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September 03 2018 By 飯塚さき

ラグビー指導者はハードワーク。だからこそ健康維持に努める ~藤田雄一郎(東福岡高校ラグビー部監督)~

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トップレベルの選手たちを牽引する一流指導者たち。高みを目指すためには、自身の健康維持・増進も欠かすことはできない。スポーツ界における指導者たちは、どのようにして自身の体力を維持しているのだろうか。これまで幾度となく全国制覇を成し遂げているラグビー界の雄・東福岡高校ラグビー部監督・藤田雄一郎氏に、自身のトレーニングや食事管理、そして指導に対する熱い思いをうかがった。

選手に説得力をもたせるための健康維持

――東福岡高校ラグビー部の監督として、ご自身でもウェイト・トレーニングに取り組んでいるとうかがいました。まず、普段の生活についてお教えください。

藤田 毎朝4時に起き、5時から近くのジムに行きます。授業と練習が終わってからは完全にオールアウト(疲労)してしまうので、出勤前の早朝しかトレーニングする時間がないのです。

朝動くと気分がいいし、早い生徒たちは7時にはグラウンドに来るので、それよりも早く来ないと彼らに失礼だとも思っています。

普段は、「上半身の日」、「下半身の日」、「ストレッチを兼ねた有酸素運動の日に」分けて体を鍛えています。ウェイト(2日)→有酸素(1日)→ウェイト(2日)→有酸素(1日)→休み(1日)といった1週間のサイクルです。

上半身の日は、ベンチプレスで胸と肩を鍛え、下半身はスクワットが中心。有酸素運動の日は、1時間ほどランニングマシンで走ります。

――日々、そうしてストイックに取り組まれているのですね。

藤田 そんなにたいしたことはありません。ただ、運動を推奨し、健康でいることの大切さを説く体育教師が、不摂生で不健康では説得力がないでしょう。ある程度健康的で、体育の先生だとわかるような体形でいることは、体育教師の責任だと思っています。

体育教師は医者であり、易者であり、分析者であり、教育者であり、役者でなければなりません。この5つのうち、強いて言うなら一番大事なのは医者だと思っています。自分が健康でなければ、生徒もついてきません。

人は、見た目が大事です。顔がいい、いいものを着ているという意味ではなく、人としてきちんとしていること。内面からにじみ出るものは、外見に現れます。健康さや身だしなみ、その人のもつ雰囲気がしっかりしていないと、いくら着飾っても化けの皮が剝がれるものです。

亡くなった平尾誠二さん(元日本代表。代表監督などを歴任)が、「人はカッコいいか、そうでないかで判断しなさい」とおっしゃっていました。ほかのチームの選手から、「君のチームの監督、カッコいいね」と言われれば、生徒たちはモチベーションが上がります。

人としてカッコよくいることは、私にとって選手たちへの礼儀なのです。内面を磨くために日々徳を積まなくてはならないのと同じように、体形維持のためにはトレーニングが必要です。

――トレーニング以外で、健康のために気をつけていることはありますか?

藤田 一番はバランスのよい食事です。朝食はしっかり食べていて、米と卵、乳製品、野菜、そしてプロテインやビタミン剤といったサプリメントもとります。その代わり、昼はサンドイッチなどで軽めに抑えます。

夜は炭水化物をとらず、おかずのみです。野菜中心ですが、トレーニングをしているせいか、この歳になっても赤身の肉を欲することが多く、ブロック肉を塩・こしょうで焼いて食べることもよくあります。同級生に比べるとたくさん食べるほうで、肉だと300gくらいは食べられます。夜も、糖質をとらないだけで量は食べます。今でも本当に元気ですね。

自らにハードワークを課し、選手を鼓舞

――選手への指導として、体調管理やトレーニングに関してはどのように伝えていますか?

藤田 「基本生活(休養/睡眠)」と「栄養」をしっかり押さえておくことを強調しています。この2つができていれば、その上にくる「トレーニング」の割合は、少なくてよいのです。

昔はとにかく「米を食え」といわれていましたが、米は糖質なので、体を回復する要素などはあまりありません。やはり、バランスのよい食事が重要なのです。

また、かつては「1日休んだら取り戻すのに1週間かかる」ともいわれていましたが、私はそれもないと思っています。強くなるためにも、休養は必須です。

選手に対しては、「基本生活(休養/睡眠)」と「栄養」が基本だといつも言っています。基盤となる生活をきちんと充実させた上で、トレーニングは小さな枠の中でクオリティーの高い内容をこなします。

トレーニングに関しては、専門のS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチと私とで常にミーティングをし、意思疎通をしながらコーチに任せています。

全体練習に加え、選手個々によってフィジカルを強くするのか、スピードアップを図るのかといった、パーソナルの練習にも取り組んでもらっています。

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――選手たちは、ウェイト・トレーニングにも積極的ですか?

藤田 部内では、トレーニングをする文化ができました。昔は、指導者の目が届かないので「ウェイトの日=休みのようなもの」という認識でした。

しかし今では、日本代表選手や大学のトップレベルの選手たちでさえ、ウェイト・トレーニングに取り組まなければ戦えないことを、彼らは理解しています。温度差はあれ、トップを目指す子たちの熱は非常に高いといえます。

トレーニングに限らず、睡眠や栄養といった日々の生活と体のケアにも敏感です。寝具一つとっても、より質の高い睡眠をとるためにこだわっています。多少お金がかかってしまいますが、それも自分への投資です。

――高校生でもウェイト・トレーニングは重要なのですね。

藤田 体を作る一つの道具です。体は、一度“壊さなければ”増強することができません。壊したところに栄養を入れることで、二度と壊れないように体は大きくなっていきます。スポーツ界全体が進化していく昨今、ウェイトと競技は一緒にやっていかないといけないもの。

特に、大学や社会人、そしてプロへとその競技を続けていこうと思うのならば、ウェイト・トレーニングを疎かにしていると伸びません。目安として、ある程度の成長の目途が見えてくる高校2年生くらいから取り入れるようにしています。

――特にラグビーでは、フィジカルを強くすることや体を大きくすることが重要ですね。

藤田 高校ラグビーでは、フィジカルとベーシックスキルがあれば、全国は突破できます。高度な技術よりも先に、体のベースが重要なので、スキルトレーニングが大切である半面、基本的な部分を理解してトレーニングする必要があります。

本校の練習時間は、長くて2時間。必ず週に2日はオフがあります。部活動の時間がとても短いため、個々に食事や休養といった基本的な生活をいかに充実させるかが重要です。

――どのようにして、短時間での練習を実現できているのでしょうか?

藤田 年間計画・月間計画を立てて、逆算していくのです。1カ月後に試合を控えていたら、30日の中で何をしなければならないかを考えます。

すでにできていることへの練習は必要ありません。同様に、いくらやっても身にならない練習も、見直す必要があるでしょう。習得していること、できていないことを省き、少し頑張ればできるようになることに特化していきます。

例えば、「コンタクト力を上げれば勝てる」となれば、それに集中して取り組むのです。すると、やるべきことがとても明確になります。

一つの目標に対して、さまざまなアプローチで取り組めれば、練習内容がマンネリ化することなく、伸ばしたい部分を伸ばせます。それが、私たち指導者のテクニックです。

そのためには、練習中に指導者自らが動き、声をかけ、手を叩いて鼓舞していかなくてはなりません。

私は、エディー・ジョーンズ元監督時代の日本代表チームや、トップリーグのパナソニックやサントリーといったトップチームの練習を見てきました。トップになればなるほど、ヘッドコーチが一番ハードワークしているのです。

自分が動けなくなったら、この仕事はできなくなると思います。だからこそ、冒頭の話に戻りますが、指導者の健康は大切なのです。

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<藤田雄一郎(ふじた・ゆういちろう)>

1972年、福岡県生まれ。東福岡高校、福岡大学卒業。大学卒業後、JR九州を経て97年から教諭として東福岡高校に赴任。谷崎重幸前監督の下でコーチを務め、2012年春に監督就任。高校ラグビーの三大タイトル、全国高等学校ラグビーフットボール大会(冬の花園)、選抜(春の熊谷)、7人制で数々の優勝を果たす。14、16年度には3冠を達成。

飯塚さき

飯塚さき

1989年生まれ、さいたま市出身。2008年早稲田実業学校高等部卒業、09~10年シアトル・ワシントン大学留学、12年早稲田大学国際教養学部卒業。美術雑誌社を経て、13年よりベースボール・マガジン社で『Sports Japan』(日本体育協会発行)、『コーチング・クリニック』などの編集を担当。今春より独立し、フリーランスの記者・編集者に。『相撲』(ベースボール・マガジン社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、ウェブマガジン『DEPORTARE』(スポーツ庁)などで執筆中。

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