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August 17 2017 By 小林 香織

踊るんじゃなくて“踊らせる”。僕らがあえて裏方を選んだワケー振付稼業air:man(前編)

エアーマン

表舞台に立つことなく、裏方としてパフォーマーを支える。それが振付師の仕事だ。

13年間の長きにわたり、そんな振付師の道を歩んできた「振付稼業air:man(ふりつけかぎょうエアーマン)」。彼らは、NEWSや関ジャニ∞、サカナクションといったトップアーティストからCM、舞台等の振り付けまで年間1,000本もの振り付けを担当する。きっと誰もが、間接的に振付稼業air:manの仕事を目にしたことがあるはずだ。

革ジャンとハットがトレードマークの彼らは、業界では異色の振付師ユニットとして2004年に結成。2007年には担当したWEB CM「UNIQLOCK」がカンヌ国際広告祭でグランプリを受賞するなど、各方面から注目を浴びる。

そんな振付稼業air:manの立ち上げメンバーであり、脇目も振らず裏方に徹し抜いてきた杉谷一隆と菊口真由美に、「なぜあえて裏方を選んだのか」とストレートな疑問をぶつけてみた。

10代〜40代まで在籍!ユニットならではの独自ワークスタイル

エアーマン

杉谷と菊口を筆頭に、現在、7人体制で活動を展開している振付稼業air:man。最年少メンバーは高校生で、学業以外の時間で活動しているという。

振付師の世界では類を見ない、ユニットスタイルを確立する彼らの一番の武器は「稼働力」。最大で同時に3つの現場を回せるため、案件が集中してもこなすことができる。さらに、振り付けをつくる際のワークスタイルも独特だ。

「必ずメンバー全員が集まって、ディスカッションしながら振りをつくります。10代から40代まで在籍しているので、幅広い意見が飛び交っておもしろいですよ。僕が『この振りかわいいよね』って言ったら、10代の子に『全然かわいくない』とダメ出しされることも(笑)」(杉谷)

彼らは必ず、オファーされた振り付けに対して複数パターンを提出する。世代の異なる複数人のメンバーがいるからこそ、こういった柔軟な対応が可能なのだろう。そして、振り付けをつくる際に欠かせないプロセスが「動きの言語化」だ。

「つくった振り付けをアーティストやタレントさんにお伝えする際、動きを言語化すると伝わりやすいんです。たとえば『プリップリ』みたいな表現を使うこともあれば、『聖子ちゃんステップ』のように代名詞を使うこともありますね。相手に合わせて、一番伝わりやすい表現を取り入れるようにしています」(菊口)

「表舞台に立つ相手に対して、僕らが一番大事にしているのが『ダンスに興味を持ってもらう、好きになってもらうこと』です。踊ることを恥ずかしいと思う人が圧倒的に多いなかで、いかに興味を持って、楽しく踊ってもらえるか、この点をいつも心にとどめています」(杉谷)

裏方の最大のやりがいは、パーツとしての役割をまっとうした瞬間

エアーマン

事務所には、これまで受賞した数々のトロフィーが並ぶ

ダンスを習得した先にあるのは、表舞台に立つ「ダンサー」の道。それが一般的だと思われている世界で、杉谷と菊口をはじめ、振付稼業air:manのメンバーはあえて、裏方の道を選んだ。裏方だからこそ感じられるやりがいを杉谷はこう語る。

「一つの作品をつくるにあたり、必要な一素材としての役割をこなすことが、まず一つのやりがいです。たとえば舞台の振り付けであれば、物語、音響、照明、舞台監督のように素材がいくつもあり、振り付けも当然その一つ。それぞれの役割を持った人たちが作品に向かって等間隔で歩んでいくことで、最高の空間に仕上がるのだと思います。パーツとしての役割をまっとうし、カチッとハマった瞬間は最高にやりがいを感じる瞬間です」(杉谷)

▲世界三大広告賞The One Showのシルバーペンシル、およびカンヌライオンズ・フィルム部門でブロンズライオンを受賞した名刺アプリEightのプロモーション動画「Eight: Business Cards」

作品をつくる段階では、監督のOKをもらうことがゴール。だが、一定の年月が経過して現れる“副産物のような結果”もまた、振付師の楽しみだという。

「2010年以降、数年にわたり新垣結衣さんが出演するアサヒ飲料の『十六茶』のCMを担当した際、CMを放映したあとに初年度は111%、2年目は112%と商品の売り上げが伸びたんです(いずれも前年比)。新垣さんが音楽に合わせて軽快にダンスを踊るCMだったのですが、きっと振り付けが素材の一つとしてぴったりハマり世の中に浸透したことが、売り上げアップにつながった一つの要因だろうと思います。時間が経ってから見えてくるこんな副産物も、振付師の楽しみですね」(杉谷)

表舞台に立つ人は“踊る人”。対して、裏方に徹する振付師は“踊らせる人”。杉谷と菊口には、そんな裏方としての誇りがある。その誇りは彼らの独創的ないでたちにも表れている。あえて動きづらい革ジャンをトレードマークにすることで、自分たちは「踊る人ではなく、振り付けをして踊らせる人」だと案に主張しているのだ。

考え抜かれたセルフブランディングは、今ではなくてはならない振付稼業air:manのスタイルとして定着した。ちなみに杉谷が20年近く髪の毛を切らない理由は、「役者をしていた20代前半のとき、角刈りにしたらあまりにも似合わず、もう一生髪の毛を切らないと決めたから」だそうだ。

ダンスは「踊る道徳」。教育業界に新しい風を送る

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結成以来、CMや舞台など華やかな現場を舞台としてきた振付稼業air:manだったが、ダンスが中学校で必修化された2012年以降は、教育業界とも関わりを結んでいる。そのキッカケをつくったのは、頑なに拒んできたドキュメンタリー番組「情熱大陸」への出演だった。

「僕らはセルフプロデュースとしてテレビ出演を極力避けていて、『情熱大陸』のオファーも何度か断っていました。でもダンスの必修化を受けて、教育業界にトライするために出演を決めました。タレントじゃなくて振付師だと頑なに言い張っている僕らだからこそ、貢献できることがあると思ったんですよね。番組内で学校の先生たちとの対談シーンを入れてもらうことを条件にオファーを受け、それが功を奏して、学校教育との深いつながりが生まれました」(杉谷)

2012年9月に番組がオンエアされた直後、さっそくダンスの教科書の依頼が舞い込んだ。まさに、杉谷が願っていた通りの展開が生まれたのだ。そうして2年もの月日をかけて丁寧につくり上げたのが、「振付稼業air:manの踊る教科書」。

エアーマン

同書籍では「校歌に振りを付けて“自校ダンス”を楽しもう」という提案がされている。校歌をダンスミュージックにアレンジし、振りを付けるのだ。

「先生と生徒が一緒に踊るにあたり、等間隔で歩み寄れる素材を選ぶこと。それが僕らが考える教育の一つの価値観です。そこに、校歌がぴったりハマったんですよね。情熱大陸の出演以来、いくつかの学校から『校歌に振りを付けてほしい』という依頼をいただき、実現してきました。学校教育は今後も注力していきたい分野です」(杉谷)

「ダンスは子供たちのコミュニケーションツールとしても最適なんです。一緒にダンスを踊ることで、普段は超えられないグループ間の壁を簡単に超えられる。たとえば、ダンスが苦手な子に対して得意な子が自ら教えてあげたり、放課後に自主的に集まってみんなでダンスを練習したり、いつもの友達の枠を超えたコミュニケーションが発生しています。私たちが願っていたことが現実に起きていて、すごくうれしいですね」(菊口)

ダンスを語り出したら止まらない。杉谷と菊口にとって、ダンスは人生そのもの。だが彼らは、決して自らが踊る姿を売り物にはしない。「表舞台に立つ人を踊らせること」、それが振付師としての使命だと心得ているからだ。

 

後編につづく。

 

振付稼業air:man:http://www.furitsukekagyou-airman.com/index.html

 

(取材・文:小林 香織)

小林 香織

小林 香織 Facebook

2014年デビューのフリーライター。現在、「恋する旅ライターかおり」名義で、恋愛・旅・ライフスタイルジャンルの執筆にも挑戦中。人生の豊かさ、可能性を広げるためのメッセージを発信したいと願っている。自由な人生バンザイ

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