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July 21 2015 By 斎藤寿子(さいとう ひさこ)

見えない世界での華麗なドリブルに拍手喝采! 観客を魅了するブラインドサッカー

見えない世界での華麗なドリブルに拍手喝采! 観客を魅了するブラインドサッカー

7月11、12の両日、アミノバイタルフィールド(東京都調布市)で第14回アクサブレイブカップブラインドサッカー選手権が開催され、全国から過去最多の14チームが集結。連日にわたる猛暑の中、2日間で2540人の観客が訪れ、熱戦が繰り広げられた。最後は全5試合で合計13得点を挙げたつくばAvanzareが、3年ぶり4度目の優勝を目指した、たまハッサーズを決勝でPK戦の末に破り、3年連続7度目となる日本一の座を獲得した。
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優勝した、つくばAvanzare

観客を魅了したエース対決
ブラインドサッカーは縦40メートル、横20メートルとフットサルとほぼ同じ広さのピッチ上で行われ、主に健常者が務めるゴールキーパー(GK)とフィールドプレーヤー(FP)4人の計5人のチームで戦う。FPは障害の度合いによる不平等性をなくすため、アイマスクという目隠しをしなければならない。そのため、視覚からの情報は一切ない。鈴入りのボールの音、味方や相手の足音、声だけを頼りにプレーする。

そのブラインドサッカーの日本一を決める今大会、決勝に進出したのはAvanzareとハッサーズ。両チームともにパラリンピックを目指す日本代表候補の主力選手を複数擁する強豪で、2006年からはどちらかが日本一の称号を手にしている。だが、意外にも決勝では初顔合わせとなった。

決勝での最大のみどころは、日本代表でも活躍する2人のエース対決だった。現役選手では日本代表歴が最も長く、国内随一の攻撃力をもつ36歳の黒田智成(ハッサーズ)と、近い将来日本代表を背負う選手として期待されている26歳の川村怜(Avanzare)だ。アイマスクをしているにもかかわらず、まるで見えているかのようにドリブルし、相手ディフェンダーをかわしていく2人の華麗な足技に、会場からは驚嘆の声と称賛の拍手が沸き起こった。そして勝敗を分けたのも、この2人のプレーに起因するところが大きかった。

前半は両チームともに何度もシュートチャンスをつくるも、ボールがゴールネットを揺らすシーンは一度も訪れることはなかった。ボールをもったら一気にスピードに乗ってゴール前へと駆け上がる黒田に対し、ハーフライン付近で左右に大きく動いてディフェンダー陣を振り切り、じっくりと突破口を見つけながら、じりじりとゴール前に攻めていく川村。ともに何度もゴールを狙うも、決めきることができなかった。
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ドリブル突破しようとする、川村怜(Avanzare)(右)と、立ちはだかる、黒田智成(ハッサーズ)(左)
残り3分での同点弾
均衡が破られたのは後半3分。左サイドでボールをキープしていたハッサーズの日向賢が、逆サイドにはっていた黒田にパス。黒田は素早くドリブルでゴール前へ上がると、左足でシュート。ボールはGKの右わきを通り抜けてゴールへと吸い込まれ、ハッサーズに待望の先取点が生まれた。

Avanzareも負けていない。ここから猛反撃が始まる。ボールを持つと、時間をかけずに一気にゴール前へ運び、少し遠目からでも果敢にシュートを放った。波状攻撃のように、次々とハッサーズのゴールに襲いかかる。

しかし、ハッサーズの好守備に抑えられ、得点を奪うことができないAvanzare。残り3分となり、いよいよハッサーズの勝利が見えてきたかと思われた矢先、自陣でボールを持ったAvanzare佐々木ロベルト泉が右サイドを一気にかけ上がり、ゴール前へ蹴り出した。これをゴール前ではっていた田村友一がディフェンダーの厳しいマークに遭いながらも右足でシュートを放つと、ボールはゴールネットを揺らした。

実はハッサーズは、後半の途中でかけたタイムアウトの際、この得点パターンに注意を促していたと試合後、黒田は打ち明けている。「ゴール前にはっていた田村にボールが渡らないようにしよう、とみんなで守備の確認をし合いました」。しかし、その田村にボールが渡り、シュートチャンスが生まれてしまったのだ。
勝敗を分けたエースのPK
そして、1-1のまま試合終了のホイッスルが鳴り、勝負の行方は3人制でのPK戦へと持ちこまれた。3人ずつ交互に蹴り、それでも決まらなかった場合、4人目からはサドンデスとなり、決まった時点で終わる。

緊張感が漂う中始まったPK戦、1人目は両チームとも外してしまう。ハッサーズにとっては、エースである黒田が決められなかったのは痛かった。実際、これが大きく響くことになる。2人目、ハッサーズはまたも失敗に終わる。一方、Avanzareは川村が左上の隅に電光石火のごとく鋭いシュートを決め、リードを奪った。そして運命の3人目。先に蹴るハッサーズが失敗すれば、Avanzareの優勝が決まる大一番。ハッサーズの3人目、日向のシュートがAvanzareのGK福永克己が伸ばした左足で止められた瞬間、Avanzareの3連覇達成が決まった。

勝利を引き寄せるPKを決めた川村は、こう語っている。
「あの場面、特に緊張はしませんでした。練習通りにやれば、絶対に大丈夫だという自信があったんです。(左上の隅は)狙い通りのコースでした」
メンタル面での強さもまた、彼の成長を加速させているに違いない。

これで国内最高峰の大会を終えたブラインドサッカーは、今度は来年のリオデジャネイロパラリンピック出場をかけた戦いへと舵を切る。9月2~7日に国立代々木競技場(東京)で開催されるアジア最終予選だ。6チーム中、上位2チームがパラリンピックの切符を獲得する。黒田と川村をはじめ、これまでライバルとしてしのぎを削ってきた選手たちは、今度はチームメートとしてアジアの強豪たちに立ち向かう。パラリンピック初出場をかけた熱き戦いにも注目したい。
(文・斎藤寿子)
(写真・越智貴雄)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

斎藤寿子(さいとう ひさこ)

新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年からスポーツ専門Webサイトで記事を執筆。主に野球、バレーボール、テニスを担当。2011年から取材を始めた障がい者スポーツでは、パラ競技を中心に、国内大会をはじめ、2012年ロンドンパラリンピック、2014年仁川アジアパラ競技大会、2016年リオデジャネイロパラリンピックなどを取材。2015年からフリーライターとして活動している。

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