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October 29 2015 By 石狩ジュンコ

60代こそ強い! ユネスコの無形文化遺産にも登録されたブラジルの文化「カポエイラ」って?

2008年はブラジルの無形文化遺産に指定され、そして昨年11月にはユネスコの無形文化遺産に登録された「カポエイラ」は、ブラジルの奴隷たちによって生み出された。腰を落とした独特のステップと、蹴りやジャンプなど大きな動きが特徴的なカポエイラだが、格闘技や競技スポーツ、ダンスとジャンル分けができず、スポーツ、音楽、ダンス、文化などの要素で複合的に構成されたブラジルの文化である。

カポエイラの源流についてはいまだ不明な点が多く統一された動きやルールがなかったため、1900年代に入り2つの流派が一般的に知られるスタイルとして確立された。宗教観や文化観を削りつつアクロバティックで格闘技的な「ヘジォナウ」(メストリ・ビンバが創始)、宗教観や文化観を再習得しつつゆったりとした儀式的な「アンゴーラ」(メストリ・パスチーニャが創始)の2つである。そのためグループによって、上記どちらかもしくは区別なく両方とも取り入れるなど、やり方もさまざまあるのが現状だ。

今回は、都内を中心に活動するカポエイラを学び楽しむ非営利団体「カポエイラ ナラハリ東京」で指導されている、間庭史貴さんにお話を伺った。

間庭史貴

カポエイラ ナラハリ東京 間庭史貴

――間庭さんがカポエイラに出会ったきっかけを教えてください。

間庭史貴さん(以下、間庭):高校生の時、地元の山梨県のテレビで紹介されていたのを見たのがきっかけです。中学校から空手をやっていたのですが、カポエイラがすごく格好いいなと思って高校生で始めました。

――カポエイラ ナラハリ東京をつくられたのは?

間庭:それまでは私の師匠の下部組織として活動していたのですが、団体として独立したのは4年前です。高校卒業後、大学ではカポエイラのサークルをつくってそこですでに指導をしていました。もちろん、みんなカポエイラをやったことはない人たちばかりでしたので、当時は探り探りでやっていました。

――生徒さんの中で帯をつけている人もいますね。

間庭:グループによって異なりますが、うちでは1年か2年に1度、昇段試験があって帯の色でランクが決まります。私のメストレ(師匠)はブラジル人でサンフランシスコに住んでいるんですが、彼が日本に来て動きをチェックするんです。私も彼からすると生徒なのですが、私の場合はサンフランシスコに行かないと師匠に見てもらえないレベルになっているので、マスターのところに行って何週間か練習して、日本で試験をやってそこでOKをもらうかたちです。ちなみにそれぞれのグループにはそれぞれメストレがいて、中には日本人の方も数人います。

――昇段試験ではどのようなことをするのでしょう。

間庭:数十種類の決まった動き、楽器と音楽の演奏の試験などの総合点で決まります。うちのレベルは11段階しかないんですが、グループによっては30段階くらいあるところもありますね。私は11段階中4つ目なのでまだまだなんです。

―― 一番上がメストレですか。

間庭:8つ目からがメストレです。メストレになってからも、その上にレベルアップしていくためには年月が必要になってきます。メストレから次のメストレになるまでは期間も決まっていて、だいたい15年~20年はかかります。ですので、レベルが高いメストレになれる頃には、必然的に60歳から70歳になりますね。

――そうなんですか! 若いよりも熟練した方が有利なんでしょうか。

間庭:カポエイラでいうと、年齢が上の方はとても強いんですよ。私のメストレも50代なんですが、太刀打ちできたことは一度もありません。カポエイラは極め技や投げ技などの接触プレイもありますが単純な力と力の戦いではなく、頭の良さが大切になってきます。お互いを尊重し合い、絶妙な間合いを取り、技を繰り出し合う。なので、女性だから、体が小さいから、年齢がいっているからなどの理由で不利なことがありません。そういう点はとても面白いですね。私も自分の中ではまだまだカポエイラのピークではないので、これからのレベルの向上が楽しみなんです。

指導の様子

カポエイラ ナラハリ東京

指導の様子

――間庭さんのグループでは、生徒さんたちにアベリードといわれるあだ名をつけているそうですが。

間庭:グループごとでつけたりつけなかったりするのですが、うちでは私がカポエイラのスタイルやその人の人間性によって、ブラジル語のアベリードを全員につけています。あだ名をつけられるというのは団結力も高まりますし、やっぱり嬉しいのかなと思います。

ちなみにアベリードができた理由は諸説あります。奴隷制の時代、結束力が強まることで反乱を起こしやすくなってしまうという理由で、ブラジルでカポエイラが規制されていた時期があります。その時に、あだ名で呼ぶことで本名がバレないようにしていたという説や管理する側の看守たちが奴隷1人1人の名前を覚えるのが面倒だったために、彼らの身体的特徴から取ったあだ名をつけていたという説など、その他にも諸説あるようです。

――そうした歴史についても教えているのでしょうか。

間庭:そうですね。動きながらもビリンバウやパンディロといった楽器を使ったり、動きの名前の由来や歴史を教えたりなどしています。カポエイラは動きだけでなく、楽器、歌、文化などのファクターがすべて必要になってきます。楽器そのものもカポエイラだし、文化もカポエイラです。ですので格闘技やスポーツという単純な考え方でもないし、わかりやすい勝ち負けがあるわけでもない。うちではそうしたことを学びながらカポエイラを楽しんでいますが、歴史や考え方もそれぞれ相違があるのでグループによってやり方も様々だと思います。

カポエイラ ナラハリ東京

――日本ではカポエイラを楽しむ人は増えてきているのでしょうか。

間庭:他の国に比べればまだまだ少ないですが、最近はすごく増えてきていると思います。他の道府県にはそれぞれ1つあるかないかくらいですが、東京では30団体ほどが活動しています。うちの団体は20代~30代が多いですが、一番上は60代もいます。もともと文化部だったという方や女性も多いので、カポエイラは運動神経や体力などによらず誰でも楽しめるものだと感じますね。

来年、ブラジルで行われるリオオリンピックの新種目にカポエイラを入れることが検討されていたそうです。勝ち負けを決める他の競技スポーツと概念が違うということで見送られましたが、昨年ユネスコの無形文化遺産に登録されましたし、今後は世界的にもカポエイラの注目度はどんどん高まっていくと思います。

■参考リンク

・ナラハリ東京 http://www.capoeira-n.com/

 

(石狩ジュンコ)

石狩ジュンコ

石狩ジュンコ Twitter Blog

フリーライター。89年、山形県生まれ。 女性の生き方、社会問題、カルチャー、インタビュー、翻訳などを執筆中。 好きなものはラジオ、仏教、「スターウォーズ」、「ミナミの帝王」、純喫茶、ブティック。 スポーツ歴は小学校でバスケ、中学校で陸上(中長距離、走り幅跳び)、高校で女子サッカー。

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