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April 13 2017 By 小林 香織

心に国境なんて必要ない。子供たちの未来を開くダンスを−ダンサー・中込孝規(後編)

中込孝規

「国や言葉や文化の違いを超えて、世界中の子供同士が友達になれる社会をつくりたい」。2016年10月、中込孝規(29歳)は壮大な夢を叶えるため日本を発った。前編はこちらから。

舞台は日本から1万km以上も離れたアフリカ。多くの日本人はアフリカに対して、「貧しい」「危険」といったネガティブな印象を持っている。そんな一部分だけでなく、生き生きと生活する彼らの姿を伝えたいと思った。

初めて挑んだクラウドファンディングの成功により、活動資金のみならず145人の頼れる仲間にも恵まれ、約3ヵ月にわたり、ガーナ、ウガンダ、ルワンダで活動を展開。「世界が変わっていく瞬間」を中込は自身の目で、耳で、肌で確かに感じた。

中込孝規

サプライズのバースデーソング、笑顔と涙にあふれた最終日

ルワンダと日本の子供たちをインターネット中継でつなぎ、1ヵ月をかけてひとつのダンス作品を創り上げるワークショップ。失敗するたび活動の意義を自分に問いただしながら、1回1回丁寧に積み重ねてきた。そんな努力が実を結ぶかのように、2週間を経過した頃から明らかに状況が好転しはじめる。

「それぞれの国の子供たちが考えた振りを、お互いに教え合う場面では、僕はノータッチで子供たちに任せたんです。そうしたら、みんな一生懸命『伝えよう』とがんばってくれて、しっかり相手に伝わっていました。そのうち、子供たちがお互いの名前を覚えて呼び合うようになり、変顔をしながら笑い合うようになった。僕や他のスタッフがサポートしなくても、子供たちだけで仲良くコミュニケーションをとるようになってきたんです」

中込孝規

中込孝規

「やっぱり子供たちのパワー、ダンスの持つパワーはすごい!」、中込の心は大きな希望に包まれた。そして、迎えたワークショップ最終日。忘れられないエピソードが生まれた。

その日は12月24日。リーダー格の6年生の男の子「バシリ」の誕生日だった。ダンスを終え、両国の子供たち同士のコミュニケーションが始まると、中込はバシリに「今日は何の日?」と尋ねた。バシリが「自分の誕生日だ」と答えた次の瞬間、モニターからバースデーソングの大合唱が。歌のプレゼントは、中込と日本の子供たちで企画したバシリへのサプライズだった。

「バシリはダンスも英語も上手で、自分の感情を表に出さない大人びた子です。そんな彼がバースデーソングを聞いた瞬間、今までに見たことがない表情をして体を震わせていて。バシリは感動で胸がいっぱいになって、泣くのを必死でこらえていたんです。この光景を見たら、それまでの迷いが吹き飛んだ。『自分を信じてやってきてよかった』と思いました」

中込孝規

1ヵ月の間、日々相手のことを考え、一緒にダンスを踊り、同じ時間を過ごし、両国の子供たちの間には確かな友情が築かれていた。だからこそクールなその少年の心に、言葉では言い表せないほどの温かな感情が芽生えたのだろう。

「弱音を吐ける場所」、支援者の存在が心の支えだった

最高にハッピーな場となったルワンダのワークショップを終えた2日後、中込の体に異変が現れた。旅の間中ずっと腹痛に悩まされていたが、さらに頭・歯・顔面に激痛が。それは生命の危機を感じるほどの凄まじい痛みだった。

「ひたすら金属バットで殴られているようなひどい頭痛で、顔面も歯もズキズキ。顔の左半面には痺れもあって、歯が原因なのかもしれないけど、よくわからなくて。ワークショップを終えて張り詰めていたものが切れたのかもしれませんが、『もし脳に何かあったら本当にマズイ。帰らなきゃ』と思いました」

ルワンダの病院で診察を受けると、歯と歯茎が腐って菌が回っているとの診断結果。「すぐに抜歯しないとダメだ」と言われたが、環境面から日本で治療したほうがいいと判断し帰国を決めた。飛行機の遅延やロストバゲッジなど、あらゆる旅のトラブルに巻き込まれながら、2017年の年明け早々、なんとか日本に帰り着く。

「心が折れそうなとき、一番の支えになったのは支援者グループの存在でした。弱音も受け入れてくれる仲間がいたことで、どれだけ救われたか。今回、勇気を出してクラウドファンディングに踏み切って本当によかった。応援を受けながら、みんながハッピーになる形で、自分の夢を叶えることができるんだって教えてもらいました」

中込孝規

帰国後、中込の体は順調に回復。アフリカの大切な思い出が詰まった荷物も、無事に見つかった。緊急帰国となったが、一時帰国ではなく本帰国とした。「集大成としてルワンダでやりきった」、そう思えたから。

平塚で「世界とつながるダンス教室」を開校!新たな夢のはじまり

帰国から3ヵ月、中込は大きな決断をした。平塚で「世界とつながるダンス教室」を開校する。これはかねてからの中込の夢だった。この地に教え子がいるわけではないが、刺激的な仲間がいる場所を選んだ。

そして3月25日、平塚で初めての中継イベントを実施。ほぼ人脈のない土地にも関わらず25名もの子供が集まり、ウガンダの小学校と中継でつないだ。身を乗り出し、好奇心いっぱいのまなざしを向け、パソコンのモニターに手を振る子供たち。

中込孝規

「心に国境なんて必要ない。肌の色が違っても、言葉が通じなくても、心は通じ合える」。その思いは、より一層深まった。子供たちとダンスを踊っているとき、異国の子供たち同士に絆が生まれた瞬間、心が震えるほど幸せな気持ちになるのは、誰よりも中込自身だった。

ありのままの自分でいられる場所、生きている喜びをもっとも感じられる世界を、彼は自らの手で創り出したのだ。

中込孝規

「自分とは異なる考え方や文化を受け入れ、子供たちの世界や可能性をもっともっと広げたい。自分に自信を持ち、やりたいことに一歩踏み出してほしい。それが、『世界とつながるダンス教室』で叶えたい僕の願いです」

帰国後は、EXILEが出演する「Eダンスアカデミー シーズン4」に出演、読売新聞で5回にわたり連載が組まれたほか、NHKの「人生デザインU-29」への出演(放送予定日:4/18)も決まるなど、ますます注目を浴びる中込。とはいえ、知名度が上がっても自分らしさを失わず、「できるだけ目の前の一人と丁寧に接したい」と話す。

中込孝規

そんな中込はこのアフリカでのプロジェクトを通して、もうひとつ確かな手応えを感じていた。

「ダンスを通じて相手と深くコミュニケーションをとることで、子供たちの目の色が、行動がガラッと変わる瞬間があり、そこから彼らの世界は明らかに広がっていた。きれいごとじゃなく自分の力で世界は変えられる。その最初の一歩は、目の前にいる一人の感情を動かすことなんだと思いました。僕だけじゃなく、誰もが世界をより良くしていく力を持っている。心に生まれた思いを口に出して、行動して、周りを巻き込んでいけたら絶対に世の中は変わっていくと思います」

心に夢を描いても「きっと自分には無理だ」、「リスクを冒してまで挑戦する勇気がない」と、志半ばであきらめてしまう人は少なくない。そんな消化しきれない思いを抱えている大勢の人にとって、中込孝規の存在は必ず光になる。

ひとりでも多くの人が勇気を振り絞り、彼のあとに続くことを願う。夢をつかみとった人の数だけ、世界はより良く変わるはずだから。

 

中込孝規
BLOG:世界一周!1万人の子どもにダンスを教える旅@平塚で「世界とつながるダンス教室」開校
Facebook:中込孝規
Twitter:中込孝規@アフリカでダンス教えてる人
Instagram:@nakagome63

 

(取材・文:小林 香織)

小林 香織

小林 香織 Facebook

2014年デビューのフリーライター。現在、「恋する旅ライターかおり」名義で、恋愛・旅・ライフスタイルジャンルの執筆にも挑戦中。人生の豊かさ、可能性を広げるためのメッセージを発信したいと願っている。自由な人生バンザイ

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