1980~90年代の全盛期から、低迷期といわれた2000年代を経て、現在、プロレス人気は新しい時代に入っている。最近では、プロレスが好きな女性を指す「プロレス女子=プ女子」なる言葉もさまざまなメディアで聞かれる。鍛えられた肉体と激しい試合はもちろんのこと、サイン会や握手会など選手との距離の近さにプロレスにハマる20代、30代の女性は急増中だ。
もちろんプロレスを観るだけではなく、実際にプレイをする女性も増えていることをご存じだろうか。「女子プロレスラー」と聞いてイメージしがちな女性像がなんとなくある人も多いかもしれないが、今では容姿や生い立ちともに個性的でバラエティに富んだ女子プロレスラーもたくさんいる。そこで今回は、声優とプロレスラーの二足のわらじを履く清水愛さんにインタビュー。プロレスにハマったきっかけ、声優のお仕事との相互関係など、興味深いお話を聴くことができた。

声優とプロレスラーの二足のわらじを履く清水愛さん
――そもそも、清水さんがプロレスに興味を持ったのはなぜだったのでしょう?
清水愛さん(以下、清水):3年弱ほど前から都内を中心に活動する「DDTプロレスリング」さんが運営する飲食店の料理が好きで、よく声優の仕事終わりなどにご飯を食べに行っていたんです。毎日と言って過言ではないくらい(笑) そこではプロレスラーの方が働いているのですが、試合のチケットを選手が手売りしていたんです。「プロレスの試合ってプレイガイドだけじゃなく、こうして選手も一生懸命売っているんだ!」と、そのシステムにとても驚きました。そこで試合を観に行ってみたところ、プロレスの魅力にどんどんハマっていきました。
――ふとしたきっかけからプロレスファンになられたのですね。そこからなぜ、選手側に?
清水:ちょうどそんな時期に、前々からお仕事で関わっていたお笑い芸人のはりけ~んず前田さん経由で、北九州のプロレス団体「がむしゃらプロレス」さんの10周年記念イベント出演のお話をいただきました。
もちろんプロレスラーとしてではなく声優としてリングでしゃべったり歌ったりなどの依頼だったと思うのですが、プロレスにドハマりしていたので「せっかくなら試合に出たい!」と思いました。私はもともと釣りやサバイバルゲームなどハマったらとことんやるタイプでして。そうしたらなんと、がむしゃらプロレスさんが試合を組んでくださり、そのイベントの日にリングデビューを飾ることができました。試合までは1ヵ月ほど猛練習をした日々でしたね。
現在は、所属しているわけではないのですが「東京女子プロレス」さん(DDTプロレスリングの運営)の試合にレギュラー参戦させていただいています。
――ハマっていた時期とプロレス関係のお仕事の話をもらったタイミングがピッタリ合ったのですね。最初に試合を観た時に、どんなところが清水さんを虜にしたのでしょうか?
清水:実はプロレスの話を始めると熱すぎて涙が出てきちゃいそうなんですけど、最初に試合を観た時に「これは人生の縮図だ」と感じました。
やられっぱなしで相手に歯が立たなくても、それでも何度も立ち上がっていく。負けることが終わりではなく、次に勝つために前を向く。タッグマッチでは、助け合ったり支え合ったりして相手に立ち向かう。そんな姿は、スポーツの試合というよりも人生の戦い方に見えていきました。戦う勇姿から、観ている方が勇気をもらえて「自分も頑張ろう」と思えることってこういうことなんだ、と感動したんです。
――一プロレス愛が伝わってきます! 一見全く違うジャンルに見える声優とプロレスラーのお仕事ですが、互いに良い影響を与え合っていると感じることはありますか?
清水:声優というお仕事柄、もともとイベントなどで人前に出ることには慣れてはいましたが、さらに度胸がついたと思います。プロレスの試合後には、売店でグッズを販売したり握手をしたりなどお客さんと距離が近いコミュニケーションが取れるのですが、やっぱりそこでは声優イベントの経験が生きますね。また、何か仕事で失敗してしまった時があっても「次で取り返そう」というポジティブな考え方になったのはプロレスのおかげだと思います。
また、プロレス好きのプロデューサーさんと意気投合したことがきっかけで、BSスカパー!で「清水愛、何でもやるってよ!」という冠番組をやらせていただいているんです。タイトル通り、興味あることを私が何でもやってみるという内容です。声優とプロレスラーという二足のわらじを履いているからこそいただいたお話なので、とてもうれしいですね。
――会場に足を運んでくださる方としては、やっぱり声優としての清水さんのファンの方が多いですか?
清水:もちろん他の選手を応援していて私を知ってくださった方も多いので、一概には言えませんが、声優の活動を知っていた流れで私の試合を観に来てくださるファンの方もいらっしゃいます。個人的な感触ですが、プロレスファンとアニメ・声優ファンって親和性が高いと思うんですよ。どちらも、イベントや試合会場では「どうぞ、面白いものを見せてください」というスタンスではなく、「自分たちも盛り上げて参加しよう!」というスタンスなんです。声を枯らすまで声援を送ったり、選手に感情移入して一緒に感動したり。2つの世界のそんな共通点を発見できたのは面白い点ですね。
――プロレスの魅力がよくわかるのは、やっぱり試合会場なんだと実感しました。最後に、ご自身のここに注目して試合を観てほしい!というポイントを教えてください。
清水:新崎人生さんというプロレスラーさんが使われる「拝み渡り」を、私も得意技としています。相手の腕を取ってロープに登り、そのまま片手で拝みながらロープを渡って相手を引き回す技なので、ぜひ会場で観て、手拍子いただきたいです。
私がプロレスを始めたのは30歳を過ぎてからでした。もちろん真剣に取り組んでいますが、練習生からプロレスラーとしてのキャリアがスタートしたわけではないので「声優がプロレスをするなんて」といった批判ももちろん承知でした。それでも、とにかくやってみることは大切だと思います。やってみて合わなかったらやめたらいいけど、尻込みしてやらずにいるのはもったいない。私を観て、何かに踏み出すことに躊躇している人が「自分も頑張ろう」といった勇気を感じてくれたらとてもうれしいですね。
東京女子プロレス http://www.tokyojyoshipro.net/
■清水愛さん出場試合情報
・2015年12月12日(土) 春日部ふれあいキューブ
・2016年1月4日(月) 後楽園ホール
・2016年3月6日(日) 大阪世界館
■チケットのお問い合わせ先
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■清水愛さんのTwitterはこちら
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(石狩ジュンコ)