TOPへ
April 23 2017 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

武井壮、初挑戦のスカッシュで元世界女王と対戦 ~ワールドマスターズゲームズ2017~

ワールドマスターズゲームズ2017 武井壮

ワールドマスターズゲームズ(WMG)大会2日目、スカッシュの会場に登場したのは、「百獣の王」ことタレントの武井壮(たけい・そう)だ。相手は、世界選手権で5度の優勝を誇る、元世界女王のSarah Fitz-Gerald(オーストラリア)。2003年に現役を引退、現在は世界スカッシュ連盟のアンバサダーを務めるほど、スカッシュ界にとっては大きな存在だ。その彼女に、スカッシュは初めてという武井が挑んだ。

元世界女王から3連続ポイントで観客を魅了

「みんなが楽しんでいるのを見て、ウズウズしてきました」

試合前、他のゲームを見学していた武井に感想を求めると、そう言って、気合い十分の笑顔を見せた。

「元世界チャンピオンに胸を借りるつもりで、1ポイントでも多く取れるように、頑張りたいと思います!」

実は、武井はこれまで一度もスカッシュをした経験がない。そこで大会前に、プロのスカッシュプレーヤー松井千夏(まつい・ちなつ)に指導を仰いだ。とはいえ、指導は一度だけで、「なんとか基礎をマスターした程度」だったという。もちろん、ゲームは今回が初めてで、エキシビションとはいえ、元世界女王とのゲームはどんな展開となるのか、全く予想がつかなかった。

スタンドで大勢のスカッシュファンが見つめる中、ゲームがスタート。武井は「Come on!」と大きな声で叫び、元世界女王との戦いに気合いを入れた。実際、とても一度の練習経験だけとは思えないほど、武井はラケットの扱いがうまく、前後左右への細かい動きにも、しっかりと対応していた。

ワールドマスターズゲームズ2017 武井壮

元世界女王を相手に善戦する武井。

しかし四面の壁を使って、複雑にバウンドする球をとらえるのは難しく、世界女王の前に、武井は苦戦を強いられた。武井が一度もポイントを奪えないまま、Fitz-Geraldが6連続ポイントで大きくリードした。

しかし、さすがは「百獣の王」。そこから、3連続でポイントを奪い返した。ポイントが決まるたびに、弾ける笑顔でガッツポーズをする武井の姿に、スタンドからは歓声とともに大きな拍手が沸き起こった。これで武井が勢いづくかと思われたが、やはり元世界女王は甘くなかった。一気に5連続ポイントを奪い、Fitz-Geraldが11-3で1ゲーム目を取った。

ワールドマスターズゲームズ2017 武井壮

さすがの貫禄を見せるSarah Fitz-Gerald。

休憩中、武井は「Sarah、めっちゃうまいわ」と感嘆の声を漏らした。しかし、その表情は明るく、思い切りスカッシュを楽しんでいる様子が見て取れた。

また、さすがアスリートらしく、「自分の失点はミスがほとんど。でも、ミスさえなくせば、チャンスはあるはず。思い通りのところに打っているのは決まっているんだから、諦めちゃダメだ」と、次のゲームへと気持ちを切り替えていた。

関西大会は、日本人が世界への扉を開くチャンスの場

ところが、肩で大きく息をする武井と、表情にたっぷりの余裕を見せる元女王との間には、明らかに差があった。2ゲーム目はミスを連発し、ラブゲームで終わってしまった。

それでも武井のチャレンジ精神は萎えなかった。3ゲーム目になると、コツをつかみ始めたのだろう、0-1から1-1、1-4から4-4、さらに4-6から6-6と、武井は元世界女王に何度も食らいついた。6-10と相手のマッチポイントを迎えても、武井は諦めずに1ポイントを取り返した。しかし、最後は気合いが強すぎたのか、ラケットが空を切り、ゲームセットとなった。

「いやぁ、やっぱり世界一の壁は一日だけのレッスンでは(届かないほど)はるかかなたにありました」

試合直後、武井はそう言って、「完敗」を認めた。

「世界王者の技術の壁にバゴーンと跳ね返されました! でもスカッシュ人生初戦で世界王者から何ポイントか取れたことは素晴らしい思い出になりました! ありがとうございました!」と楽しそうに語った武井は、すぐに「今後練習をして、リベンジします!」と再戦を宣言。すると、Fitz-Geraldも「OK!」と笑顔で答え、2人は固い握手を交わした。

ワールドマスターズゲームズ2017 武井壮

試合を終え、健闘を称え合う二人。この模様は、5月17日(水)よる11時58分から、MBS毎日放送「戦え!スポーツ内閣」にて放送予定。

試合後、改めてインタビューをすると、武井はこう語ってくれた。

「どこにどんな球を打っても、簡単に返ってきてしまうので、だいぶ追い込まれましたが、それでもすごく楽しませてもらいました。本当にいい汗をかきましたね。最近は、ジュニアの育成が強化されて、スポーツのすそ野が広がっていますが、本来ならそのジュニアに夢を与えるはずの大人たち自身が夢を持つことができていないことをすごく感じるんです。ワールドマスターズのように、大人になっても夢を持ってメダルを目指す場があれば、その大人を見て子どもは夢を抱けるはず。そんないいサイクルができるように、僕自身、これからも一つずつ夢をかなえていきたい。世界中の大人たちに『さぁ、戦おうぜ!』とメッセージを送りたいですね」

4年後の2021年にはアジアでは初めてとなるWMGが関西で開催される。「関西は僕が陸上競技を始めた場所で、日本一になるための準備をさせてもらった思い出深い街」と、武井にとっても思い入れは強い。「関西というすてきな街で、文化や食べ物を楽しみつつ、大好きなスポーツで汗を流して、すてきな時間を過ごしてもらいたい」と語る。

だが、WMGの存在は、日本ではあまり知られていないのが現状だろう。そんな中、実際に経験した武井だからこそ伝えたい思いがある。

「ワールドマスターズは、地球上で、同じ時代に生きて、同じ目標をもった仲間たちが集まって勝負することができる、貴重なチャンスの場。そして、一瞬で、国境や言葉の壁を乗り越えて、すぐに友情を育むことができる大会だと思います。次の関西大会は、日本人が国内にいながら世界に飛び立たせてくれるものとなるはず。ぜひ、参加して、世界への扉を開いてほしいと思います」

スポーツに国境や言葉の壁はない。と同時に、スポーツに年齢の壁はない。WMGはまさに「No Sports, No Life」を体現した大会だ。

ワールドマスターズゲームズ2017 武井壮

「No Sports, No Life」。WMGでの出会いにより、感動、絆、再挑戦への誓いがここにあった。

 

参考:「ワールドマスターズゲームズ(WMG)」とは

国際マスターズゲームズ協会(IMGA)が主宰する、生涯スポーツにおける世界最高峰の国際総合競技大会。オリンピック・パラリンピック同様、4年に一回開催されており、原則30歳以上のスポーツ愛好者であれば、誰もが参加できる。第一回大会はロサンゼルスオリンピックの翌年、1985年にカナダのトロントで行われた。

第9回大会となる2017年は、ニュージーランド・オークランドで開催中(4月21日から30日まで)。オークランド大会では、28競技45種目が行われる予定で、およそ100カ国から約2万6千人が参加する。

2021年の第10回大会は、アジア初となる関西で開かれる。

(文/斎藤寿子、写真/James Yang)

※当記事は、「ワールドマスターズゲームズ2021 関西」との提携コンテンツです。

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitterをフォローしよう!

前の記事へ
一覧に戻る
次の記事へ
前の記事へ
一覧に戻る
次の記事へ