだった。
(取材:安藤啓一)
(写真:越智貴雄)
■お知らせ■
同イベントなどの様子を収めた写真展が、9月9日から10日の二日間、グランフロント大阪(大阪市北区)で開催される。また、12日には、同場所にてNHK大阪主催の「はるな愛プロデュース”バリコレ” ファッションショー」が開催され、切断ヴィーナスのモデル達(4人)も参加予定。
【写真展・開催概要】
イベント名:越智貴雄写真展「切断ヴィーナス」
日時:2015年9月9日(水)~10(木)10時~20時
場所:グランフロント大阪・ナレッジプラザ(北館1F)
入場料:無料
主催:越智貴雄写真事務所
協賛:中外製薬株式会社/メルデセス・ベンツ日本株式会社
協力:石川バリアフリーツアーセンター
その他:展示の一部は11日〜12日(18時まで)、義足のヴィーナスたちの写真展として、同会場で開催されているイベント内(NHKバリコレ)でも展示される。