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September 29 2016 By 小林 香織

世界初!完全バリアフリーのマリンリゾート施設が奄美大島に誕生―この夏生まれた感動エピソードも

世界初!完全バリアフリーのマリンリゾート施設が奄美大島に誕生―この夏生まれた感動エピソードも

「車椅子の方に海の楽しさ、ダイビングの楽しさを伝えたい」。そんな1人の熱い思いから誕生したのが、世界初のバリアフリーマリンリゾート施設「ゼログラヴィティ」だ。所在地は“東洋のガラパゴス”とも呼ばれるほど美しい自然を誇る奄美大島。同施設は車椅子ユーザーが介添人なしで気軽にマリンアクティビティを楽しめるよう、きめ細かい配慮がなされている。

総建設費用はなんと2億5千万円。創設者である一般社団法人ゼログラヴィティ代表の鳥畑純一氏、ブランドアンバサダー兼エデュケーショナルアドバイザーを務めるパラリンピック銀メダリストの上原大祐氏に、完成に至るまでの思いや施設を利用した子供たちのエピソードを伺った。

スロープに水中エレベーターまで!徹底したバリアフリー仕様でマリンスポーツをもっと気楽に

ゼログラヴィティは、マリンスポーツに適した波が穏やかな清水(せいすい)という地域に位置し、スキューバダイビング、シュノーケリング、シーカヤック、マリンジェットなど全部で15種類もの海のアクティビティを体験できる。

ゼログラヴィティ

施設内は完全にバリアフリー仕様。バリアフリーのトイレとシャワーが完備された宿泊施設のほかに、スロープが設置され車椅子のまま入水できるプール(専用の車椅子に乗り換え、そのまま入水可能)、トップクラスのシェフによる本格的な料理が堪能できるレストランやBBQ場に加え、シーサイドバーやカラオケ設備まで整っており、まさに至れり尽くせり。

ゼログラヴィティ

奄美空港まで福祉車両での送迎サービスも行うほか、施設のすぐ前がビーチになっており移動にも困らない。プールでインストラクターと共にダイビングやシュノーケリングの練習を行い、準備が整ったら、いざ海へ。

ゼログラヴィティ

そして、おそらく世界に1隻しかないであろうバリアフリー仕様の専用船も完備。幅5.6m、長さ13.4mのカタマランボートには、車椅子に乗ったまま水中へ降下・上昇することができる「水中エレベーター」が備わっている。

ゼログラヴィティ

車椅子に乗ったまま自由に動き回れるよう船上のスペースも確保されており、もちろん、トイレやシャワーもバリアフリー。車椅子ユーザーが快適に過ごせるよう、細部にわたるまで配慮がなされているのだ。

ゼログラヴィティ

無重力ーゼログラヴィティ―の魅力を車椅子ユーザーに伝えたい、30年越しの夢が形に

創設者の鳥畑氏が、このマリンリゾート施設の構想を思い描いたのは、実に30年近く前に遡る。ダイビングを始めたときに感じた空を飛んでいるような無重力、その名のとおり「ゼログラヴィティの世界」を車椅子ユーザーにも味わってほしい、その思いからだった。

「私はサンゴやカラフルな魚にはさほど興味はなく、水中を浮遊しているときの自由さに惹かれたんです。息を殺して漂っていると、空を飛んでいるんじゃないかと錯覚するような感覚に陥ります。健常者の私がこれほど楽しいんだから、車椅子ユーザーの方がこの上下に動く自由な感覚を味わえたら、絶対に楽しいはずだと思いました」(鳥畑氏)

ゼログラヴィティ

そんな鳥畑氏が最初に車椅子ユーザーと出会ったのは、高校卒業後、1972年に訪れたオーストラリアのとある大学。そこでは車椅子に乗った人々が健常者と同じようにキャンパス生活を送っており、その光景に大きなショックを受けたという。

「それは当時の日本では考えられないことでした。その後、訪れたアメリカの大学でも同様の光景を目にしましたね。そういった経験から、ダイビングで無重力を感じたときに車椅子ユーザーのことを真っ先に思い出したんです」(鳥畑氏)

とはいえ事業の失敗やさまざまな紆余曲折があり、プロジェクトが動き出すまでにかなりの時間を要した。最初に構想を抱いてから約27年の歳月を経て、2013年に最初の一歩がスタートしたのだ。

「場所は両親の故郷である奄美大島に決めました。ダイビング仲間から『奄美はキレイですよ』と言われて潜ってみたら、海の透明度はバツグンだしサンゴも美しく環境的に申し分なかったから。2013年に奄美に派遣するスタッフが決まり、2014年に土地を購入、そこから建設をはじめて2016年の4月1日、やっとオープンまでこぎつけました」(鳥畑氏)

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施設と専用船の設計は、鳥畑氏が1人で担当。アンバサダーの上原氏にアドバイスをもらい、彼のOKが出るまで改善に改善を重ねたとのこと。ときには現場スタッフを怒鳴りつけながら、作業のやり直しをさせたこともあったとか。なぜならバリアフリーの知識をもたない施工業者のスタッフは、「車椅子での移動」を考慮せず、いつも通りの作業を行っていたからだ。

バリアフリー施設をつくる際は、スロープに塗るペンキひとつにも配慮しなければならない。ゼログラヴィティにいたっては、鳥畑氏監修のもと完璧なバリアフリー仕様に仕上がったが、残念ながら日本には「バリアフリー」と謳いながら、実際はバリアフリーではない施設が多く存在するそうだ。それは今後の大きな課題といえるだろう。

ゼログラヴィティ

この夏訪れた子供たちの成長した姿に感動、2020年に向け「おもてなし」の強化へ

今年の夏、アンバサダーの上原氏は鳥畑氏と共に障がい者の子供たちを連れ、ゼログラヴィティを訪問。その際、想像以上に子供たちが成長する姿を目の当たりにしたという。

「今夏は、小学校1年生の女の子2人、小学校4年生の女の子1人とそのご家族をお連れしました。そのうち、1年生の2人の病名は筋ジストロフィー(※)で、1人はほとんど体が動かない子です。

実際に施設でアクティビティを体験してもらったところ、子供たちは心から海を楽しんでいましたね。シュノーケリングはちょっと難しかったんですが、浮き輪を付けて海に入ったり、透明なクリアカヤックに乗って海中の景色を眺めたりしながらはしゃいでいて。親御さんたちも気兼ねなく楽しめるこの施設に、大満足してくれました」(上原氏)

※筋ジストロフィー…骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称。筋ジストロフィーの中には多数の疾患が含まれるが、いずれも筋肉の機能に不可欠なタンパク質の設計図となる遺伝子に変異が生じたためにおきる病気。遺伝子に変異が生じると、タンパク質の機能が障害されるため、細胞の正常な機能を維持できなくなり、筋肉の変性壊死が生じる。その結果、筋萎縮や脂肪・線維化が生じ、筋力が低下し運動機能など各機能障害をもたらす。

ゼログラヴィティ

ゼログラヴィティ

「ただ個人的に一番成長したなと思ったのは、筋ジストロフィーの女の子のお姉ちゃんでした。健常者である小学校3年生の彼女は小さい頃から病気の妹に気を使い、やりたいことをガマンしていたんです。でも、この日はプールや海に積極的に入って初めて泳げるようになり、嫌いだったプールが好きになったと言っていました」(上原氏)

「妹を守ることを第一優先にして生きてきた子だから、『自分は楽しんじゃいけない、ワガママを言っちゃいけない』ってプレッシャーがあったんだと思います。けど、大自然を前にして気持ちが解放されたんでしょうね。自らカヤックにも乗って、子供らしく自由に遊んでいました。そんな彼女の姿を見て、感動で胸がいっぱいに。私がやりたかったことは何も社会貢献とか大それたことじゃなくて、こうやって誰かが楽しみを見いだしてくれることなんです」(鳥畑氏)

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今後の展望としては、冬季限定のクジラウォッチングを開始するほか、来年も障がいを抱えた子供たちとのツアーを検討しているとのこと。さらにスポンサー企業やサポーターも幅広く募集し、2020年の東京パラリンピックに向けて、世界中の支援者からサポートを受ける仕組みづくりも本格的に始動する。

鳥畑氏の夢の結晶である「ゼログラヴィティ」は、世界中からのゲストを「真のおもてなし」で迎えるべく、スタートを切ったばかりだ。

 

(取材・文:高良 空桜)

 

【一般社団法人 ゼログラヴィティ清水ヴィラ】
〒894-1521 鹿児島県大島郡瀬戸内町大字清水122
HP : http://zerogravity.jp (2016年9月29日現在リニューアル中)

【問い合わせ先 総代理店】
株式会社LA DITTA
〒105-6027 東京都港区虎ノ門4-3-1城山トラストタワー27階
TEL : 03-5403-4853  /  FAX : 03-5403-4854

小林 香織

小林 香織 Facebook

2014年デビューのフリーライター。現在、「恋する旅ライターかおり」名義で、恋愛・旅・ライフスタイルジャンルの執筆にも挑戦中。人生の豊かさ、可能性を広げるためのメッセージを発信したいと願っている。自由な人生バンザイ

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