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February 03 2017 By 中村多聞

アメリカンフットボールのポジション(前篇)

前回、難しいと思われがちなアメリカンフットボール(以後フットボールと言わせていただきます)を初心者でも楽しく見られる方法をご紹介しました。今回からはもう少し踏み込んで「ポジション」の説明をしてまいりたいと思います。人数の少ないチームの場合は完全に例外となりますので、今回は米国のプロやそれに準じた組織で運営されている強豪チームの一般的な考え方をお話ししたいと思います。

「ポジション」といいましても、野球のような「攻撃は全員バットを振る」というようにわかりやすくはありません。フットボールにはかなりの種類の「ポジション」があります。今僕が資料を何も見ずに挙げていったとしても、ポジション名が漏れたり重複したりするはずです。それほど複雑でチームによっては不必要なポジションがあったり、特別に設置されたポジションなど種類はとても豊富です。今回は初心者向けですので、主だったポジションに的を絞っていきたいと思います。

フットボールチームは「大きな会社」や「軍隊」と同じような仕組みになっていて、それぞれが自分に与えられた任務だけを黙々とこなします。攻撃と守備をそれぞれ違う人が分担している、というのはスポーツ好きの方ならお聞きになったことがあるかもしれません。まったくその通りで、攻撃の訓練を積んだ人が守備を担うという事態はよほどのことがあっても起こり得ません。適性の変化やチーム事情での人事異動や配置換えということはもちろんありますが、トップレベルになると、1つの試合で攻守両方を担う選手は非常に稀有な存在です。

以下にポジションを並べてみました。攻撃に5種、守備に3種、別枠でキック専門職があります。たったのこれだけです。野球も9人。フットボールも9種。それぞれのポジションが1人だったり6人だったりするのはサッカーと同じく監督やチームの考え方で変化します。

まずは最高の花形ポジションであるクォーターバック(QB)からご説明したいとろですが、他のポジションとは分かりやすさが全く桁違いなので後に回すことにします。

全てがセットプレーで終始するアメリカンフットボールでは、各ポジションで役割が分担され、体の大きさや性格、俊敏性などで適材適所に配備されることはご理解いただけると思います。時にはチーム内で本人の希望が優先されることもありますが、強い組織ですとそうもいきません。全てのポジションが必要不可欠であり、全員が歯車なので1ピースでも欠けると作戦が崩壊します。ほとんどの作戦において「予備のBプラン」を用意してはありますが、全員の思いと動きが一致しなければ作戦を成功に導けません。ひとつの試合で「特別なたった1プレー」だけ起用される選手も居ますし、攻撃なら攻撃、守備なら守備の全プレーに出場する選手も居ます。求められる体力や持久力も大きく違って来ますので、役割によって練習やトレーニング方法なども全く違います。僕はフットボールにおいて、ポジションが違う、すなわち「全く違うスポーツ」だと思っています。

では、それぞれのポジションをご紹介していきましょう。

「攻撃ライン」

球技なのにボールを持つことがなく、ボールを触る機会はほとんどありません。フィールド内の11人のうち5人がこの「攻撃ライン」です。「ラインマン」とも呼ばれます。背が高く横幅もある、いわゆる「大男」のポジションです。走る速さはチームで最も遅くマラソンなども苦手です。気は優しくて力持ち。協調性が豊かで相手のあらゆるプランを事前にビデオや資料で予習し、それを記憶して対策を練り、体当たり(ブロック)だけで静かに敵を倒します。ファインプレーをしても目立つことなくテレビカメラにも映りません。ファン目線では派手な動きもないので正に縁の下の力持ちです。気の毒なことに、ミスや反則をした時だけテレビにアップで抜かれ名前と出身大学を実況に言われます。結婚すると良いお父さんになるだろう率が最も高い人間性が集まるポジション。僕も娘がおりますが「嫁に出すならオフェンスラインだね」と妻も言っています。クォーターバックと仲が良く、後述のタイトエンドの3ポジションで遊びに行くことが多く見受けられます。いずれも白人選手の比率が高いのでそうなるのかもしれません。格闘家として有名なボブ・サップ氏がこのポジションです。(スター選手のサイズ195cm、135kg)

「タイトエンド」

これはあまり聞き慣れないかと思います。先述した「攻撃ライン」でもあり、パスを受けることもあるという、器用だが大男がやるポジションです。「攻撃ライン」の仕事もし、後述するパスキャッチ専門の「レシーバー」の役割も果たします。近年の米国プロフットボール(NFL)では200cm120kg以上の選手が台頭してきています。もちろん鈍重さはなく100mを10秒台で駆ける選手も居ます。2種類のポジションを兼務する器用さと頭の良さ、そして体の大きさが求められ、チームに1人、または2人しか居ません。(スター選手のサイズ200cm、115kg)

「レシーバー(ワイドレシーバー)」

細身の俊足。必ずしも長身でなければならないわけではありませんが、一般的には背が高い方が有利とされています。敵が仕掛けた守備の罠をいち早く発見して空いているゾーンに走り込み、抜群の集中力とスピードでボールをキャッチします。アメリカでプロや大学の試合だと大事な場面でロングパスが投げられる瞬間、5万人以上が。時には10万人以上の観客が総立ちになって大興奮します。ド派手なパスキャッチのシーンは名場面集などでフットボールファン以外の方でもご覧になられたことがあるのではないでしょうか。(スター選手のサイズ190cm、100kg)

「ランニングバック」

これは読んでそのままで、ボールを持って走るポジションです。僕にとって最も思い入れのあるポジションです。そうです。僕は元ランニングバックです。ボールを渡されると守備の11人全員がタックルに来ます。これらを避けてフィールドの端っこである「エンドゾーン」にボールを持っていくのが仕事です。フットボールの攻撃は大きく分けると「ラン」と「パス」の2種類があります。ランニングバックは「パス」も受けますが、やはり「ラン」が仕事のほとんどの部分です。敵に触れられないように走るのがうまい人、触れられてからが強い人の2種類が居ます。これらを併せ持つ選手が世界的なスーパースターに成り得ます。ボールを持つポジションではありますが、レシーバーとは体格が違いガッシリしていることが多いです。敵のハードなタックルを1試合に何度受けてもいたまない強靭な肉体と分厚い筋肉。そして強い精神力が備わっていなければ長いシーズンを戦い続けられません。フットボールも他の球技と同様、ボールを持つ選手を中心に全てが回るので、テレビカメラやファンの注目を浴び続けます。一挙手一投足が報じられ、活躍しなければ解雇。ファインプレーを続ければ英雄。世界一決定戦であるご存じ「スーパーボウル」でも最優秀選手賞を受賞した人の数はクォーターバックに次いで2番目に多いのですが、ここ20年ほどはパス主体の攻撃が主流になり、ランニングバックの受賞者がおらず僕個人としてはとても寂しい限りです。(スター選手のサイズ185cm、105kg)

「クォーターバック」

チームの中心。野球でいうと「全試合登板するエースで、なおかつ4番打者」という立ち位置です。つまりクォーターバックの出来不出来でチームの運命が左右されるといえます。アメリカでは完全なるピラミッド型の競争が成り立っていますので、プロのトップで何年もプレーしている選手は全ての能力が備わっているスーパーマンといえます。ほとんどの選手が小学生から町のスターで、中学・高校ももちろんスター街道まっしぐら。そして多くの有名大学からスカウトされ、自分に最もフィットしたチームに進学。1年時から試合に出て大活躍。ドラフトされプロになり、すぐにトップスター。絵に描いたようなスター街道ですがほとんどの選手が「神に選ばれた才能」を持っています。運動神経抜群、体も大きく強い。賢さもありリーダーシップも抜群。女性からもモテまくり。陽気でお喋りがうまければ引退後もテレビで大活躍。古くはジョー・モンタナ氏などが日本では非常に有名です。(スター選手のサイズ195cm、100kg)

今回は攻撃側(オフェンス)のポジション説明を致しました。次回は守備やその他をご紹介したいと思います。

アメフト③

SATO MAKOTO

中村多聞

中村多聞

1969年 大阪生まれ。 練習もままならない大学3部リーグの恵まれない環境からフットボールを始め日本を代表するアメリカンフットボール選手に。国内ではアサヒ飲料在籍時に日本選手権ライスボウルでMVPを獲得。本場アメリカNFLのグリーンベイ・パッカーズと契約、NFL傘下のNFL欧州ライン・ファイヤーと複数年契約するなどプロ選手として活躍した。現在は大阪と東京で飲食店を運営する会社を経営する傍ら「多聞式バックス養成所」で後進の指導にあたっている。

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