TOPへ
September 07 2018 By 飯塚さき

今こそ見直そう! スポーツボランティアの意味を

スポーツボランティアの形態と種類はさまざま

一口に「スポーツボランティア」といっても、関わる密度や求められるスキルなどによって、その形態や種類はさまざまある。日常・非日常の時間軸や、専門性の高さなどで種類分けされる。

日常的なものには、スポーツ少年団や総合型地域スポーツクラブなどの指導者、マネジメントや広報などが挙げられる。一方、非日常的なボランティアには、単発の大会やイベントなどで、主に運営を手伝うものを指す。

専門性の観点では、日常的に関わる指導者になると高い専門性が求められるが、単発のイベントボランティアは、参加する意思さえあれば、当日に活動の流れを教えてもらうだけでできるものも多くある。同じ「スポーツボランティア」でも、こうしていくつかの種類に分類することができるのだ。

では、それぞれのボランティアにおいて、やりがいはどんなところにあるのだろうか。日常的なボランティアでは、その人自身がスポーツそのものやクラブに対する愛情をもっていることが多い。

「自身の楽しみの場所が確保される」「教えた子どもたちが立派に巣立つ姿を見られる」など、ボランティア活動と自分の人生が重なっているタイプが多いと思います」――スポーツボランティアの専門家で文教大学の二宮雅也氏はこのように分析する。

さらに、「ボランティアでやっているというよりは、ライフワークとして、クラブに関わりながら自己実現を果たしているのです。それによって周囲や地域が喜び、ひいては自分の健康にも還元される。地域やその競技を支えていく部分に関して、非常にプロフェッショナルに関わっている人が多いのです」と話す。

一方、非日常型の楽しみのタイプは多種多様だ。多いのは、「なんとなく参加してみたら意外と楽しかった」という経験がきっかけとなり、継続していくタイプの人。では、その楽しさの要素は何か。

「イベントや大会のボランティアの楽しさは、人との出会いにあります。同じスポーツが好きな同士で知り合い、後日一緒に観戦に行く約束をすることもあるでしょう。ボランティアから交友が広がっていくのです(二宮氏)」

あるいは、「選手や関係者からお礼を言われてうれしかった」、「もらったウエアがカッコよかった」、「発生した課題をみんなで協力して乗り越えて高い達成感を得た」など、明確な成功体験にやりがいを見出すこともある。

つまり、ボランティアに取り組む人には、1人1人にそれぞれ違ったやりがいがあるといえるだろう。

「労働」ではなく「楽しむ」のがスポーツボランティア

 <対談>二宮雅也(文教大学人間科学部人間科学科 准教授)×園部さやか(日本財団ボランティアサポートセンター事業部 マネジャー)

2020年東京オリンピック・パラリンピックも近づき、大会を成功に導くボランティアの存在、重要性が高まっている。一方で、猛暑のなかで長時間にわたるボランティア活動を「ブラックボランティア」と揶揄する声もささやかれ始めている。本来ボランティアは「楽しさ」や「やりがい」を求めて自主的に参加するものである。

そこで、日本財団ボランティアサポートセンター参与でもある二宮氏と、同センター事業部マネジャーの園部さやか氏に、スポーツボランティアの意義や在り方、課題の解決策などについて対談していただいた。

sonobe

園部 近年、「ブラックボランティア」という言葉が出てくるようになりました。

二宮 「ブラック」とは、大会の構造に対していわれているものと理解しています。「夏の暑い時期に」「長時間」「長期間」「無償で」「学徒動員で」という5つがよくいわれているからです。

確かに、商業主義の大きな国際イベントで、ボランティアが商業母体のために無償で働いているという見方もできるかもしれません。その事実に気づくことは大事ですが、ボランティアの多くは、自らが大会を楽しむために関わっています。

園部 以前、「『お金ももらえないのに、なんで交通費まで払って〝労働″するの』と言われる」と話していたボランティアの人がいました。本人としては、「おいしいものを食べに行く」、「好きな映画を見に行く」、「遊園地へ遊びに行く」といった行動と同じく、楽しみのためにボランティアに行くのであって、それは「労働」ではないのです。

余暇に、何時間以上はブラックだなどという概念はありません。ボランティアも同じで、自分のできることを選んで楽しめばよく、誰かに押し付けられるものでもないのです。

二宮 ボランティアの条件に、何日以上、1日何時間と書かれていると、確かに「労働」を想起させるのはわかります。それが、今の日本のブラック企業の体質改善とうまくマッチしてしまいました。数字で正しい情報を伝えようとしたばかりに、ボランティアの枠組みと少し合わなくなってしまったと感じています。

園部 時間が長めに設定されているのは、ある程度時間の余裕がないとシフトを組みにくいという理由もあります。待機時間が含まれているので、長く感じるかもしれません。

二宮 もし本当にボランティアがブラックなのであれば、絶対に改善していかなければなりません。暑さが厳しい場合は、「日陰をつくる」、「こまめに人を交代する」といった対策ができます。

ボランティアが楽しく活動できるように環境を整えていくのは、運営サイドの仕事です。ボランティアは労働ではないので、ボランティアの人は、自分たちの活動環境をよくするために声を上げる権利があります。

園部 受け入れる運営側としては、大会を手伝っていただくお客さんだと思って、皆さんが気持ちよく活動できるように尽力していただきたいと思います。ただ、ボランティアの人たちには、自ら「やります」と手を挙げた段階から、役割としての責任があると伝えています。

二宮 ボランティアスタッフとして認められて以降は、大会の資質や規約に則って活動してもらいます。みんなのためになることが、結果的に自分の満足にもなる。それが、よいボランティアの関わり方の1つであり、だからこそまたやろうと思えるのです。

そうして何度も参加する玄人のボランティアが増えていくと、運営の質も高まる好循環が生まれます。目指していくのはそのような形で、2年後に控える国際大会が、1つの大きな通過点になることは間違いないでしょう。

 ボランティアに参加して選手たちを支えよう

ninomiya

二宮 来年のラグビーワールドカップや2020年東京大会では、「一生に一度」という希少価値からボランティアに参加する人も多く見込まれます。

園部 2020年東京大会のボランティアは全部で9種類あり、「どんな活動でもいい」という人を集めるものから、語学といった特別なスキルをもつ人が活躍する場まで、多岐にわたります。

二宮 唯一無二の大会の楽しさは、まだ誰もわかりません。未知の楽しみを経験することを楽しめる場になるでしょう。

園部 オリンピック・パラリンピックは4年に1度。選手たちにとっても特別な大会で、開会式を迎えただけで緊張する人もいるそうです。緊張感や高揚感をまとった空気を体験できることが、この大会の楽しみです。また、世界各国から集まるいろいろな人に会えることも魅力です。

二宮 国際性、宗教性を含めて、ここまで多様性のある人々と時間を共にすることは、ほとんどないと思います。

園部 「その国ってどこにあるんですか?」というようなところから、いろいろな人がたくさん集まるのです。

二宮 言語の大切さがわかるでしょうが、同時に言語の不要さもわかるかもしれませんね。言語は重要で、相手の言葉を話せたらいいのにというもどかしい場面は多々あるはずですが、一方で、言語でないところで人はこんなにも分かり合えるのかという感動も多いと思うのです。

園部 2020年東京大会では、パラスポーツの価値も前面に出てくるでしょう。日本の障害者スポーツを、これまで特に一般の人に浸透できていなかったので、いろいろなメディアなどを通して、パラスポーツを知ってもらうよい機会になると感じています。

二宮 選手たちの努力を支えたいと思う気持ちが、ボランティアのモチベーションとしてとても本質的だと思います。ボランティアが、どこまで選手たちのパーソナルスペースに入れるかは別ですが、パラアスリートは競技以外の日常生活にもボランティアが必要になるので、関わりは大きいでしょう。

園部 オリンピックとパラリンピックはもちろんですが、いろいろなところでボランティアに参加していただきたいと思っています。

SAK_0004

取材・構成/飯塚さき 編集/ボーダレス編集部

 


<二宮雅也(にのみや・まさや)>

文教大学人間科学部人間科学科准教授。筑波大学大学院体育研究科修了。民間シンクタンク研究員、上智大学嘱託講師を経て、2010年より現職。日本財団ボランティアサポートセンター参与。特定非営利活動法人日本スポーツボランティアネットワーク理事、特定非営利活動法人日本スポーツボランティア・アソシエーション理事。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ボランティア検討委員会委員。まちづくりやボランティア活動をテーマとして、協働の視点から非営利組織活動の在り方を模索している。専門領域はスポーツ社会学、地域活性論。主な著書は『スポーツボランティア読本』(悠光堂)など。


<園部さやか(そのべ・さやか)>

日本財団ボランティアサポートセンター事業部マネジャー。ウィスコンシン州立大学大学院セラピュティック・レクリエーション科修了。特定非営利活動法人日本スポーツボランティアネットワーク理事・講師、教育普及・MIND委員会知的障がい者柔道振興部会委員、帝京科学大学非常勤講師。知的障害のある人のスポーツ活動を支援することをライフワークとしている。

飯塚さき

飯塚さき

1989年生まれ、さいたま市出身。2008年早稲田実業学校高等部卒業、09~10年シアトル・ワシントン大学留学、12年早稲田大学国際教養学部卒業。美術雑誌社を経て、13年よりベースボール・マガジン社で『Sports Japan』(日本体育協会発行)、『コーチング・クリニック』などの編集を担当。今春より独立し、フリーランスの記者・編集者に。『相撲』(ベースボール・マガジン社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、ウェブマガジン『DEPORTARE』(スポーツ庁)などで執筆中。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう