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May 08 2017 By ゆるすぽ編集部

フィンスイミングの明るい未来をつくる、明る過ぎる女子日本代表 山階早姫

「あっはっは! 毎日何がそんなに楽しいのって言われてんで! あっはっは!」

電話取材にもかかわらず、明るい様子がすぐに伝わってきた。彼女は、フィンスイミング女子日本代表選手・山階 早姫(やましな さき)さん、28歳である。

「ブログやツイッターを拝見しました」と話を切り出すと、「もう、しょうもないことしか書いてないので!」と、キレの良い関西弁で返す。出身地のことを聞くと、「ずっと大阪で育ったので、関西弁しかしゃべれません。東京に3日くらい居て大阪に戻ってくると、エスカレーターで(東京のように左側に乗っちゃってて)クソっ!と思うんですよ」と答えてくれた(笑)。

とても、とても、楽しい方だ!

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写真は本人提供

そんな彼女は、かつては2012年のロンドンオリンピックを目指していたトップアスリートだった。日本選手権では、リレー種目の選考対象種目で6位という成績を挙げた。4位まで出られるため、大学卒業後、選手生活を1年続け、競泳に死ぬ気で懸けた。しかし、夢は叶わずに終わった…。

「ロンドンまでの経緯は苦しくて…、もちろんオリンピックには出られなかったんですけど…、もうプールに行くのもヤダって。塩素の臭い嗅いだら気持ち悪いとかなっちゃって、結構引きこもってたんです」

当時の様子を振り返ってくれた。

「そのときに、同じスイミングで頑張ってた先輩がフィンスイミングを2006年くらいから先に始められてて、その人に『ずっと今まで水泳やってきたのに、そんな嫌いになったらあかんやろっ!』て」

その先輩とは、同じくフィンスイミング日本代表の谷川哲朗選手だ。

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写真は本人提供

「彼とは15、6年の付き合いなんですけど、『一回おいでよ! 競泳とは全然違うから~!』って。まあ、競泳やってる子ならのみ込みが早いのですぐにできるし、『一回おいで!』って半強制的にプール連れて行かれて、『こんな競技なんやでー』って教えられて…」

関西人のなせる業である。

「で、気づいたら試合にエントリーされててみたいな(笑)。それがロンドンの選考会が終わって一か月後くらいで。『え、え、え!』って…。『そんな練習してへんから試合なんか行かれへんよー』って言ったんですけど、『大丈夫、大丈夫、(競泳時代の)貯金があるから~』って…」

やはり…、関西人のなせる業である。

フィンスイミングは、大きく分けて2つの種目がある。“モノフィン”と言われるイルカの尻尾のようなフィンを付けて泳ぐもの。“ビーフィン”と言って、ダイビング用の2枚フィンのようなものを付けてクロールで泳ぐもの。

「競泳から移ってきた人は、ビーフィンを付けてクロールを泳げばいいんですよ。私も最初は、『これ履いてクロール泳ぎな!』って…」

スピードは、モノフィンだと競泳の1.5倍くらい。ビーフィンだと、女子が男子のタイムくらい出るという。続けて、泳ぎ方も教えてくれた。

「競泳は、腕7割、脚3割という感じですけど、フィンスイミングは、脚100%みたいな。あとは、腹筋と体幹という感じなので、競泳より自分の体の使い方を考えて泳がないと記録は伸びないです」

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写真は本人提供

「それに、腰の負担がすごいんです。泳ぎ慣れてない人がやると次の日動けないとか言われます。水中での腰のうねりがスゴイから、見てみると思ったよりもウネってると思うんです(笑)。自分の足よりも何倍も大きなフィンを付けて、それを振り切ることで前に進むので、上半身から使って、とにかくカラダ振って振って、というような感じです」

そんな彼女は、始めてから2カ月ほどでビーフィンの日本代表になった。アジア大会では銅メダルも獲得した。競泳で憧れた日本代表の座とメダル。でも、フィンスイミングという種目のため、彼女は「私が日本代表でいてるのは、運やと思っているので」と謙虚だ。

「年も年ですし…。日本代表の中やったら、私、女の子やとダントツで年が上なので(苦笑)。なので年のせいで、『代表の女子キャプテンやってね』とか言われるんですけどね(あはは)。今年29になる年なんです」

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写真は本人提供

しかも彼女が素晴らしいのは、高校の社会科の教員なのだ。普段社会人として働きながら日本代表として競技をしている。生徒や学校の反応を聞いてみた。

「生徒は訳分かってないと思います。私もあんまり言わないんですけど。休むときは、担当しているクラスには言っておかなあかんなあと思って、『いや、実はさあ…』ってしゃべるんですけど。すると、今のコたちはホントにすぐ調べるんです。調べると『うおっ!』ってなって。担当してないクラスのコも『めっちゃ泳ぐ先生や!』とか『日本代表なん?』とか言われるんですけど、でも多分よく分かってないと思います(笑)。学校の先生たちはみな応援してくださるので、快く休ませてくれますし、『いってらっしゃーい!』って送り出してくれますね」

日本代表選手としての今後の競技ビジョンを聞いてみた。

「5月の日本選手権で、また日本代表に決まれば、アジアでメダル取りたいって変わっていくと思うんですけど。ただ日本の競技力も上がってきて代表争いも均衡してきて、いずれ代表落ちするでしょうし、ずっと日本代表でいることは無理なので…」

当然、競技への思いが強いのかと思っていたら、意外な答えだった。

「もちろん、競技は競技でまだまだ若いコに負ける気はないので、がんばりますよ。ただ、フィンスイミングというスポーツの価値を上げたいんですよ!」

なぜ彼女がそう言うのかというと、関西だと冬の練習場所に困るらしい。というのも、関西の屋内プールは冬になるとスケートリンクになってしまうからだ。屋内プールのある大学は、部外者は入れない。彼女が通っていた同志社大学は残念ながらプールは屋外。ならば市民プールはというと、フィンスイミングの認知が低いため、プールに傷が付くとか危険だなどと、練習場所の確保が難しい。奇跡的に理解のある市民プールの館長が、日曜の夜だけ貸してくれた。そのため彼女自身も週1回しかフィンを付けて練習できないという。

練習環境を整えるためにも、もっと広く知らしめたい。そのためには、競技力の向上も必要だ。

しかし次世代を担う若い子たちの中には…

「ウチのチームにも若い中学生、高校生の選手がいて、その子たちも含め若い選手の中には、『日本代表を目指したい』『世界で戦いたい』みたいなことを言っているのに、行動が伴っていないというか。意識改革しないと全体の競技力は上がらないかなって。私も偉そうなことは言えないんですけど(笑)。全部やってもらって当たり前、おんぶに抱っこじゃなくって、自分で考えたり、自発的に行動を起こしたりしていかないと。他の競技の人も含めて、オリンピックや世界のトップを目指している人がどんなモチベーションで取り組んでいるかっていうのを、もっと視野を広げて見てほしいと思う。次世代を担う子たちなんやし。たくさん練習してもタイムが伸びない学生なんかが、『早姫さんは練習量が少ないのになんで速いんですか?』って聞いてきたりするんですけど、『いや、それまず自分で考えや!』って(笑)。『ただ単に泳いでたって速くなれへんよ!』って」

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写真は本人提供

競技者としての意識向上だけでなく、さらには日本代表としての意識の向上も必要と感じているそうだ。

「それから私も含め、現日本代表の人間は、『これくらい頑張らなきゃ』『さすが日本代表やな』って、後輩たちからはもちろん、全く関係のない方々からもそう思ってもらえるような人間でいなきゃあかんと思う。発言、行動、一つひとつ、気を付けないと。私も日本代表ってホントは競泳で背負いたかったけど…、ただフィンスイミングで、人生の中で4年も5年も日本代表で活動できたっていうのは、絶対に今後の人生に役立つやろうし」

競技者としてはまだまだやっていくつもり。フィンスイミングを広めていく活動もしている。技術だけでなくて精神的なものも含めて、先輩というよりも教育者としての視点で教えていきたいようだ。彼女の教師ならではの思いが強く伝わってきた。フィンスイミング業界を引っ張っていく人として、みんなが彼女に期待していることだろう。

「遠回りして、遠回りして、速くなるよりは、近道を作ってあげられたほうが、って思いますので」

日本選手権は、5月の13日(土)14日(日)開催。そこでまたフィンスイミング日本代表の座が決まる。

>>フィンスイミングナビのブログ

ゆるすぽ編集部

ゆるすぽ編集部

“みんなでつくるスポーツニュース”をコンセプトにwebサイトを展開。(http://www.yurusupo.com/)ファン目線を大事にし、スポーツニュースで報道される以外のさまざまなスポーツネタをゆる~く紹介しています。「ボーダレス」にも記事を展開。

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