“伊豆から世界へ”をテーマに掲げるサッカーチーム「SPORTS & SOCIETY IZU(SS伊豆)」。昨年2015年10月に伊豆を愛する3人の若者によって創設された。メンバーは、単身渡欧しサッカー留学経験のある、代表・片岡大輔氏(31)とGM・圡方周宏氏(29)。そしてもう一人の創設メンバーである杉山謙介氏(28)に、今回は話を伺った。
杉山氏は、伊豆半島の付け根に位置する函南町という町の出身。生っ粋の伊豆っ子だ。小学校からスポーツ少年団に所属し、中学、高校、そして大学とサッカー漬けの日々を送った。スポーツ少年団の仲間には、現在ブンデスリーガ・シャルケで活躍する日本代表・内田篤人氏がいた。内田とは幼馴染であり、FWのポジションを競い合ったという。
「自分はプロになるとかそういうつもりも無かったので、今後日本も高齢化が進んでいくってこともあって、福祉介護産業に携わりたいなと。大学では健康科学部社会福祉学科で、スポーツとは全く別の福祉の勉強をしました」
大学を卒業した杉山氏は、自分が望んだ福祉業界で働いていた。しかしながら、20代のうちにもっとチャレンジしたいと思い、ずっと思っていたことをカタチにしようと歩み出す。
「地元の伊豆をスポーツで盛り上げたい!」 「総合型地域スポーツクラブを設立したい!」
漠然とした想い…。だが彼は、27歳のときにスポーツマネジメントの勉強をスタートさせる。認知症ケア関連の仕事をしながら、MARS CAMPとヒューマンアカデミーのスポーツマネジメント講座に通い始め、そして半年後の修了展で、「地元の伊豆をスポーツで盛り上げたい!」という企画をプレゼンした。
「といっても、まだ単に修了展用に考えたアイデア企画というレベルでした(笑)」
ところが、その後とった彼の行動が、彼自身を大きく変えて行く。
「修了展で語った想いを、facebookに投稿したんです」
若者のノリなのか?
「自信無いし、一人では出来ないけれど、こういうコミュニケーションツールを使って人を集めることで、出来ないことも可能になるなあと、これまでもやってきました。まあノリで上げたってのも、もちろんありますけど(笑)」
穏やかでありながらも、芯を感じる口調で語った杉山氏。
「今までも色々と発信することで、連絡をくれて、じゃあ一緒にやろうかってことで、実現してきたものが色々あったんです」
そして修了展の想いの投稿を見た友人から、同じようなことを考えている奴がすでにいると聞かされる。
「オマエがやろうとしていることを、今地元でやろうとしている人がいるよと。そのときは一緒にやろうとは思っていないし。既に競合がいるっていう印象だったんですけど…」
少しするとその人からfacebookに連絡が来た。それが現在SS伊豆代表の片岡氏である。
「実際に会って話しするなかで、一人でスタートするより、二人、三人のほうがいいし、伊豆半島をスポーツで盛り上げたいっていう同じ想いなら、田舎でやっていくなかで競合するのはどうなのかなと思って、そこはすぐに意気投合して…」
そして話は、具体的な方向に進んだ。
「なんでそれをやりたいかという一つに、スポーツを使って、子どもたちの健全育成、人間性の部分を育てていきたいっていう、人材育成の部分を考えていました。そこで彼らとうまくマッチングして、では、SS伊豆ではJリーグを目指すサッカーチームと、子供たちに語学を教えるとか、子どもたちの夢や憧れとなれる活動からスタートさせようとなりました」
去年9月の修了展が終わった翌月、つまりたった1ヵ月で、アイデアが実際のカタチへと進み出す。10月に出会い、少しずつ構想を固めながら、まずはJリーグを目指すサッカーチームを作るために、今年1月にセレクションをおこなおうと。
「ただサッカーが上手いだけではなくて、人間性の部分をしっかり見たい」
この言葉は、セレクション時の選考ポイントである。
「SPORTS & SOCIETY IZU」。スポーツだけでなく社会や地域貢献も考えた活動をする。設定したSS伊豆のミッションは、「スポーツ・語学を通じて【夢】と【笑顔】を共有し、伊豆半島と世界をつなぐ架け橋となる 〜 IZU to the World 〜」。その想いはエンブレムにも表現されている。
「エンブレムの形は、伊豆半島です。色は、伊豆半島の透き通った海の青や、広大な自然の緑。アンカーが二つ入っているんですが、これから何十年も先までも伊豆半島で夢と情熱を注ぎ続ける団体であるという碇泊の碇と、これから若者が伊豆半島から世界に旅立つ出航の碇という意味なんです」
そして、ユニフォームスポンサーは3社名乗りを上げ、今年の6月からは駿河湾リーグ3部で試合をし、4戦全勝ととんとん拍子に進んでいる。
さらには、SS伊豆として、スポーツイベントを企画したり、英会話サークルの活動も並行しておこなっている。また、チームを応援してくれる会員に、伊豆の名産品をお返しするギフト企画や、ボランティアで農業体験する旅行「ボランツーリズム」を実施したりなど、チャレンジしている活動はすでに多い。3人の若者の発想には共感できる部分は多く、これほどまでの短期間で実現しているバイタリティには驚くばかりである。大人になりながらも、ずーっとサッカー少年である、彼らのチャレンジを心から応援したいと思う。杉山氏は最後に、「いつかは内田篤人をSS伊豆に迎え入れ、子どもの頃のように一緒に夢を見たい」と語った。