昨夏に取材したウルトラマラソンの原公輔選手に、その後を取材した。
▼以前の取材記事
日本を横断!? 東京―新潟を走破! ウルトラマラソン原公輔①
カレーを飲んで走るアスリート。ウルトラマラソン原公輔②
昨年のインタビューでは、年末の神宮外苑24時間マラソン(日本選手権)で上位に入賞し、日本代表に選ばれるのが目標だと語っていた原選手。
このレースは神宮外苑1周1325mのコースを24時間延々と走り、その総距離で順位が決まる耐久レースである。1周して戻ってきたら、水分や食事などの栄養補給をしたり、休憩したり、あるいは寝てもいいというルールになっている。
で、結果はどうだったのだろうか。
「結果は148kmで、75位くらいだったかと…」
昨夏に取材したときは、非常にバイタリティのある選手だと感じていたのに…。正直意外な結果だった。
「途中、モチベーションが上がらず、4時間ほど寝ました…」
ちなみに優勝者の総距離は263.127kmで、この記録は2016年世界ランキング1位だという。1km換算で約5分30秒、しかも休憩も含まれるというから、ものすごいペースである。原選手も2年前には204kmを走り、20位だったという。この大会で上位5位ぐらいに入ると、世界選手権に出場できるということで、原選手もそこを目指したわけだが…、無念の結果に。
原選手いわく、「大好きな酒も、レース前5日間禁酒したんです。でも、やっぱり練習量が少なかったですね…」と。
昨年全体の活動状況についても聞いてみると、「去年はモチベーションが全く上がらなかった…」と。
自身のブログにも、昨年末にこう綴っている。
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今年1年は何が何でも神宮でいい走りをしてやる!という気がなぜか起こらなかった。
1年間で練習含めて最も走ったのが、途中でリタイアした雁坂峠越えの90kmほど。
今年はムリせず走りを楽しもうと思い、過ごしてきた。
やっぱり走るのは楽しいし、友達も増える。
とってもよい1年だったけどやっぱり物足りない。
結果云々ではなく、「世界一になる!」と強い意気込みで走っていた2013年は走り始めということもあり、結果がバンバンでた。
しかしダメージが蓄積されたのか、走り方なのかケガで思うように走れなかった2014年。
裸足を取り入れ、糖質制限も含め試行錯誤の年だった2015年。この年はハーフで自己ベストがでた。
そして、結果を出すことにモチベーションがあがらなかった今年、自己ベストは一つも出なかった。
当然といえば当然。
もう休憩はおしまい。
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そんな原選手であったが、今年は新年から気持ちを切り替え、練習している。
「昨年は休みの年だったので。今年に入ってからは練習量も増やしています。それに、フォームの改善もやっています。上半身を上手に使うように意識して」と、そのフォームを見せてくれた。脚だけで走ると脚に負担がかかるので、上半身の両側筋を交互に上下に動かすようにして、その動力で脚が前に出るように繋げるのだと。その格好は、競歩の選手の上半身の使い方のようだ。どうやら、四足動物が前脚と後脚を使って走るのと同様の理論なのだという。
あるスイムフォームコンサルタントが言っていたが、「美しいフォームで泳げていれば水の抵抗を減らすことができるので、楽に、速く泳げるようになる。なので、まずは美しいフォームづくりを目指していくことが大事になる」と。マラソンも同様なのだろう。全身を使うことで、脚の負担を軽減し、ラクに走れる。ラクに走れると、長く、速く走れる。そうすると自己ベストも出て、モチベーションも上がる、ということだろう。
原選手は年が明けてからは、距離の短い駅伝に裸足で出場して、この後のレースに備えている。この後のレーススケジュールを聞いてみた。
2月19日 高知龍馬マラソン(フル)
3月12日 淀川寛平マラソン(フル)
4月16日 かすみがうらマラソン(フル、裸足)
5月 タイミッドナイトマラソン(フル)
2、3、4、5月と、毎月フルマラソンを走る。なんというモチベーションだろうか!昨年とは全く違うのだろう。中でも、5月にタイで行われるミッドナイトマラソンが楽しみだという。実は原選手、よしもとのふるさとアスリートに登録されており、よしもとから出場依頼があったそうだ。「タイの街の中を走るんです!」とうれしそうに話してくれた。
原選手はプロのランナーではなく、製薬会社の営業職MRをしながらのサラリーマンランナーである。MRは厳しい職種、かつ、時間が不規則な仕事であるため、なかなか練習時間が取れないと想像できる。しかし本人は、涼しい顔で練習時間は取れているという。35歳になる原選手の今年のレースが楽しみだ。