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February 17 2017 By 村本浩平

幻の史上最強馬。種牡馬としてキングを目指すドゥラメンテ

ドゥラメンテは荒ぶっていた。

2月7日に安平町の社台スタリオンステーションで行われた「社台スタリオンパレード2017」。この日、展示された29頭の種牡馬で最初に姿を見せたドゥラメンテは、スタッフと歩様を合わせて歩こうとしないどころか、時には二本脚で立ち上がることさえあった。

素晴らしい血統を背景とした理想の馬体

その猛々しい姿に、「自分がキングだとアピールしているのでしょう」との言葉を贈ったのが、現役時にドゥラメンテを管理していた堀宣行調教師である。

この日、ドゥラメンテ、そしてこちらも現役時に管理をしていたモーリスの展示に際して、挨拶という形式でのセールスポイントを語った堀調教師は、「1歳の4月に初めて会ったときから、圧倒的なオーラを感じた馬でした。その後、さまざまな馬を見てきましたが、ドゥラメンテほどの馬にはなかなか巡り合えていません」と最大級の賛辞をドゥラメンテに対して贈る。

その堀調教師はドゥラメンテの馬体を語る際に、「この背中からき甲(首と背中の境にある盛り上がった部分)にかけてのラインは、この牝系独特のものであり、力強い飛節(後ろ脚の関節部分)とあわせて競走馬の理想だと感じています」とも話していたが、ドゥラメンテという競走馬を語る際に、その血統背景、特に「牝系」の素晴らしさについて触れないわけにはいかないだろう。

ドゥラメンテ(堀先生)

撮影:A-CLIP 浅野 一行 モーリスも育てた堀調教師は、ドゥラメンテを「日本競馬史上最強馬となれたと思う」と評した

 

母娘3代のGⅠ馬と時代を彩る名種牡馬たちの末裔

母アドマイヤグルーヴは3歳時と4歳時にGⅠエリザベス女王杯連覇。その母であるエアグルーヴは3歳時にGⅠオークスを勝利すると、4歳時にはGⅠ天皇賞・秋へと出走。一線級の牡馬を退けて、17年ぶりに牝馬の天皇賞優勝馬となった。

しかもそのエアグルーヴの母、ドゥラメンテからは曾祖母となるダイナカールもオークスを優勝。この素晴らしい牝系を支えてきたのが、その時々の名種牡馬たちである。

ダイナカールの父となったノーザンテースト、エアグルーヴの父となったトニービン、アドマイヤグルーヴの父となったサンデーサイレンス、そしてドゥラメンテの父となったキングカメハメハの4頭全てが、チャンピオンサイアー(その年、最も産駒が活躍した種牡馬)に輝いている。

しかも、GⅠ勝ちこそ収めてはいないが、ダイナカールの母、シャダイフェザーの父であるガーサントもまた、1970年のチャンピオンサイアーに輝いている。ドゥラメンテは父母共に良血馬というだけでなく、その血統には日本競馬の歴史も重ね合わせている。

9戦5勝、2着4回。ほぼ完璧な競争成績を残して引退

しかしながら、ドゥラメンテのレースぶりは、良血馬の枠には収まらないほどに豪快なものだった。初のGⅠ勝利となった皐月賞。4コーナーに入るまではインコースを進んでいたドゥラメンテは、直線に入ると芝の上を滑るようにしながら、一気に馬群の外へと進路を向ける。

決して行儀のいいレースとは言えないだろう。だが、横移動をしたドゥラメンテ自身も立て直すまでに時間を要する不利を背負うこととなったのも事実。だが、そこから桁違いの末脚で、GⅠドバイターフを制したリアルスティール、2016年度のJRA年度代表馬に輝いたキタサンブラックを並ぶ間もなくかわしさっていく。

続く日本ダービーも圧倒的な支持に応えて勝利を挙げただけでなく、計時された2分23秒2の勝ち時計は、父であるキングカメハメハ、そしてあのディープインパクトをも凌ぐレコードタイムを樹立。競馬は同じコースで行われるレースでも、馬場や天候、展開の違いもあり、一概に比較はできないものの、数字上でドゥラメンテは、この2頭と同等以上の能力を証明したといえる。

その後は骨折による休養やレース中のけがもあり、万全なパフォーマンスを残せたとは言えないが、それでも現役時は9戦5勝、2着4回というほぼ完璧な競争成績を残した。

競走馬の馬体は、一般的に古馬(4歳)に完成を迎えるといわれているが、ドゥラメンテの牝系は古馬となってからのさらなる成長力を競走成績としても証明している。

日本ダービーの後でけがによる休養がなければ、同世代の馬たちとの力の違いからして、史上8頭目の三冠馬ともなり得ただろうし、古馬となってからは日本競馬の悲願といえる、凱旋門賞制覇も成し遂げていたのではという気さえしてくる。

ドゥラメンテ(顔)

撮影:A-CLIP 浅野 一行 展示会でも自分がキングだとアピール

 

父キングカメハメハ、そしてディープインパクトを超えて

堀調教師もその事実を証明するかのように、「まだ競走馬として完成する前の引退であり、この馬のパフォーマンスをしっかりと残せたのなら、日本競馬史上最強馬となれたと思います」と語っていた。その言葉を聞いている間も、ドゥラメンテはずっと荒ぶり続けていたのだが、むしろ生産関係者にとってはさまざまな動きができる柔軟性と、卓越したバネを際立たせた印象もあったのではないだろうか。

堀調教師は挨拶の最後に、「何年後かには社台スタリオンステーションのキングとなってくれると思います」との言葉を述べた。現在、社台スタリオンステーションの、いや、日本競馬のキングとなっているのは、この「社台スタリオンパレード2017」の大トリを飾る形で登場してきたディープインパクトである。

昨年まで4年連続でのチャンピオンサイアーに輝き、サトノダイヤモンド(有馬記念、菊花賞)、マカヒキ(日本ダービー)など、9頭のGⅠウイナーを送り出した。もちろん、ディープインパクトの座に迫る前にも、父であるキングカメハメハなどを超えるような産駒成績を残さなければいけない。そう考えると、展示会で見せたこの荒々しさは、「俺を最初に展示しやがって!」という、ドゥラメンテの憤りという見方もできないだろうか。

来年以降、「社台スタリオンパレード」におけるドゥラメンテの展示順は、もっと後ろになっていくはず。ひょっとしたら数年後、ディープインパクトやキングカメハメハを差し置く形で、大トリに姿を見せる日もそう遠くないのかもしれない。

ドゥラメンテ(荒ぶる)

撮影:A-CLIP 浅野 一行 ドゥラメンテはずっと荒ぶり続けていた

村本浩平

村本浩平

馬産地ライター。1972年生まれ。20歳の頃に「第1回ナンバー・スポーツ ノンフィクション新人賞」を受賞。現在は馬産地でもある北海道をフィ ールドとしながら、生産地で働くホースマンの声を届けている。また、 中学生の頃からファンだった北海道日本ハムファイターズの取材も続ける。

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