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October 09 2015 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

“全員バスケ”でリオ出場へ ~車椅子バスケットボール~

“全員バスケ”でリオ出場へ ~車椅子バスケットボール~

いよいよ決戦の火ぶたが切られる――。10月10~17日の8日間にわたり、千葉ポートアリーナで車椅子バスケットボールアジアオセアニアチャンピオンシップが行われる。同大会は来年のリオデジャネイロパラリンピックへの切符をかけた大一番。男子は12カ国・地域で3枠、女子は3カ国で1枠の出場権を争う。今回は11大会連続出場を目指す男子について分析する。

チームを変えた世界選手権での敗戦

今大会、日本の最大のポイントは“全員バスケ”を遂行できるかどうかだ。これまでは5、6人のレギュラーメンバーが試合時間40分のほぼすべてにフル出場するという試合が少なくなかった。しかし、現在はそれでは世界では通用しない。それを痛感したのが昨年の世界選手権だった。

日本はグループリーグで2勝4敗に終わり、決勝トーナメントに進出することはできず、結局9位に終わっている。この時の敗因を聞くと、全員が口をそろえて挙げたのが「後半での弱さ」だった。第2クオーターあるいは第3クオーターまでリードしながら逆転負けを喫する試合が続いたのだ。

実はこの頃から世界の潮流はスタメンだけに頼るのではなく、チーム全員で40分の試合時間をシェアし、ここぞという大事な最終局面ではフレッシュな状態でスタメンを投入するという戦い方に変化していた。しかし、この時の日本は、従来通りスタメンに頼っていた。そのため、後半に体力面での差が浮き彫りとなり、逆転を許すかたちとなったのだ。つまり、日本は世界に一歩後れをとっていたのである。

それ以降、日本は「12人のメンバー誰がいつ出ても、高いレベルで戦えるチーム」を目指し、強化を図ってきた。そこで及川晋平(おいかわ・しんぺい)ヘッドコーチは、さまざまなユニット(5人の組み合わせ)を試し、それぞれのユニットの強みを引き出すことに注力した。

その作業によって生まれたのが、スタメンのみならず、12人全員が戦力であるということの自覚、そして一人ひとりのレベルアップなくしてチームの勝利はないという責任感だ。

2014年アジアパラ競技大会

全員バスケでアジアオセアニアチャンピオンシップに臨む(2014年アジアパラ競技大会)

世界選手権の3カ月後、昨年10月に行われたアジアパラ競技大会では、準決勝でアジアの強敵イランを延長戦の末に破った。実はイランには2008年北京パラリンピック以降、一度も勝つことができずにいた。その相手に、日本は第4クオーター残り約30秒で3点差を追いつき、延長で勝利するという快挙を成し遂げた。

最大の勝因は、世界選手権で重要性を痛感した“全員バスケ”にあった。日本は第2クオーターまでに12人全員が出場し、そのために後半にスタメンがフレッシュな状態で臨むことができた。それが最後の大事な局面で生きたのだ。日本は大きな自信と手応えをつかんだことは間違いない。

キーマンと見るハイポインター土子

 

さらに、それ以降も進化を遂げている。車椅子バスケでは、選手それぞれに障がいの程度による持ち点(※)があり、コート上の5人の合計を14点以内にしなければならないというルールがある。障がいの軽い選手にも、重い選手にも、出場機会が与えられ、それぞれの役割を担う。これが車椅子バスケの最大の特徴だ。

従来、得点力という点においては、障がいが軽く、体の機能が利くハイポインター(持ち点が高い)の選手が担うことが多く、ローポインター(持ち点が低い)の選手はハイポインターがシュートしやすいように、相手の動きを止めるなど、いわゆるサポート役という部分が大きかった。

しかし、現在の日本は違う。ローポインターもハイポインターに負けないスピードとシュート力を持ち、オフェンスの面でもしっかりと戦力になっている。特に注目したいのは、1チーム最年少の16歳で成長著しくスピードのある鳥海連志(ちょうかい・れんし)、優れたドリブル力でインサイドに切り込む力のある永田裕幸(ながた・ひろゆき)、安定感抜群でアウトサイドからのシュートを得意とする藤澤潔(ふじさわ・きよし)の、それぞれ持ち点が2.0の3人だ。彼らがそろって出るユニットは試合の中でもカギを握る。

一方、今年3度にわたる合宿の取材を通して、個人的に予選突破のキーマンとにらんでいるのが、土子大輔(つちこ・だいすけ)だ。彼は4.0のハイポインター。所属する千葉ホークスではエースでキャプテンを務める、まさに大黒柱だ。しかし、日本代表としての国際大会となると、これまで“Wエース”の藤本怜央(ふじもと・れお)と香西宏昭(こうざい・ひろあき)の陰に隠れる存在であったことは否めない。シュート力に長けているものの、いい時と悪い時との差が激しく、またディフェンスの面ではやや脆さがあることが課題とされてきた。

土子大輔

シュートする、土子大輔選手(2014年アジアパラ競技大会)

高さも兼ね備えている土子が攻守にわたって安定したプレーができれば、さらに選手層が厚くなり、“Wエース”をしっかりと休ませることもできるだろう。そういう意味では、彼がどこまで精度の高いプレーを見せてくれるのか。これがカギを握るような気がしてならない。

今大会、男子は日本を含む12カ国・地域で3枠を争う。実力的には、昨年の世界選手権を制覇したオーストラリアが頭ひとつリードし、それをイラン、韓国、そして日本の3カ国が追いかけるかたちだ。つまり、2枠をイラン、韓国、日本が争うことになることが予想される。切符を獲得するためには決勝進出、もしくは3位決定戦で勝つことが必要だ。

果たして、ユニット型“全員バスケ”で挑む日本は、アジアの強豪たちとどんな戦いをするのか。準決勝が行われる16日、あるいは決勝と3位決定戦が行われる17日、会場が歓声に包まれる瞬間を心待ちにしたい。

※各選手には障がいの程度によって、障がいの重い方から1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5の8段階による持ち点がある。

2014年アジアパラ競技大会

リオの切符をライバルの韓国、イランと争う日本代表。

 

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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