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October 30 2015 By 向 風見也

ラグビーワールドカップ開催地のイングランドで、次回開催の日本をアピール

ラグビーワールドカップのイングランド大会は、いよいよ大詰めを迎える。10月30日にはロンドンはオリンピックパークで3位決定戦が、続く31日には同トゥイッケナムスタジアムで決勝戦がそれぞれおこなわれる。4年に1度の楕円球の祭典が次に開かれるのは、2019年。場所は日本である。

試合当日の会場の近くでは必ず「チケットは余ってないか!?」と叫ぶファンがいて、ウェンブリースタジアムもミルトンキーンズ・スタジアムmkでもカーディフ・ミレニアムスタジアムでも、歓声や応援歌でスタンドが揺れた。各地に設置された「ファンゾーン」も盛況。なかばトランス状態の舞台装置にあって、選手は、正当な技術を発動した。ラグビー発祥の地であるイングランドは、ラグビーワールドカップの魅力を再提示した。

「誇りを持って、運営をしています。また、比較的にラグビーが盛んではない都市でも試合を開催し、イングランド国内におけるラグビーを広める動きに繋げようとしています。我々もそういった会場はある。グラスツール(草の根)の普及活動などを通し、ワールドカップ以後も含めたラグビー普及の契機を作れたら」

現地の様子をこう見るのは、次回大会の組織委員会でマーケティング部長を務める宮田庄悟さんだ。確かに日本大会でも、大阪や福岡などのラグビーどころでもゲームがあり、合計12会場が発熱地帯と化す。世界中からラグビーファンが集まる2019年の秋に向け、「ぶっつけ本番にならないように、大会中に起こりうる色々なことを想定。事前エクササイズなどの準備をしています」と話す。

実はイングランド大会では9月18日、開幕戦後に会場周辺が混乱。最寄りのトゥイッケナム駅が封鎖され、多くの観客や報道関係者らの足に影響が出た。「そのあたりのことは、あまり心配はしていないんです。日本は、よりしっかりしているだろうな」と捉える宮田さんだが、「会場内だけではなく、会場外のことも準備しないといけない。組織委員会だけではなく、日本政府、警察などと協力していく必要はある」とも続けた。

そして、いまは…。

「ラグビーワールドカップがある日本のことを知ってもらおう、好きになってもらおう、というコミュニケーションをしていきたい」

地下鉄のウェストミンスター駅前、天高くそびえ立つビッグベンのほど近くで「ジャパンパビリオン」を開催中だ(10月9~31日)。

会場に足を踏み入れれば、開催12都市の紹介パネルが並ぶ。付随した映像も流れる。各地へのアクセスが一目瞭然の大型地図は、足元に広がっている。

開催地マップ

ラムネや日本酒の試飲コーナーや、20年の東京オリンピックをプロモートする区域もある。折り紙、書道、着物、ガチャガチャといった各種ワークショップのスペースでは、来客の滞留率が高いようだ。

ガチャコーナー

「ラグビーワールドカップをすることで、海外の人たちとコミュニケーションを取ることになります。大げさに言えば、各自治体が国際化をさせる機会にもつながる。ファンの方、メディアの方が日本の隅々まで観てもらいたい。そのために、このパビリオンを通して日本を知ってもらいたいです」

日本代表の歴史を紹介するコーナーには、第1回大会からの写真がパネル化されている。もちろん、今大会のあの瞬間も隊列に並ぶ。

歴史パネル

9月19日、ブライトンコミュニティースタジアム。過去2回優勝の南アフリカ代表を相手に、大会24年ぶりの勝利を挙げた。その後も予選プールBで白星を重ね、「プール戦で3勝以上を挙げて決勝トーナメントを逃した史上初めてのチーム」というインパクトを残したのだ。次回大会への準備に際し、今度の衝撃的史実は追い風になったと宮田さんは言う。

「我々は、参加する全チームを公平に見て、いい大会を運営する立場です。ただ今回のことで、統括するワールドラグビーからも、もっと日本代表を全面に押し出すプロモーションをしてみては、と言われます。2011年のニュージーランド大会の前には、オールブラックス(世界最強と謳われる同国代表の愛称)を軸に据えた活動を止めたこともあったのですが…。それだけ、ジャパンのしたことは世界にとって意味があった。選手のしてきたことは、無駄にはしたくないですね」

日本国内では空前のラグビーブーム。五郎丸歩選手が出場するゲームを中心に、国内最高峰であるトップリーグの試合チケットはどんどん売れている。少なくとも、21世紀に入ってからは初めての事態と言ってもいい。このブームを文化に昇華させられれば、ラグビーのワールドカップのホスト国としての格は上がるだろう。宮田さんはこう締めた。

「2つの観点でのコミュニケーションが必要だと思っていました。ひとつは、ラグビーという競技そのものを知ってもらうこと。もうひとつは、地域活性にも繋がるという観点からラグビーワールドカップのブランドを高めること。今回、日本代表の結果で状況が変わったところもある。ただ、いままでのブームの例からも熱しやすく冷めやすい部分もあるかもしれない。まずひと段落したら、今大会のことを評価します。これから何をしないといけないのかを考えていきます」

10月31日の決勝戦は「ファンゾーンのテレビで観ます」。翌日以降は現地で会議を重ね、11月4日に帰国予定だという。

《関連リンク: ジャパンパビリオン公式Facebookページ 》

向 風見也

向 風見也 Facebook Twitter Blog

1982年富山県生まれ。2006年に独立し、ラグビーライターとして「ラグビーマガジン」「ラグビーリパリパブリック」「スポーツナビ」などの雑誌やwebサイトで寄稿。書籍の執筆や構成、イベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。共著複数。

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