ワールドマスターズゲームズ(WMG)大会2日目、早くも日本人の金メダル第1号が誕生した。曽野政男(63)が、10キロマラソン60−65歳の部で優勝(総合では24位)。タイムは38分28秒で、2位とは約2分半もの差をつけた。
曽野は、国際大会では過去に世界マスターズ陸上への出場経験があるが、最高は銀メダルと悔しい思いをしてきた。今回は、これまで以上のトレーニングを重ね、体重55キロ、体脂肪率を3%台にまで絞って臨み、初出場のWMGで悲願の金メダルを獲得した。
かつて曽野は、自衛隊体育学校の特別体育学生だった。そこでスカウトされ、八千代工業株式会社の陸上競技部へ。実業団選手として活躍した。現役時代、27歳の時に出した10キロのベストタイムは28分28秒。この日の優勝タイムは、現役時代とわずか10分差。35年の月日が経っても衰えを知らないスピードは、トレーニングの賜物以外なにものでもない。
「世界と戦う自信をつけるには、何と言っても、トレーニング」と話す曽野だが、マスターズで勝つには「運も必要だ」という。「どんな選手が出てくるかは、当日にならなければわかりません。『トレーニング』と『運』の両方が揃って、初めて勝てるのがマスターズ。今回はその両方が揃いました」と笑顔を見せた。

曽野が手にした、悲願の金メダル。
唯一の心残りは、表彰式で国歌が流れなかったこと。
曽野は1964年、まだ当時小学生だった時に、東京オリンピックで円谷幸吉がマラソンで銅メダルを取ったのを見て以来、いつか自分が円谷の代わりに金メダルを取り、その場で国歌を聞きたいと願っていた。それから50年の月日が流れ、念願の金メダルはつかんだものの、WMGオークランド大会では、観客の歓声と拍手の中で表彰式が行われ、国歌が流れることはなかった。うれしい半面、惜しむ気持ちもあったという。
それゆえに曽野の目標はすでに、4年後に向かっている。2021年、第10回WMGの開催地は日本の関西。しかも陸上の10キロマラソンは、曽野の地元、滋賀県で行われることが決まっている。そこで再びトップでゴールテープを切り、今度こそ国歌が流れる中で金メダルを首にかけたいと、切望している。関西大会で優勝者の国歌が流れるかどうかは決まってないが、曽野の思いは強い。
「もちろん、ワールドマスターズは勝負だけの世界ではありません。フレンドリーでとてもいい大会。日本から持ってきた日の丸に、たった一日で170〜180人もの海外の人にサインとメッセージ、連絡先を書いてもらいました。これからもたくさんの人との友好を深めながら、競技を楽しみたいです」
曽野の世界への挑戦、世界との交流はまだまだ続く。
参考:「ワールドマスターズゲームズ(WMG)」とは
国際マスターズゲームズ協会(IMGA)が主宰する、生涯スポーツにおける世界最高峰の国際総合競技大会。オリンピック・パラリンピック同様、4年に一回開催されており、原則30歳以上のスポーツ愛好者であれば、誰もが参加できる。第一回大会はロサンゼルスオリンピックの翌年、1985年にカナダのトロントで行われた。
第9回大会となる2017年は、ニュージーランド・オークランドで開催中(4月21日から30日まで)。オークランド大会では、28競技45種目が行われる予定で、およそ100カ国から約2万6千人が参加する。
2021年の第10回大会は、アジア初となる関西で開かれる。
(文・写真/伊澤佑美)
※当記事は、「ワールドマスターズゲームズ2021 関西」との提携コンテンツです。