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August 10 2018 By TheBORDERLESS

夏場の水分補給「いつ」「何を」「どれくらい」

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夏場の運動時はより慎重な水分補給を

運動中の発汗は筋活動や環境条件によって発生した体熱の蒸散を助けて、体温を適切に保つ役目がある 1)。しかし、多量の発汗によって体水分が少なくなると、血漿量が減少して心血管への負担をかけたり、代謝や中枢神経系の機能変化をひき起こしたりして体温の異常上昇を招く。さらには生命を脅かすほどの熱中症のリスクを増加させる 1-3)

これらの理由により、スポーツを楽しむ人は発汗による体水分の損失を適切に補う必要がある。夏場は水分損失量がさらに増加するため、より一層の注意が必要である。「いつ」「何を」「どれくらい飲むか」を理解し、適切な水分補給を実践したい。

運動前後の体重測定を習慣づける

適切な水分補給の実践のため、運動前後に必ず体重を測定するようにしたい。体重1kgの減少は約1ℓの発汗量を示すため、体重差によってどれくらい体水分を失ったか(発汗量)を把握することができるからである 4)

例えば、運動前の体重が50㎏だった人が、90分の運動中に500mlのドリンクを2本(計1ℓ)飲んで、運動後に49.5kgだったとする。この場合発汗量は(50kg-49.5kg)+1ℓ= 1.5ℓとなる(代謝水を含む)。運動習慣のある人は、このように発汗量を把握しておけば、日頃どのくらい飲めばよいかが予測できるので、ぜひ実践したい。

運動前の水分補給にスポーツドリンク

水分を補給しても実際に吸収されるまでに多少の時間がかかるため、運動開始の時点で適切な体水分状態とするためには、運動前の水分補給が不可欠である。それを達成するためには、運動の2~4時間前に体重1kgあたり5~10mlに相当する水分を補給することが望ましい 1,5)

すなわち、体重50kgの人であれば、運動の2時間前までに250~500mlのドリンクを飲んでおく必要がある。この時、同時に摂取したナトリウムが体内への水分貯留を助ける役割を持つため、スポーツドリンクが望ましい。

運動中は「小まめに、早めに」

運動中の発汗量は1時間あたり0.3~2.4ℓと報告されているが 1,3,6,7)、運動強度や持続時間、体力、暑熱馴化(暑さにどの程度体が慣れているか)、標高、気温、湿度などの条件の違いによって幅がある。そのため、普段から運動前後の体重差の確認を習慣づけ、自身の発汗量を把握してそれを運動中に小まめに補うようにしたい。

しかしながら、運動前後の体重測定ができる状態にないなど、自身の普段の発汗量を把握できない場合も多いだろう。その場合は1時間あたり400~800mlの水分補給プランを考えるとよい 1)。理想的には、運動後の体重が運動前比で-2%以内に収まるように水分補給したい。

なぜなら、体重の2%を超える水分損失は認知機能や有酸素性パフォーマンスを低下させることが報告されているためである 1,2,5,8)。したがって、体重50kgの人の場合は運動後に49㎏未満となっていないようドリンクを飲むようにしたい。

水分補給のペースは「小まめに、早めに」が基本である。2006年に日本体育協会(現日本スポーツ協会)が公表したスポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 9)では、「気温の高い時には15~20分ごとに飲水休憩を」、「1回200~250mlを1時間に2~4回に分けて」と推奨されている。しかしながら、2013年に公表された改訂版4)ではそれらの文言はなく、代わって「のどの渇きに応じた自由な飲水」を勧めている。

一方で「自由飲水」は「予測された発汗量の計画飲水」よりも体温上昇を抑えられないとする研究報告もあるほか 10)、年配者は年齢とともにのどの渇きを感じにくくなるため自由飲水が必ずしも適切とも言い切れない。

大切なことは発汗量の予測から得られた1時間あたりの給水量を確実に摂ることである。それを確実なものとするのは計画飲水であろう。仮に1時間に800mlの飲水が必要と予測された場合、過去の知見にもとづけば「200mlを15分おきに計4回」が概ね妥当な計画飲水ではないかと考えられる。まずは実施してみて、運動後の体重が2%以上減っていないか確認し、個人に合うようカスタマイズするのがよい。

運動後の水分補給の注意点

運動後は必ず体重を測定し、発汗量を確認する。運動前より体重が低下していた場合、その分をゆるやかに補うようにする。アスリートの場合は体重のマイナス分の125~150%の水分を補う必要がある(0.5kgの体重減少なら625~750mlの水分補給が必要)とされる報告があるが 1, 3)、レクリエーションレベルのスポーツ愛好家はこの限りではない。

特に注意したいのは運動後の過度のアルコール摂取である。アルコールは利尿作用があり、体水分の回復を阻害するためである。カフェインにも利尿作用があるが適度な摂取(180mg未満)なら問題ないとされている 1)

飲料別カフェインの含有量

飲料別カフェインの含有量

a) 宮川弘之ら : 東京都健康安全研究センター研究年報, (66), 133-145 (2015)
b) 守安貴子ら : 食衛誌, 37, 59-63 (1996)
c) 科学技術庁資源調査会 : 五訂日本食品標準成分表, 284-286 (2000)
<参考文献>宮川弘之ら : 市販飲料中のカフェイン含有量とその摂取量-乳幼児の茶飲料摂取を中心にして- 東京健安研セ年報 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. Pub. Health, 66, 133-145 (2015)

発汗が多いときはナトリウム

汗には水以外にナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質が含まれる 1)。そのため大量に汗をかいたとき真水だけで水分補給してしまうと、電解質不均衡が生じ筋けいれんを起こす可能性がある。また、体水分は一定のナトリウム濃度をもって貯留されるため、真水を大量に飲んでも水分が体に留まりにくく体水分を回復できない。

発汗

そのため発汗量が多い場合のドリンクは適度なナトリウム(塩分)を含むものが望ましい。理想としては0.1~0.2%の食塩(ドリンク100mlあたりナトリウム40~80mg)を含むものがよい 4)。また、4~8%の糖質(ドリンク100mlあたり糖質4~8g)を含むドリンクを運動中に摂取すると血中グルコース(血糖)レベルと運動パフォーマンスの維持に有益であり 1)、水分の吸収を阻害しないことも明らかとなっている 11)

市販のスポーツドリンクは塩分と糖分を適度に含んでいるものが多いため、それぞれの含有量を確認した上で利用するとよい。その際、ドリンクは5~15℃に冷やした方が飲みやすい。なお、気温、湿度、運動量、運動強度が低い場合や、発汗量が少ない場合は必ずしもスポーツドリンクでなくてもよい。

市販飲料の成分比較

市販飲料の成分比較

尿で体水分状態のチェックを

運動後は自分の尿をチェックしたい。色が濃く、尿量が少ない場合は体水分の回復が十分ではないことを示している。運動中の水分の補給量を見直すとともに、運動後に十分に水分補補給したい。

なお、環境省、日本スポーツ協会はそれぞれ熱中症予防に関するサイトを公表している。夏場の健康を維持するためにぜひ参照されたい。

日本スポーツ協会HP「熱中症を防ごう」
http://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html
環境省HP「熱中症予防情報サイト」
http://www.wbgt.env.go.jp/

<参考文献>
1) 104.American College of Sports M, Sawka MN, Burke LM, et al.: American College of Sports Medicine position  stand.  Exercise  and fluid replacement., Medicine and Science in Sports and Ex- ercise., 39(2), 377–390 (2007)
2) 105.Shirreffs SM, Sawka MN.: Fluid and electrolyte needs for train- ing, competition, and recovery., Journal of Sports Sciences., 29, 39–46 (2011)
3) 106.Kenefick RW, Cheuvront SN.: Hydration for recreational sport and physical activity., Nutrition Reviews., 70, 137–142 (2012)
4) 川原貴ら : スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第4版, 公益財団法人日本体育協会, (2013)
5) 108.Goulet ED.: Dehydration and endurance performance in compet- itive athletes., Nutrition Reviews., 70, 132–136 (2012)
6) 111.Mountjoy M, Alonso JM, Bergeron MF, et al.: Hyperthermic-related challenges in aquatics, athletics, football, tennis and triath- lon., British Journal of Sports Medicine., 46(11), 800–804 (2012)
7) 112.Koehle MS, Cheng I, Sporer B.: Canadian Academy of Sport and Exercise Medicine  position statement:  athletes at high  altitude. Clinical Journal of Sport Medicine: Official Journal of the Canadian Academy of Sport Medicine.,  24(2), 120–127 (2014)
8) 109.Jeukendrup A, Carter J, Maughan RJ.: Competition fluid and fuel. In: Burke L, Deakin V, eds. Clinical Sports Nutrition. 5th ed. North Ryde NSW, Australia: McGraw-Hill Australia Pty Ltd., 377–419 (2015)
9) 川原貴ら : スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック 第3版, 公益財団法人日本体育協会, (2006年)
10) 青木純一郎 : スポーツと水分補給, 最新医学, 43, 2190-94 (1988)
11) Brouns F : Nutritional Needs of Athletes., John Wiley & Sons., p70 (1993)

 


<鈴木いづみ(すずき・いづみ)>
日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士
スポーツ健康科学修士
順天堂大学スポーツ健康科学部協力研究員

主なサポートチーム・選手に、アトランタ五輪女子バスケットボール日本代表、ジェフユナイテッド市原・千葉(トップチーム・アカデミーチーム)、実業団マラソン選手、社会人野球チーム、大学駅伝チーム、プロ競輪選手など。また、2012ロンドン五輪に向けては競泳(400m個人メドレー)銅メダリスト・萩野公介選手の栄養サポートを担当。

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