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September 29 2015 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

パラリンピック選手のタマゴを発掘! ~2020東京パラリンピックを目指して~

8月9日、日本パラリンピック委員会(JPC)は選手発掘事業として、「めざせパラリンピック!可能性にチャレンジ2015」を開催した。会場となった東京都障害者総合スポーツセンター、東京都立北特別支援学校には、19競技のブースを設置。約50人の参加者がさまざまな競技を体験し、競技関係者との交流を深めた。

パラリンピック選手のタマゴ

パラスポーツの入り口に

昨年に続いて行われたこの事業は、「パラリンピックを目指す障がい者児に、パラリンピックスポーツを体験する機会を提供し、将来のパラリンピック日本代表選手を発掘すること」を目的としている。実際、昨年はこの事業への参加をきっかけに、パラリンピック競技に転向した参加者もいる。大槻洋也JPC強化委員長によれば、次のような例があったという。

「市の特別ルールで健常の方のソフトテニスの大会に出ていたという、下肢に障がいのある中学生がいたんです。しかし、この事業に昨年参加したことによって、初めて車いすテニスという競技があることを知り、『車いすを使用すれば、自分も硬式テニスができるんだ』ということがわかって、それから車いすテニスを始めたという例がありました」

そのほか、既に競技をしている選手が、自らの能力を最大限に発揮するために他の競技に転向したり、各団体への問い合わせやホームページへのアクセスが増えるなど、この事業の成果は決して小さくはなかった。

2回目の開催となった今年の特徴は、対象者を「中学生以上」としたことだ。「より多くの人にパラリンピック競技を知ってもらう」ことが目的だった昨年は、年齢制限を設けずに「誰でも参加できる」イベントとした。そのため、幅広い年齢層の参加者が来場し、会場内も盛り上がりを見せていた。

一方、今年は5年後の東京パラリンピックを見据え、主役となるであろう年齢層である「中学生以上」にターゲットを絞ることによって、より東京パラリンピックに直結した事業としたのだ。そのため、参加者数は減少となったが、それだけ一人ひとりに時間をかけられるというメリットが生まれた。

将来のパラ選手にもたらす新たな世界観

会場内を取材していて、特に印象的だったのは、5年後には主役として期待されている中学生、高校生たちの目の輝きと積極性だ。卓球室では中学1年生の男子生徒が、真剣なまなざしで現役選手たちとラリーをしていた。聞けば、小学生の時にクラブで卓球を経験してその面白さにはまり、今年入学した中学校では卓球部に所属しているのだという。

「球をビシッと決めた時が一番気持ちいい。将来の夢はパラリンピックに出場して、メダルを取ることです」

しかし、学校では障がいがあって「危険だから」という理由で、大会には出ることができないのだという。悔しそうにしている息子の姿を見て、母親が「この子が参加できるものはないだろうか」とインターネットで探したところ、この事業の開催を知り、応募したのだ。彼にとって自らの世界と可能性を広げ、夢をもつ大きなエネルギーとなったに違いない。

また、プールでは過去パラリンピックで2ケタのメダルを獲得し、日本のパラ水泳界を牽引してきた成田真由美と河合純一が参加者にアドバイスする姿も見受けられた。群馬県から来た中学1年生の女子生徒は小学1年生から地元で水泳を習っており、目標はパラリンピック出場。彼女にとって、パラリンピアンたちと直接触れ合う機会は貴重だったようで、「パラリンピックに出場した成田選手と話せて、泳ぎのアドバイスをもらえてうれしかった。『もっと腕を早く動かすと、きっとタイムが伸びるよ』と言われたので、これから練習に取り入れていきたい」と語った。

一方、各団体も優秀な選手の発掘に懸命だ。陸上の関係者が一様に注目していたのが、あるひとりの男性だ。19歳という彼は、高校卒業後に就職した会社での勤務中の事故により、1カ月半前に左脚をヒザ下から切断。小、中学校ではサッカー、高校ではラグビーをやっていたという彼は、「一番好きだった科目は体育だった」と語る通り、根っからのスポーツマン。「とにかく体を動かしたかった」と、今事業に参加したという。

本人は「パラリンピックとか、そういうことはまだ何も考えていない」ものの、陸上関係者からは熱い視線が注がれていた。三井利仁日本パラ陸上競技連盟理事長は、彼の脚のふくらはぎや足首を見て「間違いなく高跳び向き」と、唯一の義足ハイジャンパーとして活躍してきたベテラン鈴木徹の後継者として期待の声を寄せた。

「9月19、20日に大阪・ヤンマースタジアム長居でジャパンパラ競技大会があることを伝えたら、『見に行ってみたい』と言ってくれていた。ぜひ、世界で活躍する日本のトップ選手たちを見て、やる気になってくれたらうれしい。我々も精いっぱい支えていくつもりです」

同イベントは、今月26日に大阪会場(大阪市長居障がい者スポーツセンター)でも開催され、48人が参加する予定だ。前日の25日には、パラリンピック東京大会開幕までちょうど5年という節目の日を迎える。5年は長いようで短い。選手の発掘・育成・強化の確固たるシステム構築の土台として、この事業をどう今後につなげていくかが問われることになりそうだ。

(文/写真・斎藤寿子)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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